75話 お客様
-----(清見視点)-----
外が騒がしい。
何かあったのかと思ったら、俺らのセーフティゾーンに入り込もうとしている謎の一団がいたそうだ。
あ、セーフティゾーンは俺が勝手にそう呼んでいるだけで、別にセーフティでも何でもない。
ただの避難民の集まり、避難所である。
大島氏に呼ばれて産院横の保育園の向こう側へと向かう。あっちは比較的樹木が少ない地域だ。
魔物(虫とか)が全く居ないわけではないが、サイズも結構小さい。地球より若干大ぶり?ってくらいだ。けどまぁ、あのサイズの蜘蛛がトイレに居たら、俺は飛び出す。
大島氏に着いて歩いて行くと、うちらの敷地と勝手に呼んでいる境目あたりに迷彩服の一団が居た。
迷彩服?自衛隊か?どうやらうちのポヨン君に驚いて固まっていたらしい。
俺らの後ろから来た、同じく呼ばれたんだろう隊長が、俺らを追い越して向こうの一団と向き合いかたまる。
互いに固まっていると思いきやいきなり手を突き出して硬く握手をしていた。
うーん、わからん世界だ。自衛隊のしきたりとかか?
隊長がくるりと振り返り俺を呼ぶ。
「清見君、ポヨン氏が安全なのを彼らに見せてあげてくれないか?」
「はーい。ポヨン君、こっちおいでー」
俺はポヨン君を呼び寄せた。ポヨン君は勢いよく飛び上がり、俺の肩から頭へと乗った。もちろん、ポヨン君を呼ぶ前に花笠をかぶった。ポヨン君は花の真ん中に可愛く収まる。
おお、とか、わぁとか声が上がった。
あの、ところで、俺が『君』でポヨン君が『氏』なんだ。いいけどさ。
隊長はお互いに部隊を名乗り合い、相手を信じたようだ。けど俺たちは甘くない。もしかしたら自衛隊に化けた盗賊もありえる。
こんな世界だからな、自分達の身は自分達で守らなければ。安易に中へは招き入れないぞ。
大島氏もそう思ったのか、他の人に伝えてパイプ椅子と長机を外へ持ってこさせた。
えっ?今は子供らの昼寝タイムだから騒がせたくなかっただけ?……そうなんだ。
ママさん達も普通に歓迎していた。お茶とお菓子を振る舞っていた。日本人は危機感が足りないと思うぞ?
ここに来た彼らは12人居た。森の中にまだ3人居るそうだ。何かあった時の連絡係だそうだ。
向こうの隊長らしき人がパイプ椅子に腰掛けた。横には副長らしい人が立っている。あ。俺の勝手な想像だ。
残りは地べたに座り込みくつろいでいる。
ママさんらは座り込んでいる自衛官に飲み物とオヤツを渡しているようだった。遅れてやってきた看護師さんか保育士さんかわからんが、濡らしたタオルを持ってきて渡していた。
うちの避難所も人が増えて誰が誰だかわからない。うちでは迷彩服でうちの隊長を見分けていた。それと消防服だと山根さんかなとか。
それが向こうは全員迷彩服だ。俺はもう迷彩しまくっている。うちの隊長はどれだ?
名前を書いたゼッケンを背中に付けて欲しいな。『保–鈴木』とか『産–山田』とか。保は保育園、産は産科病棟だ。
となると俺は『仏–清見』か。苗字だと兄貴と被るからな。
似た雰囲気の隊長(?)同士が向き合い話をしている最中に看護師長さんが混ざった。
流石の俺も看護師長さんを誰とも間違えたりしない。めっちゃ怖そうなおばさんなんだ。昔美人だった系、でも怒らせたらダメなやつ。たぶんあの人がこの村の村長だと俺は思う。
何故か隊長2と看護師長に兄貴も混ざっている。兄貴、勇気あるな。
だが、兄貴がキョロキョロしてるのに気がついて俺は隠れた。
呼ばれたく無い。面倒くさい。大島氏も地面に匍匐していた。
「清見ぃ! 大島君、ちょっと来てくれ」
が、すぐに見つかった。チクショー。
死んだふりをしてみたが、自衛官が俺を担いで行った。えっ、この自衛官って向こうの人?俺とは初対面だよね?俺捕まったの?
「助けて」
一応言ってみた。うん、無視された。
大島氏は観念してついてきた。




