01.アリス、大変なことに気が付く
第5章スタートです!
探索から帰ってきてから、約2週間後。
午後の静かなアリス研究室にて。
「いや~、素晴らしい! ほんと素晴らしい!」
アリスが、目をキラキラさせながら立っていた。
目の前の作業台の上には、山のような金属片やら玉が積んである。
これらは開拓中に地中から掘り出された物たちだ。
正体が分からないものが出ると、みんなアリスのところに持ってくるため、物凄い量になっている。
「しかも見たことないものばっかり!」
中には明らかに魔法的だったと思われるものもあり、分析待ったなしだ。
アリスはぐるぐると作業台の周囲を歩き回った。
どれから分析しようかなあ、とワクワクしながら見つめる。
「……でもなあ……」
アリスは、ため息をついて立ち止まった。
「アレ、どうしようかなあ……」
今抱えている大きな問題を思い出して、ため息をつく。
そのとき――
コンコンコン
ノックの音が聞こえてきた。
ドアが開いて、金属製の箱のようなものを抱えたテオドールが入ってきた。
どうやら地面からまた出たようで、持ってきてくれたらしい。
彼は部屋の中央にできた山を見て、思わずといった風に目を見張った。
「ずいぶん溜まりましたね」
「うん、まあね」
アリスが自慢げにニヤリと笑う。
彼女の様子を見て、テオドールが気掛かりそうな顔をした。
持ってきた箱をズシンと山の横に置くと、尋ねる。
「どうしたんですか? 何かありましたか?」
アリスは思わず目を見張った。
「え、どうして何かあるって分かったの?」
「もうずいぶん一緒にいますから」
アリスは感心した。
「テオドール、養父よりすごいかも」
「……所長を超えましたか」
テオドールがどこか嬉しそうな顔をする。
「それで、どうしたんですか?」
「うん……」
アリスは、引き出しの中から魔法インクの瓶を取り出すと、ため息をついた。
「実は、魔法インクが、あと1本しか残ってなくて」
もともと、アリスは魔法インクを7本持ってきていた。
研究室にいた頃なら、1年半はもつ量だ。
しばらく安心だろうと思っていたのだが、ここに来て魔法陣を描きまくったため、気付けば残り1瓶になってしまっていた。
インクがないと、魔法が使えないのはもちろん、魔法陣の分析をままならなくなってしまう。
(面白い物がこんなに集まったのに分析できないとか、地獄だよ……)
アリスのしょぼくれた顔を見て、テオドールが眉を寄せた。
「それは一大事ですね、どうされるつもりですか?」
「まあ……現実的なのは、カスレ村に取りにいくことかな」
カスレ村とは、魔の森の入り口にある小さな村だ。
行くには、魔獣だらけの森を1週間以上かけて往復する必要がある。
危険な道のりだが、インクを手に入れるには、ここが最も近い。
「でも、村に残っているのはあと2、3本ってところだろうから、どこかのタイミングで王都に買いに行く必要があるとは思う」
「王都ですか……」
「うん、たぶん他では売ってないと思うんだよね」
アリスはテオドールを見上げた。
自分1人の力では、カスレ村には1人で行くことはできない。
「テオドール、カスレ村まで一緒に来てくれる?」
テオドールが目を細めた。
「ええ、もちろんお供します。きっと早い方がいいですよね」
「そうだね」
「では、もうすぐ満月ですから、満月が終わる1週間後でどうでしょうか」
「うん、ありがとう」
アリスは感謝の目でテオドールを見た。
これで、もうしばらく研究が続けられそうだ。
この日は会議があるため、会議の時にビクトリアに行く旨を伝えよう、という話になる。
*
そして、その日の夕方。
古城の城壁の上で、定例会議が行われた。
アリスとテオドールが城壁の上に上ると、
バラ色の空の下、大きな石の台の周囲に椅子が並べられていた。
ビクトリア、オーウェン、フレッド、エマに加え、今日はリットの姿もある。
アリスたちが椅子に座ると、ビクトリアが笑顔で言った。
「それでは、会議をはじめましょう」
カスレ村は、第1章に出てきた魔の森入り口にある小さな村です




