91話 よいしょおっ
-----(清見視点)-----
引越しの日。
病院から全員が外に出た。この世界に転移してきた直後に出産した妊婦さんも居たが、その最後に生まれた子も今や生後3か月以上だ。
外に出しても大丈夫、と言うか結構前からお散歩で保育園の庭に親子で遊びにもきていた。
誰も居ない状態の病院の壁に手を当てた看護師長が、肩幅に開いた両足を踏ん張り、目をガッと見開いた。
「ぅよういっしょおおぅっっ!!!」
凄い踏ん張りだ。何か出るのではないかと俺はドキドキしてしまった。
病院が宙に浮く事はなかったが、看護師長が右足を一歩前に踏み出すと病院が揺れた。
そしてそのまま、2歩3歩と進む。病院を手のひらにくっつけて。
「おおおお」
皆から歓声と拍手があがった。
こちらを振り返ってニコリと笑った看護師長はそのままスタスタと歩きだした。
病院がまるで手に持った買い物カゴのようだ。バカでかい買い物カゴだ。
そのまま自衛隊と兄貴がついていき、森へと進む。
ドガガガガッ
木を薙ぎ倒して進んでいく。
俺たちはそんなに驚かない。何故なら保育園をここに運んできた時があんな感じだった。
園長先生が保育園の園庭の柵を外から握り、まるでちょっと柵の場所を変えるわね?みたいな感じで園ごと動かしたからだ。
うん、おどろかなかったよ。だってその前には飛行機ママも飛行機の折れた翼のどこかを掴んで半分になったとはいえそれなりの大きさの飛行機を持ち歩いたからね。
いや、この世界の女性は逞しい。
勿論、キッチンママ達も自分の持ち物(キッチンやバス、トイレ)を持ち歩いた。
そして唯一男性である俺も仏間を運んだよ。いや、重さは感じないのよ。
ただ、置き忘れないように手に吸い付けてる感じ?どこかを摘んでいないとつい置き忘れるのだ。
空間スキル、どうなってるんだ?
そんなこんなで看護師長の空間移動に成功したのでいよいよ出発である。
遺跡の自衛官が先頭、その後ろをまずは看護師長が行く。
俺らは少し待つ。
と言うのも、周りの森の木々を薙ぎ倒してくれるのである程度通りやすくなったところを俺たちが続く感じだ。
病院が一番大きいからな。
ドガガガと音をたてながら森に巨大な道が出現していく。
続いて出発するのは、自衛官が付き添った飛行機ママだ。その後ろに保育園ママ。
1時間進んだら止まってもらい、後ろがついてきているのを確認、30分休憩を繰り返す。
乳幼児のお昼寝もあるからな。
保育園ママの後ろは新生児、幼児、老人と男性を背負った一団が何も背負わない護衛の自衛官に守られて進んで行く。
その後ろを残りの男女が進み、最後に、トイレママ、風呂ママ、キッチンママ、仏間を持った俺が、勿論しんがりは自衛官が守ってくれる。
大行列が休みながら比較的安全な森を進む。
あくまで比較的なので、敵が出た場合は近場の空間へ即避難をしてもらう。
油断大敵。
じわじわカメの歩みでも安全第一。先頭の看護師長とも連絡は密だ。最後尾から常に自衛官の伝令が走ってくれる。大島氏は何かあった時のために常に行列の中間地点当たりを歩いている。
まるで大名行列の参勤交代だ、とか言ってるやつもいた。
本当、それなぁ。
そして俺たちはようやく江戸城に、違った、遺跡に到着した。




