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天才魔法オタクが追放されて辺境領主になったら、こうなりました  作者: 優木凛々
第1章 魔法研究者アリス、辺境に追いやられる

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7/18

【一方その頃】 思惑(2/2)


本日3話目、1/2からの続きです。

 

 王宮内にある魔法研究所の所長室にて。


 ファーガソン公爵家のジャネットが、尊大な表情で椅子に座っていた。

 本棚に並ぶ貴重そうな本をながめ、満足そうな笑みを浮かべる。



(やっとこの椅子に座れたわね)



 脳裏に浮かぶのは、所長になるまでの道のりだ。




 *



 ジャネットはファーガソン家の娘だ。

 幼い頃に高い魔力があると分かり、ずっと魔法を学んできた。


 特に攻撃魔法が得意で、入学した学園では彼女の右に出る者はいなかった。

 自分より弱い生徒たちを叩きのめしながら、彼女は思った。



(私は選ばれた人間なのだわ!)



 そんな彼女に、父であるファーガソン公爵から命令が下った。



「学園卒業後は、魔法研究所に入るように」



 ファーガソン家の悲願は、大陸統一だ。

 強大な攻撃魔法を使える魔法士も必要だが、更に重要なのが魔法兵器の開発だ。



「お前には、魔法兵器の開発を任せたい。魔法研究所で上り詰めて所長になるんだ」

「はい、お父様」



 そんな訳で、ジャネットは魔法研究所に入所した。


 突然現れた超上流貴族に、研究所の研究者たちはとても驚いた。

 ぺこぺこと挨拶をする。


 そんな彼らを、ジャネットは心の中でさげすんだ。



(そんなことよりも早く成果を上げなければ)



 研究所は、基本的に実力主義と決められている。

 さすがに公爵家の令嬢とはいえ、何もやらずに所長にはなれない。


 事前調査によると、新しい魔法を開発するのが一番の成果とされるようだった。



(やはり軍事系の魔法ね)



 そんな彼女が目を付けたのは、無理矢理教育係に据えたビクター所長だった。

 事前調査によると、彼は『広範囲結界魔法』を研究中で、徐々に成果を出しているらしい。



(実力はそれなりのようね)



 たかが下級貴族の息子であることは気に入らないが、踏み台にはちょうど良い。



 その日から、彼女はビクターを呼びつけるようになった。

 必要知識を吸収したり、開発を手伝わさせるなど、便利に使い始める。



(このままこの男を利用していれば、すぐに所長になれるわね)



 そんなある日。

 ジャネットは、ビクターと廊下を歩いていた。

 出会った研究員たちが、ぺこぺこしながら道を譲る。


 しばらくすると、廊下の向こうから1人の娘が歩いて来るのが見えた。

 少しボーッとした雰囲気の小柄な娘だ。


 彼女を見て、ビクターが破顔した。



「アリス!」



(アリス……?)



 ジャネットは記憶を探った。

 彼の養女アリスだと思い当る。

 調査書によると、学園を試験のみで卒業し、最年少で魔法研究所に入った天才、という話だった。


 ジャネットはその記憶を鼻で笑った。



(孤児ごときが天才などありえない)



 どうせ学園も魔法研究所もビクターのコネだろう。


 そんなことを考えるジャネットに、アリスはぺこりと頭を下げた。



「こんにちは、はじめまして。アリスです」

「ジャネット・ファーガソンよ」



 ジャネットが鷹揚に名乗る。

 彼女の予想では、ファーガソンの名前を聞いたアリスが、ぺこぺこと媚びへつらい始めるはずだった。


 しかし、アリスは特に何も反応しなかった。

 何とも思っていなさそうな顔で、2人に向かって「研究がありますので、失礼します」と軽く頭を下げて、足早に去って行く。


 ジャネットは腹が煮えくり返った。



(許せない! 孤児のくせに、この私を見下して!)



 自分が所長になったらすぐに追い出してやる、と心に決める。




 ――しかし、肝心のジャネットの新魔法開発は難航した。

 ビクターをもってしても、斬新で新しい攻撃魔法の開発には至らなかったからだ。



(使えないわね!)



 そのクセ、ビクター自身の『広範囲結界魔法』の研究は成功をおさめ始めていた。

 成功したという話が聞こえ始める。



(ちょうどいいわ、その研究を私がもらえばいいのよ)



 もっと完全に成功してから奪おう。

 そう思って待っていたところ、ビクターが突然亡くなった。



(どうしてくれるのよ! これじゃあ所長になれないじゃない!)



 そう思っていた矢先、『広範囲結界魔法』の論文が発表された。

 作者名は、ビクター。

 ほとんど完成していたものを、助手を務めていた孤児のアリスが仕上げたらしい。



(ちょうどいいわ、いただきましょう)



 論文を読んだ限り、実証実験まで済んでいる。

 アリスを研究所から追い出して、手柄を完全に自分のものにしよう。



(ちょうどいいわね、元孤児の腰ぎんちゃくなんて、この研究所に必要ないもの)



 ジャネットは、王家を巻き込んで動き始めた。

 父と叔母である王妃に相談し、アリスを魔法研究所から追い出すことにする。




 *



 ジャネットは所長室の椅子に寄りかかると、周囲を見回した。

 満足そうにため息をつく。



「やっぱり身分違いの者がいなくなると、空気がいいわね」



 そうつぶやくと、彼女は目の前の『広範囲結界魔法』の論文を手に取った。

 傲慢そうに微笑む。



「では、国王陛下の命令通り、まずはこれの実装化を始めましょうか」












忍び寄る、ざまあの影……


本日はここまでです。

また明日投稿します。


良かったらブクマしていただけると嬉しいです! ̗̀ ( ˶'ᵕ'˶) ̖́- 


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