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俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?  作者: くまの香


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69話 荒地の向こう

 -----(清見視点)-----



 大島氏達が転移してきたと言う場所、荒地で俺はスライムを観察していた。

 もちろん大島氏の防御のボックス内からだ。


 大島氏の防御ボックスに踏み潰されてもスライムの核は潰れる事はなく死ぬこともなかった。


 それを見てふと思った。スライムってどこが口なんだ?ボックスの底でペタンコになっているスライムに、持っていたランチボックスの中身をあげてみる。


 まず、潰れたスライムの核から遠い部分にパンを近づけると核が移動した。核が、と言うかスライム自体が移動してパンの真下に来る。核ではないがその近くにパンが吸い込まれた。『口』があるわけではないが核の近くで味わう……のだろうか?


 観察していた時にスライムの核にほんの少しヒビがあるのを発見した。元から傷ついていたのか、経年劣化なのかは知らないが、大島氏のボックスに潰されていたままだと死んでしまう気がした。



「あー、まぁ。じゃあジャンプするから俺におぶさって。清みん残してジャンプしたら大変な事になるからな」



 大島氏は俺をおぶってから前方へとジャンプした。重くてごめん。大島氏も俺と似たようなインドア派なので、ひょろいジャンプであったがスライムの上からは無事に退く事は成功した。


 俺たちはスライムから少し距離をとった。最初は追いかけてくるが、スライムは動きが遅い。ある程度の距離が出来ると諦めて他所に行ってしまうのだそうだ。



「あれ? こいつしつこいな。清みんが餌を与えるから着いてくるじゃないか」


「ごめんなさい……」


「おかしいな? 普通はこんくらい離れると追ってこないんだけどな」



 岩盤石の上を大島氏に腕を掴まれて端から端へと移動した。しかしゆっくりではあるが、スライムが俺らを追ってくる。



「まぁ、ボックスあるからいいか」



 大島氏はそう言って逃げるのをやめた。そして大島氏がここに来た目的でもある、他の人へ向けた連絡を岩盤石に貼り始めた。

 書いた紙が雨でも多少は保つようにラップで包まれている?そんな物を石に養生テープで留めていた。


 しゃがんで作業をする大島氏の側に俺は立っていた。その時俺のふくらはぎに何かがぶつかった。

 振り返るとスライムだった!



「わあああああ!」



 思わず叫び声を上げた。

 どうして!

 大島氏の防御内に居るのに!



「清みん!」



 大島氏も驚いて立ち上がり俺の腕を引いた。まさか、防御にタイムリミットとかあったのか!

 大島氏は俺を背に隠そうとするが、スライムは大島氏を避けて俺にアタックしてくる。


 溶かされる!…………そう思い目を瞑ったが、痛みは襲ってこない。麻酔性のある攻撃? そりゃあ、痛くないまま食われた方がいいけど……。と、いつまで立っても痛くないし、死んで、ない気がして目を開けた。


 俺の足元に絡みつくようにスライムがポヨンポヨンしていた。もちろん痛くないアタック。そして足も溶けていない。

 大島氏もハニワになっていた。


 大島氏と見つめ合う。



「清みん。テイムしたのか? スキル確認してみろ」


「あ、うん」



 大島氏に言われて、ふんっ!とスキル確認をした。

 スキルは『空間(仏間)』と『回復』のみだった。



「スキルは変わらずだ。仏間と回復だけだ」



 お互い見つめあったあと、スライム見る。そっと両手を出すとそこに飛び乗ってきた。

 地面で見た時はゆるいわらび餅のように掴みどころの無い崩れた形状だった気がする。それが今は、しっかりと形のあるわらび餅。


 これは、可愛い系のスライムじゃないか?

 大島氏が岩盤石の外の砂地へと何かを投げた。当たった石の下からズルズルと出てくるスライム。

 うん、さっき見たのと同じ形状。大島氏はソレとこいつを見比べる。



「何でこいつだけ変わったんだ? 清みん、何した? テイムのスキルは無いんだよな?」


「無い」


「餌付けか? まさか、餌付けするとスライムがレベルアップするのか?」


「さ、さあ?」



 大島氏は恐る恐る、俺の手の中のスライムを突く。おとなしい。大島氏の指を食ったりしない。そもそも完全防御の大島ボックスの中に居るからな。


 大島氏は自分の分のランチボックスを砂地のスライムへと与えた。

 しばらく待ったが形状が変わる事はなかったし、相変わらず隙あらばアタックしてくる崩れたわらび餅のままだった。


 俺がスライムをリュックに入れたのを大島氏は見逃さなかった。



「おい、持ち帰る気か?」


「飼っちゃダメかな……。ポヨン君おとなしいのに……」


「名前まで付けたんかっ」


「こんな所にひとりで置いていくのは可哀想だよ。外で、外で飼うから!」


「外ってどこの外だよ。仏間の外とかはダメだぞ? 避難所の外側の森なら……」


「うんうんうん! そこで飼う」


「皆の了承を得れたら、だぞ?」


「わかったー」



-----(大島視点)-----


 清みんの満面の笑みを見たら「捨ててきなさい」と言えなくなった。

 まぁ、不思議現象でもあるし、避難所で皆に要相談事項だな。

 それにしても清みんは何もんなんだよ。空間仏間に回復、そしてスキルとして表示はされていないみたいだが、明らかに『テイム』だよな。しかもスライムの形状の変化。


 実はちょっとだけ羨ましかったりする。俺も弁当やったのに、アイツは変化しなかった。くっそう。



「この後は?」



 清みんに聞かれた。清みんは早く帰りたいだろう。俺も弁当が無くなったから帰りたい。

 だがもうひとつだけ、やる事がある。



「せっかくここまで来たし、あちら側にも貼り紙をしたい」



 そう、荒地のこちら側、俺らの避難所へ向かう途中は幾つかの場所に貼り紙をした。

 それにレスキューチームもあちこちの木に目印を掘っている。


 だが、荒地の向こう側はまだ足を踏み入れていない。

 あの日、あちら側にも逃げた人は大勢居た。今も生き残っている可能性は低いが、貼り紙はしておきたい。





 荒地の向こう側。

 進んでいくとそこも地面が岩盤から土に変わり、徐々に硬そうな草が生え出して細い木が立ち並び始める。



「仏間の避難所の森とは若干違うかんじだなぁ」


「そうだな。植生が違うのか。これだけ見ると日本の白樺並木の避暑地って感じだな」


「もしかして、実は軽井沢辺りって事はないかな。それかグンマー」


「そうだな。あのカブトムシが普通サイズならな」



 俺が指差した方を清みんが見上げた。



「いや、あのくらいならいるんじゃないか?」


「清みん、サイズ感がバグってるな。草鞋サイズのカブトムシが日本に居たか?」


「うっ…………あのくらいで可愛く見えるから慣れって怖いな」





 もう少しだけ進んで、貼り紙をしたら戻るか。

 しかし森は深くはならず、すぐに開けた草地に出た。スライムは居ない。虫も少し大きめのままだ。


 そしてそこにはコンクリの建物(切り取られたような残骸)があった。



「空間スキル持ちか……」


「だねぇ。…………何の建物だろう」


「学校か?」


「窓が学校っぽくない。…………病院?」


「老人ホーム、高齢者サービス住宅とか言うやつかも」



 俺と清みんは静かにその建物に近づいた。窓があった。 



「違う。ジジババじゃねぇ。若人だ。人生始まったばかりの若人」



 清みんが壁に貼られていた看板を見つけた。



「産科病棟だって」


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