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天才魔法オタクが追放されて辺境領主になったら、こうなりました ※第1部完  作者: 優木凛々
第3章 魔法陣解析

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05.謎の地図

 

 アリスはよろめきながら、金属板の裏に回った。

 ランプを高く掲げる。



「あ、あった!」



 そこには、複雑な魔法陣が描かれていた。



「やったー!」



 アリスは、思わず飛び跳ねた。

 ずっと見たかったものを発見して、感極まって涙が出そうになる。


 彼女は目をキラキラさせながらテオドールを振り返った。



「わたし、この魔法陣写して帰りたい!」

「……わかりました」



 テオドールが笑い出しそうな顔でうなずく。



「では、俺は、この周辺を見てまわってきます」



 アリスは、いそいそとリュックサックを降ろすと、紙と鉛筆を取り出した。

 ランプをかざしながら、夢中で魔法陣を書き写し始める。


 テオドールは部屋を調べ終ると、ランプを持って部屋を出ていく。


 部屋に1人になったアリスは、猛スピードで手を動かした。

 ときおり、頭上から、ズシンズシンという足音が響いてくるが、そんなものは耳に入らない。


 アリスがブツブツ言う声と、鉛筆でカリカリと書く音が、崩れた壁や床に静かに響く。



 ――しばらくして。



「……ふう」



 写し終えたアリスが、息を吐いた。

 紙に書いた魔法陣をジッと見つめる。



「この魔法陣、古城の魔法陣と同じ人が作ったっぽい気がする」



 すごい天才だったんだろうな、と思う。



「話を聞いてみたかったなあ。まあ、もうずいぶん前に亡くなっているんだろうけど」



 そんなことを考えていると、廊下の方から光が近づいてくるのが見えた。


 ランプを掲げたテオドールが部屋に戻ってくる。

 どうやらあちこち探索していたようで、服がさっきよりもかなり汚れている。



「ただいま戻りました」

「おかえり、テオドール。どうだった?」

「奥の方で階段を見つけました」



 上に上がる階段だったが、土砂でほぼ埋もれていたらしい。



「あと、我々が転移してきた部屋で、こんなものを見つけました」



 テオドールが鞄から取り出したのは、魔獣の皮のような素材でできた巻物だった。

 部屋の隅に隠すように置かれていたという。


 アリスは、巻物を受け取ると、そっと広げた。

 色あせてはいるものの、十分読めるもので、線や記号のようなもので埋め尽くされている。


 そして、どういう訳か、この地図を見た瞬間、



 ドクンッ



 アリスの心臓が、突然跳ねた。

 とても懐かしいような、胸が騒ぐような、不思議な感覚がする。


 黙り込むアリスに、テオドールが不思議そうな顔をした。



「どうしたんですか?」

「……いや、何でもない。……これって、たぶん地図だよね」

「そう思います」



 アリスは地図をながめた。

 脳裏に、どこだか分からない、にぎやかな街が浮かぶ。



(なんだろう、この記憶……?)



 テオドールが心配そうな顔をした。



「大丈夫ですか? 顔色が悪いですよ」

「うん……」

「この地図で、なにか気になることでも?」



 アリスは地図を見つめた。



「よく分からないけど……なんかここ、知ってる気がして」



 アリスの言葉に、テオドールが考え込んだ。


 壁に映るランプの灯がゆらゆらと揺れる。


 しばらくして、彼はゆっくりと口を開いた。



「前々から思っていたんですけど、アリスさんって、こっちに来てからよく『知っている気がする』とか『見たことある気がする』って言いますよね」



 アリスがうなずいた。



「うん、なんかそんな感じがすることが多い」

「アリスさんは、ビクター所長の養女と聞きましたが、その前はどこにいたんですか?」

「孤児院」



 孤児院の院長によると、1人でいたアリスを男の人が見つけて、連れて来たらしい。



「元の住まいについては聞いていませんか?」

「聞いたけど、分からないって言われた」



 アリスは地図を見つめた。

 もしも今でもこの街が残っているなら、自分はそこの出身なのかもしれない。



(機会があったら、院長先生にもう1回聞いてみよう)



 そんなことを思う。



 その後、2人はこれからについて相談した。

 とりあえず、こちら側の転移魔法陣を起動させてみよう、ということで話がまとまる。



「では、行きましょうか」

「うん」



 アリスは、巻物を大切にリュックサックに仕舞うと、立ち上がった。

 ランプを掲げるテオドールの後ろから、ゆっくりと通路を歩く。


 そして、元の部屋に戻ると、そこは変わらず静寂が支配していた。

 床には光を失った魔法陣がある。



(よし、やるか……)



 アリスは、軽く息を吐いた。

 魔法陣の埃を払うと、来たときと同じように魔法インクを注ぐ。

 そして、祈るような気持ちで「戻れますように」とつぶやくと、魔法陣の上に立った。



「行こう」

「はい」



 テオドールも魔法陣の上に乗る。


 彼が見守る中、アリスは静かに魔力を流し始めた。


 魔法陣が金色に煌めき始め、

 来た時と同じように、アリスの魔力がごっそり奪われる。

 そして、



 ぶわっ




 魔法陣の光が一気に強くなった。

 後ろからテオドールの腕が伸びてきて、守るように抱きかかえられる。




 ――そして、光がふっと消え。


 部屋は再び静寂に支配された。

 魔法陣が完全に光を失う。


 真っ暗な空間の中には、2人の姿はもうなかった。






お読みいただきありがとうございました!




追記:

ポイントやランキングを見始めると仕事が手に付かなくなるため、平日は予約投稿にしてなるべく見ないようにしているのですが、本日金曜日に見たら、なんと連載中3位になっていました。(驚)

お読み頂いている皆様のお陰です。ありがとうございます(*ᴗ͈ˬᴗ͈)♥*.゜


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