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天才魔法オタクが追放されて辺境領主になったら、こうなりました ※第1部完  作者: 優木凛々
第3章 魔法陣解析

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08.アリス、ふわっと説明する


 結界を修復したアリスたちが地下を出ると、外はちょっとした騒ぎになっていた。

 魔力がある程度以上ある者は、魔法陣が修復された際の波動を感じたらしい。



「急に、ぶわっと何かが横切った気がする!」

「なんかすごかった!」



 口々にそんなことを言い合っている。



 *



 そして、とっぷりと日も暮れた、その日の夜。

 オレンジ色のランプの光に照らされた一室で、会議が行われた。


 メンバーは、アリスとテオドールの他、結界のことを知っているビクトリア、オーウェン、フレッド、エマの4人だ。


 まず、ビクトリアが深々と頭を下げた。



「アリスさん、まずはお礼を言わせてください。危ないところを助けていただき、本当にありがとうございます」



 オーウェンやエマ、フレッドも頭を下げる。



「いえいえ、そんな。わたしも楽しかったです」



 アリスが満面の笑みを浮かべた。

 色々あったが、未知の魔法陣を分析できて、とても楽しかった。



 その後、アリスは魔法陣の状況について説明し始めた。



「あの後色々調べましたが、結界は問題なく修復できました。しばらく見守る必要はありますが、たぶんしばらくは大丈夫だと思います」

「そうですか……」



 ビクトリアと他3人が、ホッとしたような顔をする。


 

「ちなみに、結界の効力ですが、”害意を持つ人間以外の生物と攻撃を弾く”というものでした」



 フレッドが意外そうな顔をした。



「それって、害意がある人間は入れるってことか?」

「はい、入れます。あくまで魔獣を防ぐものだったと思われます。」



 そして、アリスが思い出したように言った。



「それと、1つ朗報があります」

「朗報?」



 5人が不思議そうな顔をする。

 アリスが笑顔で言った。



「実は、結界の範囲がかなり広くなったことが分かったんです!」

「え……?」



 ビクトリアが目を瞬かせた。



「ええっと、広くなった、とは……?」

「はい、結界で守られる範囲が広がった、ということです」



 これは魔法陣を修復したときに分かったことなのだが、

 結界は、もともと今よりずっと大きかったらしい。

 年月を経て小さくなっていたが、修復されて元の大きさに戻った格好だ。


 エマが尋ねた。



「広がった……って、どのくらい広がったの?」

「そうですね……」



 アリスが腕を組んで考え込んだ。



「まあ、あの魔力の感じからすると、少なくとも10倍以上にはなったと思います」

「は!? 10倍!?」



 フレッドが、思わずといった風にガタンと立ち上がった。

 その場の全員が、目を見開いて固まる。


 アリスがコクリとうなずいた。



「はい、もともと、それくらいの大きさだったのだと思います。なので、元に戻った、という言い方が正しいのかもしれません」

「そうですか……それにしても、10倍……ですか」



 ビクトリアが肝を潰したようにつぶやく。



「……ちなみに、この結界は、どのくらいの期間もつのでしょうか」



 アリスが思案した。



「そうですね……とりあえず、3カ月監視して、それで何もなければ、あと100年くらいはもつと思います」

「え、100年?」

「はい、そういう風に作られているので」



 場がシンと静まり返った。


『10倍に広がった結界が100年は保たれる』


 という予想外過ぎる話に、全員が彫像のように固まっている。



(……まあ、驚くよねえ)



 アリスは、うんうん、とうなずいた。

 これだけ広範囲をカバーできることもびっくりだが、

 100年も魔力供給なしで動く魔法陣なんて、今までの魔法の常識からは考えられない代物だ。



(これに比べたら、わたしが作った『広範囲結界魔法』なんて、おもちゃみたいなもんだよね)



 今は亡き義父ビクターの顔を思い出し、見せたかったなあ、と思う。



 *



 その後、ようやくアリス以外5人が正気に戻り、今後についての話し合いを始めた。


 アリスは、これから3カ月間結界を監視することになり、

 他の人々は森に入って、結界が広がった影響を調べることになる。



「もしも大丈夫なら、子どもたちを外で遊ばせられるかもしれないな」

「そうなったらいいわね!」



 そんな話で盛り上がる。


 そして、話し合いが終わり、

 アリスが「じゃあ、わたしは魔法陣の監視へ」と席を立とうとした、そのとき。



「――アリスさん」



 ビクトリアが、改まったように口を開いた。

 その澄んだ瞳をアリスに向ける。



「お話があるのですが、よろしいでしょうか」





お読みいただきありがとうございました!

ちなみに、昨日は予約投稿をミスして1日スキップしてしまいました……。


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