86話 持って行くルール
-----(清見視点)-----
出発はさっそく明日に決まった。
大島氏がふくらはぎを揉んでいたので、俺は拙い回復魔法を大島氏のふくらはぎにかけてみた。
傷とかでないと気楽にスキルを使える。
それを見た看護師長が、産院へと誰かを呼びに行かせた。やってきたのはマッサージが出来る女性。
産科病棟には何とマッサージさんが居たのだ。あの産院にはアロマ何とかとかリフレ何トラジーとかを行う部屋があるらしい。男のしかも未婚の俺にはようわからん。
呼ばれて来たその人が大島氏の足腰をマッサージしていた。妊婦さんは常に重たいお腹を抱えているから需要があるらしい。俺もやってほしいなぁと呟いたら、3時間の徒歩で?と鼻で笑ってくれた。
いいもん、自分でヒールするから。微だって積もれば山になるんだからね。
大島氏のマッサージの横で会議は続く。
こちらから遺跡へ移動するにあたり、必要な事を事前に調べてくるらしい。
①まずは、こちらの大きな箱物を置く場所があるかの確認。
②その地帯の危険度。
③向こうの避難民の協力具合
特に③は重要だ。
こちらから物資を搾取するだけで協力する気が皆無なら、今回の合流の話は無かったものとする。
今までは自衛隊に守られるだけだった避難民も、これからは動く側になってもらう事を了承してもらわねばならない。
それからある程度の班わけ、それに役割や作業も決める。ただ避難所に居るだけでなく、やるべき事には参加してもらわねば。
と言っても俺らは人数がそこまで多くなかったし何となく職業で分かれていたりしたので作業分担もやりやすかったが、無造作に居る300人の避難民、難しいかもしれないな。反感を持たれたり反論する人も出そうだ。
今回は短期間で①〜③を実施。出来れば1週間で結果を持ち帰る。
1週間設けたのは避難民の動きを観察する為だそうだ。
『守ってもらえる避難民』というスタンスをやめることができるかどうか。
①②だけなら初日である程度はわかる。
残り6日、大島氏と自衛隊で遺跡の奥へ入るそうだ。もちろん危険なので少しだけだ。浅い場所さえ危険なら遺跡に行くのは取りやめになる。
それと、周りの森でレベルが上がりそうなメンバーのパワーレベリング。
今まで試した事はないが、太い幹を退かすだけで魔物(昆虫ほか)は居なくなるのか、それも試して欲しかった。
こちらの検証は短時間では無理かもしれない。
それから、こちらが出す予定の絶対に守ってほしいルール。
それは『空間スキルの空間は個人の持ち物であるという事を認識してもらう。その空間は決して避難所ではない。皆のために提供しろと言う発言には一切従うつもりはない』という事だ。
それから『暴力沙汰などの犯罪に対して厳しい対処をお願いする、場合によっては追放もある』、そこも徹底してほしい。
考えたくないが、人間追い詰められると何をするかわからない。世紀末あるあるだからな。
それから、緊急の患者がいる場合、自衛隊員が背負って安全地帯を通りこちらへ運ぶとの事だが、動かせる患者ならそのまま待機してほしいとの事。逆に動かせない患者については、産院からドクターの同行も案に上がっている。
しかし結局ドクターのみが行っても施設や器具がないのでは治療が難しい。やはり待ってもらう事に話が纏まった。
引越しが何らかの事情で延期になった場合には手をうつらしい。
俺達は空間スキルの検証結果を早めに病院や保育園、それと飛行機にも伝えていたので、そちらで祝福される再生物資の保管を行っていた。
特に病院は、薬関係の再生があり、出来るだけ保管をしているそうだ。
ただ院内にはある治療や出産時に必要な程度の薬しかなく、高齢者にありがちの病気や症状に使えそうな物を出来るだけ工夫をして考えているそうだ。
出発日、持っていく荷物は想像以上に多かったが、流石は自衛隊員。なんなく背負っていて驚いた。
しかしやはり荷物がスペースを取るので、4人でいっぱいだな。
大島氏の両脇には3佐と隊長が並ぶ。大きな荷物を後ろと前にも背負っている。400人分のおにぎりとおかず、他食糧だから結構な量だな。
大島氏の後ろに兄貴がたつ。兄貴はそれほど大きくない荷物を背負う。大きいと大島氏のボックスからはみ出るからだ。
俺……自衛隊には絶対に入れそうにない。
兄貴、隊長と3佐の荷物に挟まれて窮屈そうだな。まぁいいか。頑張れ。ほら、裕理くんもパパに手を振って。
一行が出発した。




