97話 窮地
-----(大島視点)-----
油断した。遺跡が崩れやすいのはわかっていたのに!
俺達が集まっていた後ろの壁が崩れて壁の向こうへと雪崩れ込んだ衝撃で、そこの床石も崩れた。
俺らは宙に放り出され、落下してしまった。
が、直ぐに叩きつけられる衝撃を受けた。下の空間まではそれほど高さがなかったのかもしれない。
しかし密集した状態で一緒に落ちた俺達に瓦礫が容赦なく降り注いだ。
俺はスキル『完全防御』があったので、叩きつけられた感はあったが痛みに襲われる事はなかった。
しかし、真っ暗な中、多数の呻き声が響き渡る。
「ぐっ……」
「ううぅ」
「痛っぇ……………」
「清みんっ! 清みん、無事かっ!」
「いだだだだ」
真っ暗で見えないまま立ちあがろうとして誰かを踏んだ。
「今灯りを点けます」
隊長の声で動くのを一瞬止めた。直ぐに小さいライトが灯る。
「わっ、すみません」
やはり隊員をモロに踏んでいた。俺の膝が乗っていたのは隊員の腕だった。申し訳ない、全体重かけてしまった。
あ、清みんどこだ!
慌てて探すと俺の腰にしがみついていた。身体が重い気がしたのは落下で打ちつけたからではなく清みんを抱えていたからか。
遺跡隊長が全員の安否、怪我を確認した。
「静かに行動しろ、足元が崩れる危険がある」
小さいライトを遺跡隊長ともうひとりの隊員も取り出して点けた。清みんのライトは落ちる前の場所に置いてきたそうだ。俺もライトは持っていない。
だが何とか見える。ひとりを除き4人は無傷であった。そのひとりは腕を痛めたようだ。
「それほどの高さはないとは言え、全員無事であったのはおそらく大島君のスキルのおかげかもしれませんね。あの時密集していたのが幸いしましたね」
なるほど。密集してたので俺のボックス内に入った状態で落ちたのか。
腕を痛めた隊員は、落ちた瞬間おそらく俺のボックスから腕がはみ出た形で瓦礫に叩きつける事になったそうだ。そして、腕を引っ込めて痛みを堪えていた時に俺が踏んだ、と。しかも体重をかけて。
うん。すなまかった。だが、折れてはいないようだった。持っていた布で素早く固定していた。流石は自衛隊。仕事が速い。
俺たちは地下遺跡の穴を降りた場所から、後ろの空間へ、そしてそこからまた下へ降りた感じか。
待機している隊員達からさほど離れてはいない。待っていれば助けが来そうだな。
この部屋は、大穴が空いていた空間の隣あたりか。一応床はある。
「大島君、申し訳ないが念の為、君の防御内に入ったままでの探索にさせてくれないだろうか」
ああ、まぁ。俺がメンバーに入れられたのもこういった何かあった時用だからな。
俺らは密集して部屋中を見て回る。ライトが照らす範囲が狭い事もあり、部屋中を歩いて確認をする。
特に何も無い部屋。俺達が開けた天井の穴の下に瓦礫があるだけ。
「隊長、あそこの隅、下方部に隙間がありますね」
ライトが向けられた先は壁の下の方だ。しかしここからはよく見えない。全員でゆっくりと近づく。
なるほど、壁の下の部分に10センチくらいの穴がある。幅は1メートルくらいか。
隊員のひとりが隙間辺りに触れると、その地面がぼろぼろと崩れ穴が広がる。
崩れた石や砂をかき出していくと、石段?下へ向かう2段ほどの階段状の石が現れた。
しかも、その先が通路なっているのが見える。ライトの光は奥まで届かないので先がどうなっているのかはわからない。
「秘密通路ですかね。埋まったのか埋めたのか……」
幅は1メートルあるが高さは50センチ程だ。これはハイハイでも難しいな。匍匐前進で進むしかない。
しかし通路の先がわからない、天井部が崩れ落ちるかもしれないし、全員での移動は無理だ。
ま、まさかこれ、俺が往復して全員を運ぶ流れ? 自衛隊でもない俺が匍匐前進で4往復? 通路の長さもわからないのに?
と思ったが、そんな事にはならなかった。
1メートル幅。ちょっとキツイが俺と遺跡隊長が並んで匍匐前進。隊長は持ってた紐で穴の前で待つ隊員に合図を送っている。清みんもそこで留守番だ。
穴はそんなに長くはなかった。ただ、途中で直角に曲がっていたので、ライトの光が届かないように見えただけだった。
穴の先はこれまた広い空間。ライトが小さくて空間の広さ、全体像の把握は難しい。
しかし、足元は今までの遺跡と比べてかなりしっかりした岩だった。隊長が紐で合図をして残りの2人が這い出てきた。
広い空間の目に前は暗くてよく見えないのだが、上は見える。何故かと言うと、かなり上の空間には壁が光を放つ場所があり上空部分は見えるからだ。
上空だけ見てもかなり広そうな空間だ。真っ暗な中、その広さを確認して回るのはかなり難しいのでは?
そも、今回の探索は、おそらく以前に行方不明になった隊員の痕跡を探したかったのだろう。
しかし俺たちは床石をぶち破って落ちてきたのだ。以前に行方不明になった隊員はここには辿り着いていないと思う。彼らが先に来ていたら床には穴が空いていただろうからな。
隊長もそれはわかっていたようだ。
「戻ろう。この暗さでは身動きがとれない。それに別の方向も探索したい」
俺たちは匍匐前進で出てきた穴へと踵を返した。
その時、背筋が凍った。
ゾワワワワワ。何、この寒気!?




