04.青い湖と白い遺跡
そして、古城を出発してから、約半日後。
目の前が明るくなってきた。
そのまま歩き続けると、木々が途切れた。
視界が一気に開け、そこには鏡のように静まり返った湖が広がっていた。
「湖だ」
アリスは湖の奥に目を凝らした。
対岸は薄っすら霧に覆われており、深い木々とその間から白い建物のようなものが見える。
(あれって、尖塔から見えていた遺跡だよね)
アリスは指を差した。
「あそこって何ですか?」
「実は行ったことがないのよ」
エマによると、湖周辺にはとんでもなく強力な魔獣が出るらしい。
「結界がなかったら、ここまで近づけなかったと思うわ」
「そうなんですね」
アリスは建物に目をやった。
見ていると吸い込まれそうな感覚がして、思わず目を逸らす。
とても美しいが、どこか時間が止まったような怖さがある。
「なんか、幽霊とか出そうだね」
「……そういうこと言うの止めてもらっていいですか」
アリスのつぶやきに、テオドールが身震いしながらボソッと言う。
その後、アリスは結界の境界を調べた。
結界は湖のヘリまでで、オーウェンとエマが、木々に赤いリボンを結び付ける。
リットがノートをパラパラとめくった。
「だいぶ進みましたね、もう半周以上したと思います。たぶんですけど、この結界、楕円形ですね」
どうやら各ポイントから古城の塔の大きさを見て、大体の距離を測っていたらしい。
そんなことできるんだ、と感心しながらアリスが尋ねた。
「境界が分かったらどうするんですか?」
「古城から正確な距離を測っていきます」
開拓に使用するため、地形や大きな遺跡の位置なんかも調べていくらしい。
「結構大変そうですね」
「はい、道具も作らないといけないので、かなり大変だと思います」
リットがため息をついた。
「地図でも残っていたら有難かったんですけど」
「地図?」
「はい、遺跡を見る限り、ここは相当大きな街だったと思うので」
それを聞いてアリスは思い出した。
地図といえば、転移陣で飛ばされた先で地図らしき思われるものを入手したな、と。
アリスでは、何の地図かさっぱり分からず仕舞いだったが、
もしかすると、リットに見せたら何か分かるかもしれない。
彼女は、横に座っている水を飲んでいるテオドールにささやいた。
「テオドール、地下で見つけた地図、覚えてる?」
「……地下遺跡のやつですか」
「うん。あれ、リットさんに見てもらうのはどうかな。わたし、あれがどこか気になってたんだよね」
テオドールが、なるほど、という顔をした。
「確かに、専門家なら何か分かるかもしれません」
2人はぼそぼそと話し合った。
とりあえず、古城に戻ったら見てもらおう、という話になる。
その後、5人は再び探索を始めた。
アリスが結界の境界を調べ、その他の人たちが枝にリボンを結び付けていく。
――――そして、探索を続けること、数時間。
空に夕方の気配が漂い始めたころ。
一行の目の前に赤いリボンが結わえられた木が見えてきた。
どうやら結界をぐるりと一周してきたらしい。
リットが嬉しそうに口を開いた。
「皆さん、ありがとうございます。これで、結界の境界が全部分かりました」
どうやら境界探索はこれで終わりらしい。
5人は古城に向けて帰路についた。
森の中を通り抜け、夕焼け空の下にそびえる古城にたどり着く。
夕日に照らされた古城の前庭を見て、アリスはホッと胸を撫でおろした。
久々に故郷に帰ったような気分になる。
オーウェンが、感謝の目でアリスを見た。
「お陰で今日は一気に探索が進んだ。ビクトリア様に良い報告ができる」
「アリスちゃん、お疲れ様、今日はありがとうね」
オーウェンとエマが、手を振りながら建物に向かって歩いていく。
その後姿を見送っていると、リットがくるりと振り向いた。
アリスとテオドールに、ぺこりと頭を下げた。
「今日はありがとうございます。私もこれで」
そう言って建物の方に歩き出そうとする。
(あ、地図!)
アリスは急いでリットを呼び止めた。
「リットさん、ちょっと待ってください」
「……なんでしょう?」
リットが不思議そうな顔で振り返る。
アリスが声を潜めた。
「実は、ちょっと見てもらいたいものがあるんです」
地図とは、アリスとテオドールが古城地下の転移魔法陣から飛んだ先で見つけた地図です。
ちなみに、上に出られなかったため、転移先がどこだかは分かっていません。
詳しくは↓
https://ncode.syosetu.com/n1001lf/49




