9話 過酷なファンタジー
2026年3月27日、8:30を回った頃。
警察の通信指令センターに最初の一報が、そして通報が集中し始めた。
消防への通報に「火事ですか救急ですか」と問いかけるとわけのわからない返答が返る電話が集中した。
首を傾げつつ電話をしてきた人を落ち着かせているうちに、事故の連絡も急増した。
同じ事故を多数の人が連絡してきいるのではと思ったが発生場所がまちまちであった。つまり、あちこちで同時に事故が発生している。
-----(消防署)-----
署内ではテロが発生したのではないかとざわめいた。
先に出動した隊とも連絡が取れなくなった。
ようやくテレビで確認できたのは上空から放たれた放射線状の黒い物質が降り注ぐ映像だった。
どこかの国から攻撃を受けているのか?それなら国が、自衛隊が出動しているはず。
どちらにしても我々は現場で市民を助けるしかないと、出動をしていく。
戦争が始まったのか。どこの国と?家族は無事だろうか。仲間や署長を見るが皆戸惑った表情のままだ。
署の外からも騒ぐ声が聞こえた。慌てて外へ出ると、テレビで見たあの黒い爆弾(?)が、この街にも降り注いでいるのが見えた。
ただの爆弾攻撃とは違う、もっと最先端の攻撃じゃないのか?上空で黒い物体は一度静止したかと思うと爆発したように四方八方に分散した。
そしてその分散した黒い粒は人に向かって落ちてくる。落ちてくるというよりも追ってくるのだ。まるで追尾ミサイルのように黒い粒が人を追い回し、追いつかれた者は突然止まる。
止まって数十秒でぐにゃりと渦巻き吸い込まれたように消えてなくなった。
目の前に居た親子連れを庇った先輩の背中にその黒い粒が張り付き、動きの止まった先輩はやがて縮んで消えていった。
親子を引っ張り、消防署の建物へと押し込んだその時、俺の頭上に黒い粒が止まったのが目の端に映った。
俺は動けなくなり、しかしどこかから聞こえた声『スキルを授ける』、そして目の前に何かの画面、でも俺今動けないぞ、と思ったが腕だけ幽体離脱?いや、目線で動かしている?
なんて考えている間にブラックアウトした。
-----(自衛隊)-----
隊は大混乱であった。出動の命が出た隊、出なかった隊。空からの謎の攻撃。
たまたま出動中だった隊員、駐屯地に居た隊員達も、突然に起こった謎の攻撃に全くなす術がなかった。
せいぜいが近くにいた一般人を守り逃しながら自分達がその黒い攻撃を受けるくらいであった。
そして消える瞬間にスキルを取得した者も多くなかった。
『何かを感じた者』か、もしくは『何となくふざけて選択した者』がスキル取得をする事が出来た。
一般国民は日本人にありがちのボケっと30秒を費やしてスキル未取得のまま、謎の世界へと転移をする事になった。
が、それでも自衛隊は『何かを感じた者』がそれなりにはいたようだ。「とにかく選べぇぇぇ!」と固まった身体で声を絞り出した上官はまさに自衛隊の鑑と言えよう。
だが、転移後。
武器を持っていた自衛官もいたが、スライムは物理攻撃が効かないので銃もナイフも効果なし、それどころかなんでも溶かす。
攻撃を認識すると集まり引っ付き溶かす。
ただ地上では動きが遅いのが幸いだった。水たまりのようなスライムだがジャンプはするし水中では動きが速い。
この世界へ転移してきたのは人間だけでは無かった。あの黒い粒に吸い込まれた動物も居た。
スライムにとっては小動物や虫や鳥もエサだ。
数メートルくらいなら溶解液を飛ばせるので鳥さえも狙い撃ちされている。
食べものが無くなるとスライムは動かなくなる。その場で餌待ちだ。
ゲームやラノベ好きの自衛官がスライムの核に気がついた。
しかしスライムは強力な溶解液を器用に使い身を守っていたのだ。
踏まれても叩かれても瞬間器用に溶解液を噴射して相手を溶かすのでスライムの核を壊すまでに至らない。
槍や刃物も同じく核に届く前に溶かす、強力な溶解液が武器だ。
「撤退!撤退!撤退だ! 民間人と負傷者を先に逃せ! 下がるぞ」
自衛官でスキルを貰った者達が立ち向かうが全く効果なしだった。
自衛隊の中にはスキル魔法攻撃(微)を取得した者も居た。しかし(微)では攻撃の形にさえならない。マッチくらいの火しか発動しなかった。しかも一回きり。
「何だよ! 全然効かねえよ」
「とにかく撤退だぁぁぁぁ」




