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俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?  作者: くまの香


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71話 引っ越し決まる

 -----(大島視点)-----


 ひと通りお互いの状況を話したのち、俺らは一旦仏間の避難所へ戻る事にした。

 レスキューチームや避難所の皆への相談が必要だからだ。


 どうするにしても、当座の食料は明日にでも運んでくる事を約束した。

 またしても俺の森往復の日々が始まるのかと思うとため息が出る。仕方がないと理解しているが、出来ることなら清みんちの押入れに篭もりたい。


 そんな事を思いながら看護師長に帰る挨拶をしていると、清みんは入院中の母親数人に捕まり、クッキーやらチョコを手渡されていた。

 少ない食料を節約して生活する中で取っておいた物だろうに。「いいです、大丈夫です」と断る清みんに、「いいから持っていきなさい」とポケットに強引につっこまれていた。


 清みん、俺と同じ27歳のおっさん、だよな?…………羨ましいような羨ましくないような微妙な気分だった。




-----(清見視点)-----


 大島氏に誘われて森に遊びに(?)行ったのだが、今日はびっくりした事がふたつもあった。


 ひとつは、スライムと仲良くなった事だ。しかもとろけたわらび餅だったスライムが、ちゃんと形のあるわらび餅へと変化した。

 あ、形はともかく、人を襲わなくなったのには驚いた。


 しかしこの世界の?全スライムが人類と手を組んだわけではない。あ、ごめん、ちょっと自分でも何を言ってるんだか。

 ええと、他のスライムはポヨン君みたいにはならなかった。ポヨン君と言うのは俺と仲良くなったスライムだ。


 俺の時と同じように大島氏も弁当をあげてみたけど、スライムは変化しなかった。

 それに帰り道で通りかかった荒地でも普通にスライムはべしょんべしょんと襲いかかってきて、大島氏のボックスに張り付いた。


 スライムについては今後も要検証だな。


 そしてびっくりしたふたつめ。

 荒地の向こう側に、何と! 病院が転移してきていた。しかもただの病院でなく産婦人科?

 結構大きな病院みたいで入院中……出産後?の親子が大勢いた。


 大島氏と看護師長さんがお互いの近況を話して、周りは聞いていたのだが泣いたり笑ったり結構大変だった。

 うん。病院って大変だな。


 それからこっちへ戻る前に少しだけ入院中の個室を覗かせてもらった。

 生まれたての赤ちゃん、小さいなぁ。可愛い。うちの裕理くんも可愛いけどさ。裕理君の話をしたらナースのお姉さん(もしかしたら俺より若いかも)が、離乳食の缶詰を持たせてくれた。有難いです。


 新生児室もガラス越しに覗いた。小さい。これでも大きくなったんだって説明してくれた。

 7人の新生児のうち2人はお母さんが居ない。先に退院してあの日はまだ面会に来ていなかったんだって。5人はお母さんも入院中だった。辛いね。でも、うちの裕理君も母親はいないけど元気に育ってるからな。みんなで守るから安心してな。


 なんか病院を出る前にポケットはお菓子でパンパンになっていた。帰ったらりこちゃん達にもわけて一緒におやつしよう。



 なんて呑気に構えていたが、戻ったらおやつどころではなかった。

 スライムの話と病院の話で急遽会議が仏間前広場で開かれた。



「スライムがテイム出来るのかっ」


「それはスキルでしょうか?」


「清見さんにテイムのスキルはありませんでしたよね?」


「それよりも先に産科病院の移動について話し合うべきだろう」


「驚いたな。しかしそんなに大勢の乳児をここに迎えられるのか?」


「ここにって言うかこの世界に病院ごとだから逆にこちらには嬉しいわよね。病院がある安心感?」


「でも産院ですよね?」


「産院でも病院は病院よ」


「電気は相変わらず使用不可能だったのですよね」


「病院ごと森の中を移動できるの?」


「あのぉ、ポヨン君の話は……」


「スライムの事は今は後回しだろう」


「でも、連れて来ちゃったのよね? あ、今どこに居るの?」


「段ボールに入れて森に…………」



 そう。大島氏に段ボールを取って来てもらったのだ。一応それにタオルを敷いてポヨン君を入れた。

 段ボールの蓋には『ポヨン君の家』と書いておいた。


 話が病院とスライムを行ったり来たりで、誰か仕切ってくれって感じだ。

 いつもなら隊長が仕切ってくれるのだが、病院移転を仕切りつつもスライムに気が向いているらしい。スキル持ちの特にオタク系の者はスライムを見に行きたくて仕方がない様子だった。



「はーい。皆さん、聞いてくださーい」



 大島氏が立ち上がって声を張り上げた。大島氏も本当は面倒なんだろうなぁ。ごめんなぁ、俺のポヨン君のせいで。



「まずは病院の移転の件を決めましょう。そっちを早く決めないとスライムを見に行けなくなりますよ」



 大島氏がそう言うと皆が姿勢を正した。(皆って言うかスキル持ちの人達)



「あのでかい病院を運んだり生まれたばかりの新生児を移動させるよりも、いっそ、うちらがあちらへ移動しませんか?」



 大島氏の意見はまさに目から鱗。皆がうんうんと頷き出した。確かにあのデカイのを運んでくるより、こっちのチマチマしたのをあっちに運ぶ方が早い。


 大島氏が今日持っていた地図を開く。レスキューチームが近くへと寄っていった。



「ここ、荒地を迂回する経路なら、それほど危険なく移動が出来ると思います。そこは明日にでもレスキューの皆さんに確認をお願いします。病院の周りですが、パッと見た感じ太い木は見当たりませんでした。そこも明日、レスキューで確認をお願いします」



 紛糾していた話し合いはあっという間に全員一致でこちらが病院近辺への引っ越しをする事で同意した。

 まずは明日、レスキューチームが向こうの状態を見てからの話になるので、ここに居る者たちに今出来る事はない。



「じゃあ見に行こうか」

「今すぐ行こう! スライムを見に!」

「ゲームみたいなスライムなんだろう?」



 嬉々とした隊長を先頭にポヨン君の段ボールを置いた森の中、と言っても仏間に近い浅い場所だが、そこへと興味がある面々がゾロゾロと向かった。



 良かった。居なくなってたらどうしようと思ったけど、段ボール箱の中のポヨン君は大人しくしていた。

 顔の無いスライムだから寝ているのか起きているのかはわからない。



「ポヨンくーん、おまたせ」



 声をかけて両手で掬い上げた。皆はおおっと声を出したがポヨン君を見て固まった。が、直ぐにドド君(大島氏がドドって呼んでたけど本名なんだっけ?)が、俺に近づいた。



「触って……平気、かな?」


「ドド君、危ないよ、指溶かされるよ!」



 女子高生の……えと、倉田さんだっけ?がドド君の服を引っ張った。そうか、荒地に居たんだっけ。

 荒地から来たメンバーはスライムに溶かされる人達を目撃したと聞いた。よく、スライムを見に来る勇気があったな。



「大丈夫か? ドドすけ」



 ドドの指が震えているのに大島氏が気がつき心配そうな顔になっていた。



「大丈夫。これを乗り越えないと一生スライムにさえ怯えて暮らす事になる。俺はS級冒険者になるんだっ!」



 ええー。

 冒険者希望なんだ。若いって羨ましい。

 俺は街から出る気はないから冒険者にはならない。家からも出ないぞ。って、この世界に街があるなら、だけどね。


 でも指先が凄く震えている。俺よりずっと怖い経験をしたんだろうな。



「あの、ポヨン君はパンとかお菓子が好きだよ? あげてみて」



 俺が腰を突き出すと、大島氏が気がついて俺のポケットからお菓子をひとつ取り出した。病院でママさんらに貰ったやつ。(勝手に突っ込まれたやつ)



「あ、ちゃんと剥いてあげてね。ゴミも食べるけどね」


「お、おぅ」



 ドド君が大島氏から受け取った個装のクッキーの袋を開けた時、倉田さんがそれを取り上げた。



「貸して! 私がやるっ!」



 そう言って倉田さんは袋から出たクッキーをむんずと掴んで、あろう事かポヨン君に勢いよくブッ刺した!


 ちょぉっ!!!

 焦った!それ、攻撃じゃん、クッキー攻撃!ダメっしょ。


 ポヨン君が反撃するかと思ったけど、ポヨン君は大人しくクッキーを取り込んでいった。

 皆もポカンと見ていた。怖いわぁ、女子高生。



「あの、出来れば、もうちょっと優しくお菓子をあげて、ください? あんなに強く口に突っ込まれたら嫌でしょ……」


「あ、ごめんなさい」



 素直に謝ってくれた。そして見ていた皆が俺のポケットから菓子を取り出して、順番に優しく菓子をポヨン君にあげていた。



「撫でてもいいかな?」

「噛まない?」

「噛まないだろ? 歯は無いからな。強いて言うなら溶かさない?」



「ポヨン君、みんながポヨン君と仲良くしたいんだって。ここに居る人達を食べたり溶かしたりしたらダメだよ?」



 一応、目の高さまでポヨン君を持ち上げてお願いしてみた。



「清みん。ポヨン君の顔ってそっちなの?」


「…………わからない」


「って事は、尻にお願いしてるかもしれないんだ」



 そ、そうかもしれない。いや、いいんだよ、どっちでも(どこでも)。

 気のせいかポヨン君が楽しげにポヨォンと揺れた気がした。



「順番だぞ! ひとり3回までだ! それとポヨン氏の嫌がる事はするなよ」



 隊長が皆に注意をしていた。



 その後は仏間避難所へポヨン君を連れて戻る事になった。と言うのも、『襲うのNG』メンバーとして避難所の全員をポヨン君に引き合わせる事となったのだ。


 避難所ではスキルのない人、ゲームや小説の知識がない人達にも、ポヨン君は受け入れられた。

 特に小さな子達は興味津々でポヨン君をペチペチした。



「郁未くん!摘んじゃダメ!」

「裕理くん、舐めないで! あ、こら、りこちゃんも舐めない」



 ママさんの目がない所ではポヨン君に触らせないと即決まった。うっかりスライムを食べたりしたら大変だ。



「清見くん、ポヨン君は子供の手が届かないように頭の上に乗せておきなさいよ」


「そうね。そうしてもらえると安心だわ」



 確かにそうだなと思い、頭上に乗せたがイマイチ安定感に欠ける。ポヨン君が頭上でズリズリと落ちそうになる。


 すると兄貴が仏間の前に出されていたゴミの段ボールから、花笠を取って来た。森を探索した時にヘルメット代わりにかぶったやつだ。皆と逸れても見つけてもらいやすいかもとかぶったやつ。


 花笠のサイズは園児用なので小さいが、頭に乗せて顎紐で固定出来る。そして笠の上には紙で作られている花が輪になっている。


 ちょうど花の中央にポヨン君が収まる感じだ。



「お、いい感じだな」



 …………いい感じなのか。まぁ他に良いものがみつかるまでは仕方がない。

 ちょっと、兄貴!写真撮るのやめて!


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