92話 新居①
-----(清見視点)-----
大名行列は無事に江戸城に到着した。違う。遺跡に到着した。
遺跡はすり鉢状に凹んだ大地だった。なので中心へ向かい斜面になっている。一部平らな場所がなくもないが、俺達の建物をおけるほどの広さはない。
なので引っ越して来た建物はすり鉢の上、ギリギリに並べて置く。
現在、大人達は建物の中を大急ぎで片付けている。やはり移動の振動で物が倒れたり散らばったりしたからだ。俺も仏間の整理中だ。
産院も保育園も中が片付かないと子供達を入れられない。俺達と一緒にここまで来た遺跡避難所の自衛官は子供を背負ったままだ。
慣れない漢達が背中でむずかる赤ん坊をあやしている。うん、俺も最初のころ裕理君に泣かれたなぁ。
すり鉢の上、保育園の周りを赤子を背負った隊員が1列に行進している。
すり鉢の底の穴から、人が出て来始めた。今日、俺達が来る事は避難民に伝えてあるそうだ。気になってしょうがないってとこか。
女性が何人かすり鉢の坂を上がってくる。途中途中に遺跡の壁石があるので、ここでも小さないろは坂状態だ。
上まで上がった女性、おばさんと呼ぶのは失礼だが、そこそこ妙齢のご婦人数名が、泣いている赤ん坊を背負った自衛官の背中から赤ん坊を下ろして、抱いてあやした。
「お腹すいてるみたいよ。ミルクはあるのかしら」
「こっちの子はオムツが濡れてるわねぇ。気持ち悪いよねぇ、すぐ変えようね。オムツの替えはありますか?」
保育園から顔を出した園長先生がそれらに答えていた。
「お母さんおるん? だったら私が掃除を手伝うからお母さんはおっぱいあげてや」
「お母さーん、この子のお母さんは居ませんかぁ」
泣いてる子を背負った自衛官も泣きながらそっちによっていった。
「清見も、裕理をもらってきてくれ。仏間でご飯食べさして少し寝かせよう。ずっとおぶってもらってたからな。自衛隊の人も疲れたけど裕理も疲れただろ」
「あ、うん。わかった」
俺は仏間の片付けを兄貴に任せて自衛官達の元へと走った。
「裕理くーん、裕理くんどこですかー。お返事してくださーい」
「はぁい」
「あい!」
「あー」
「あいぃー」
複数から返事が返ってきた。裕理君どれだよ。名前を呼びながら自衛官の間を回った。3人目で裕理君ゲット。
「清見くーん。うちの郁未も連れてきてぇ」
「あ、うちのまなとりりもお願い。清見くん」
「りこちゃんも一緒にね」
「うちの子もお願いします」
フェリーママさんとこの子って名前なんだっけ。ええと、郁未くんとまなちゃんと………、いや、俺そんなにたくさん持てないから。
ちょっとパニックになっていたら自衛官の方で俺に近づいてきた。預かった時に親子の名前はしっかり聞いてあったそうだ。どなたかは知りませんがグッジョブです。
産院と保育園がある程度片付き、子供を下ろした自衛官達は、今度はその周りの警戒にあたっていた。
働き者だなぁ。有難いけど心配にもなる。
引越し作業もそこそこ終わり、産院と保育園には最低限の人を残して他は遺跡の中へ行く事になった。
今後の話し合いは大事だ。それと遺跡避難所の見学ね。
俺は前回ほとんど見ていなかった。今回はうちの避難所グループの人数が多いのでそこに紛れて見学をしよう。
狭くて暗い通路の先、急に開けた場所に出る、下へと降りる階段のすぐ脇に俺のお気に入りの穴がある。
「あら、遺跡にいたずら書きした人がいるわ」
あ、それ、俺です。ごめんなさい。
穴の横の平なとこに持ってたペンで書きました。『俺の穴』
大島氏が俺をジッと見ていた。内緒でお願いします。
「清見くんみたいな人がいるのねぇ」
「あはは、ほんとそうねぇ」
「…………まさか?」
俺は目を逸らしたが、皆の視線を感じた。




