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天才魔法オタクが追放されて辺境領主になったら、こうなりました  作者: 優木凛々
第4章 結界探索と謎の地図

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挿話:アリス、開拓の要になる(2/2)

 

 そして、その日の夜。

 暗く静かなアリス研究室にて。


 オレンジ色のランプの下、アリスがジッと丸太を見つめていた。

 指で断面をそっと触って、その指を見て、うーん、と考え込む。

 そこへ



 コンコンコン



 ノックの音がして、ランプを持ったテオドールが入ってきた。

 丸太を見つめるアリスを見て首をかしげる。



「何をしているんですか、アリスさん」

「木、見てる」



 アリスは顔を上げると、テオドールの顔を見ながら尋ねた。



「…… “濡れている”ってどういう意味だと思う?」

「え?」

「“濡れている”っていうのは、つまり何を意味するんだろうか」

「……なんだか哲学的ですね」



 突然始まったよく分からない問答に、テオドールが笑いだしそうな顔をする。



「一体どうしたんですか?」

「うん、実はね……」



 アリスが「今後炭と薪が不足するらしい」と説明すると、彼は納得したような顔をした。



「なるほど、それで魔法で木を早く乾かそうと考えているということですか」

「よく分かったね」

「はい、最近アリスさんが考えてそうなことが分かってきました」



 アリスが目を見張った。



「すごいね、養父(ビクター所長)みたい」

「……ビクター所長……」



 テオドールがこれ以上ないほど複雑そうな表情を浮かべる。


 アリスは丸太の断面をながめながら口を開いた。



「この水ってたぶん普通の水じゃないよね」

「はい、樹液ですね」

「樹液」

「はい、俺の生まれ育った場所では、この樹液を煮詰めてシロップを作っていました」



 アリスは首をかしげた。



「なめても味しないよ?」

「はい、ほとんど水なんで、3日くらい煮詰めてようやく甘くなる感じです」



(なるほど。これ、ただの水じゃないんだ)


 アリスは考え込んだ。

 これがただの水ではない、というところにヒントがあるかもしれない。


 その日、夜が白むまで、彼女は木を見つめながら思案に暮れた。




 *



 そして、時が流れること、3日。

 天気の良いお昼過ぎ。


 目の下にクマを作ったアリスが、丸太を抱えて中庭を歩いていた。

 鍛冶小屋に近づくと、カーン、カーン、という鉄を打つ音がする。



「こんにちは」



 声を掛けて中に入ると、ガンツがハンマーを振るっていた。

 アリスを見て手を止めると、ふう、と汗をぬぐう。



「おう、どうした? 例のミスリルか?」



 ガンツによると、ミスリルの球は一筋縄ではいかないらしい。



「もう少し時間が欲しいが、いいか?」

「はい、大丈夫です」



 アリスがうなずく。

 そして、他に用があるかと問われ、彼女はニヤリと不敵に笑った。



「実は、ちょっと見せたいものがあるんですけど、物置に行きませんか?」

「おう、かまわないぞ」



 アリスはガンツと共に、裏の物置に向かった。

 奥にある木が置いてある場所に行くと、まだ乾いていない枝を選んで床に置く。



「見ててください」



 アリスはポケットから魔法陣の描いてある紙を2枚取り出した。

 2枚並べておくと、片方に魔力を通す。



起動(カンターレ)水球:魔法陣(アクア・スフィアラ)



 魔法陣から水球が出て、丸太を包んだ。

 その間に、もう1枚に魔力を通す。



起動(カンターレ)熱風:魔法陣(カルファ)



 黄金の光の渦が丸太を包み込んだ。

 サッと水がなくなり、丸太が残る。


 アリスがそれを持ち上げると、ガンツに差し出した。



「これでどうでしょう」



 ガンツはそれを受け取って、思わずと言った風に目を見開いた。

 斧で割って、中を確かめると、驚きの声を上げる。



「おいおい! カラカラじゃねえか! しっかり乾いてやがる!」



 アリスが得意満面で胸を張った。



「まずは魔法の水を浸透させて樹液を追い出して、そこから魔法水を蒸発させたんです。ちょっと制御は難しいですけど、これならあっという間に乾燥が可能です」



 この3日、アリスは木を乾かす魔法の開発に取り組んだ。

 こういう開発はあまりしたことがないが、なかなか良い結果になったと思っている。


 ドヤ顔のアリスに、ガンツが真面目な顔で言った。



「こいつはすげえ、もしかすると開拓の要になるかもしれねえぞ」



 ガンツによると、炭不足が全てのネックになる状況だったらしい。


 その後、ガンツに呼ばれて建築士でもあり木工職人でもあるフィンロイが現れた。

 魔法で乾かした木を見て、彼は、カッと目を見開いた。



「こ、これは……」



 いつもの穏やかさはどこへやら、

 彼は夢中で木を叩いたり撫でたりし始めた。

 我を忘れたように、「素晴らしい! これがあれば!」などとぶつぶつ言う。


 どうやら、家具や家などを作る木も不足している状態だったらしい。


 事情を説明すると、彼は興奮したように言った。



「普通に乾かしたら1年近くかかるところが1分で済むのか! しかもこの品質! これは開拓のスピードが間違いなく上がる!」

「よくやってくれたな! お手柄だ!」



 ガンツが笑顔で、アリスの背中をバンバン叩いた。

 痛いなあと思いつつも、胸がぽかぽかする。



(転移魔法陣もいいけど、こういう魔法も、新たな視点があって面白いな)



 その後、3人は相談し、

 アリスは、週に3回、魔法で木を乾かすことになった。






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