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俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?  作者: くまの香


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68話 荒地のその後

 -----(清見視点)-----



 疲れた。と言うか恐ろしかった。


 保育園から出た最終日、俺らの移動の時、大島氏のボックスを覆い尽くす魔物の数の凄い事と言ったらもう。一体一体が大きいのもあるがそれらが重なるようにボックスに被さってボックスは闇に包まれた。こんなに怖い闇があるだろうか。


 ボックスで守られているのはわかっているが、倒す術はない。

 保育園はよくあんな場所にあって今まで無事だったなと思った。俺はしばらくは押入れを出たくない。レスキューチームの人たちみたいに命をかけて周りのために、なんていう生き方は無理だ。



 はぁ、暗くて狭い押入れは落ち着く。布団だのでぎゅうぎゅうの中、裕理くんを抱えた。この暖かさが落ち着く。いつもより窮屈なのはりこちゃん達も入ってるからだろう。


 てか、いつもより多くない? りこちゃん、まなちゃん、郁未くん、あと…………誰? 裕理は腕の中。薄ぼんやり見える押入れの中の頭が多い気がする。まぁいいや。


「おーい、清みん。今日の俺たちの部屋は混雑してるな」



 上から大島氏の声が聞こえた。上も混んでるのか。だが直ぐにうとうととして寝てしまった。

 夕方、兄貴に襖を開けられるまでぐっすりと寝た。そこにはいつのもメンバー以外新人が2人増えていた。少し大きい。保育園の子だ。



 大島氏もよく眠れたようでスッキリした顔をしていた。夕飯を食べている時に大島氏は女子高生に呆れられていた。


「大島さん、寝過ぎ。これから夜だよ? もう寝られないんじゃない?」


「大丈夫だ。まだまだ眠れる」



 うん。同意見だ。

 今夜は保育園児と関係者が仏間の畳に布団で寝る。寝慣れたいつもの園の部屋にしようと言う意見もあったのだが、たくさんの大人に囲まれた方が安心するだろうと、少しの間、仏間で寝る事になった。


 俺と大島氏は押入れの部屋を許されている。他の大人は外だ。それにしてもこの世界の季節はどうなっているのだろうか。

 今のところ、雨も降らなければ暑くも寒くならない。日本で言うところの春から初夏って感じだろうか。


 もしも雨が降ったとしても現在は機体や保育園があるので、避難民は屋根のある場所への避難は可能だ。

 寒さ対策、暑さ対策は今後の課題らしい。


 俺らが熟睡をしている間、園児や関係者は久しぶりの風呂を堪能して大騒ぎだったそうだ。

 トイレは、トイレママのとこの個室の他に機内のトイレが前後で4箇所、それから保育園のトイレ大人用1、子供用3がある。残念ながら、保育園に風呂は無かったそうだ。



 押入れに入って寝る前に大島氏が下の段へと来た。



「清みん、明日さ、行きたい場所があるんだけどひとりだとつまらんから付き合ってくれん?」


「…………怖いとこ?」


「あー、まぁ。若干? ほら、スライムが出たとこなんだけど。俺が最初に転移してきた岩盤石の荒地、あそこに確認に行きたいんだよね」



 確か最初に結構な人数が居たけど、スライムが大量に来て皆が散り散りになったんだっけ。



「戻ってきてる人がいないか、見てこようかなーってさ。それと、岩盤にここの事を書いてこようと思うんだ。もちろん隊長の了承も得てる」


「そっか」


「結構日が経ってるから、もう生きてるとは思えないけどさ。まぁ一応ね」


「うん……いいよ。スライム見てみたいし。スライムなら他の魔物みたいにグロくないからいいかな」





 翌朝、朝食を仏間で摂った。仏間はお泊まり保育の部屋のような感じで賑わっていた。18人の園児に元からここに居た乳幼児も加わって食卓を囲んだ。子供達の間には保育士やママさん達が忙しそうに世話をしてまわっていた。



 食べ終わった俺は仏壇に出かける事を告げに行った。



「無事に戻れますように……なむなむ」


 裕理やりこちゃんも食事途中で俺に気がつき仏壇前にやってきてナムナムしている。それを見た他の園児も仏壇へ拝みに来て保育士さんに連れ戻されていた。



「なむなむは食べ終わった子からだぞー」


「せんせぇ終わったー」

「もうごちそさまぁ」


「こらぁ、残さずに食べなさい」



 そんな声を背に俺と大島氏は靴を履いて仏間を後にした。

 今日、ふたりで出かける事は兄貴や隊長には了承を得ている。



 大島氏にピタリとくっついて森の中を進んでいく。大島氏はレスキューチームが作成した地図を持っている。



「荒地へは、あ、俺が居た所を勝手に荒地って言ってるんだが、機体があった場所を経由しなければ案外近いんだよ。木の幹の太さが狭い範囲で混在しているんだ。そこから急激に植物が減って砂漠のような土地になる。砂漠と言っても砂だけじゃない。岩も結構ある」



 ふぅむ、よくわからない。砂漠と聞くと鳥取砂丘が思い浮かぶ。それと海岸の砂地。



「近くに海とかあったの?」


「さぁ、どうだろうなぁ。さっさと逃げ出したからな。もしかしたら俺らが逃げたのとは反対方向にあったかもしれないな」


「植物が生えないのは塩害のせいとかかもしれないし海あったかもね。海の幸とか手に入るかな。俺はした事ないけど釣り出来る人居そう。あ、釣竿が無いか」


「釣り以前に海の魔物が出そうだけどな」


「あぁ、そうだなぁ。この異世界転移って人間に優しくないよな」



 そんな話をしているとようやく『荒地』に着いた。確かに、途中から植物が減っていきついには土と石の地面に。そして地面は石と砂へと変わっていった。



「清みん、岩や石の下にはスライムが居るからうかつに触るなよ?」


「わかった。触らないし大島氏のボックスから出ない」


「あはは、あ、ほら」



 俺の臆病を笑った大島氏が指差した先の地面に、居た。スライム。

 なるほど、話に聞いたとおりだ。薄いグレーか薄茶色のデロンとした水たまり。動いてなければただの汚れた水溜りにしか見えない。



「なんか、わらび餅に似てるな。きな粉かける前のわらび餅」



 大島氏が爆笑した。何が受けたのかサッパリだ。それを避けながら大島氏が進んだ先に平らな岩が見えてきた。



「あの辺だ。俺達が転移した場所。あの岩が何か知らんが俺らは勝手に岩盤石って呼んでいたな。あの上まで行ってあそこで少し休もう」




 『岩盤石』まで到着した。結構広い石、一枚岩と言うのだろうか、それがいくつか重なるように地面から見えている。砂に埋もれている石の深さはわからない。巨大な石なのか、ただ平たい石なのか。

 そんなどうでもいい事を考えていたが、大島氏は石の上を見て回っていた。



「この上でも結構人が死んだんだ。スライムを呼び寄せたやつがいてさ。何となくこの石の上は安全だと勘違いしていたから大混乱だったな」


「……そうなんだ」


「やつら骨まで残さず食ったのか。服も血も残ってない」

 

「ふぅん……。この世界のスライムは行儀がいいんだな」


「ぷっ、清みんは面白い考えするんだよな。そこが子供らに好かれる所以だな、きっと」


「だってさ、だっていつも思うんだよ。うちの柿の木、あ、今は無いけどさ前は庭にあったんだ。その柿の実をカラスが狙うんだけどちょっと突いては他のを突くから、どれもこれもカラスに突かれた状態でさ。食うならちゃんと全部食えよ!って思ってた」


「あぁ、なるほど。清みんも橘さんも良いご両親に育てられたんだな。物を粗末にしない」


「いや、でも、あの押入れの中身は納得いかない。捨てるべき物も大量にあったぞ!」


「結構役立ってるじゃないか」


「そ、だけど、さぁ」



 爆笑している大島氏から少しだけ離れて、砂地のスライムを観察した。日本には居なかったからなぁ、スライム。

 岩盤石の端っこに行きたいと大島氏に告げると一緒に着いてきてくれた。


 大きめの石をよぉーっく観察しているとその下にスライムが居るのがわかった。

 何をしているんだろう。石を溶かしているのか?



「スライムって石溶かすって言ってたよな」


「溶かすぞ。簡単に溶かす。あれは石を食ってるんじゃなくて多分餌待ちだな。獲物が通りかかるのを待ってるんだと思う」



 そうか。蜘蛛が蜘蛛の巣張るのと似た理由か。



「大島氏のボックスはスライムも防御出来るんだよな?」


「出来るぞ。近寄ってみるか? はみ出たら食われるから気をつけろよ。清みんに何かあったら俺が橘さんや裕理に怒られるからな」


「わかった。気をつける」



 そうして大島氏にピッタリくっつき、完全防御のボックスでスライムに近づいてもらった。

 スライムは石の下から出てきてボックスの壁面へとジャンプしてくっついた。驚いて飛び退きそうになったが大島氏に腕を掴まれた。



「清みん、言ったそばからはみ出るな! 死ぬぞ?」


「あ、あ、ごめんなさい」



 びっくりした。が、スライムが見やすくなった。



「あの、中央辺りにあるのが核だな。小説だと核を壊せば倒せるけど武器が無い。石で叩こうとしたやつもあっという間に食われてたな」



 そうなんだ。俺ら人間はスライムよりも弱い存在なんだ。



「スライムはボックスで潰しても核は潰れないんだよ」


「地面が砂地だからじゃない? 砂に潜って逃げるとか……」


「それもあるが、岩盤の上でも同じだ。こいつら石だろうが岩だろうが溶かすからな」



 そう言って大島氏は壁面にスライムを付けたまま岩盤石へと戻り、壁面に付いたままのスライムを叩き落とし、移動してスライムをボックスの下へと踏んづけた。


 スライムは一瞬ペタンコになるが、確かに核の部分は潰れたり壊れたりしない。核部分の下の石を溶かしたようだ。

 スライムは大島氏のボックスの底でジッとしている。触れそうな位置にスライムの核が見える。



「触るなよ? 俺は防御があるが清みんは無いからな。触ったら指を無くすぞ?」



 触りたいなと思ったのがバレた。触らないけどさ。あ、そうだそうだ。俺は背負っていたリュックから弁当を取り出した。

 機内食から貰ってきた軽食セットだ。箱を開けてロールパンを取り出し、パンのビニール袋をあけた。



「パン食うかな」



 パンをスライムの核の真上あたりに置いてみた。


 大島氏のスキル『完全防御(箱型)』は本人にとっては完全防御である。その箱型はスキルの持ち主の大島氏にとっては大した特典はない。箱範囲からはみ出ても大島氏は完全に守られているからだ。


 では、その『箱型』は何に対しての特典なのか。恐らくだがその箱型の中に入った身内(基準は不明)が守られる。しかしその箱型は目には見えないし触れない。つまり認識が難しい。


 本人以外が箱の範囲からはみ出れば防御の恩恵は受けられない。そして1番難しいのが箱の底面だ。

 この箱型防御の底面は、大島氏が踏んでいる地面が基盤となっているようなのだ。それはスライムを潰した時に発覚したそうだ。


 つまりボックス内では大島氏より下へはみ出たら場合、そしてそこに魔物が居た場合、ジ・エンドなのだ。

 意外な盲点、いや、大島氏にとっては弱点ではないのだが。


 俺は足元のすぐ近くでペタンコ状態のスライムにパンを乗せた。

 乗せただけではまだ大島氏範囲以内なのか、スライムはパンを溶かさなかった。もしくは、パンは嫌いなのか?



「パンは食べないのか? 小麦アレルギーか?」



 そう言いながら少しだけパンを押した。大島氏の防御範囲からはみ出るように。指ははみ出さないよう気をつけた。


 ジュワっとパンが消えた。何だ、やっぱり好き嫌いでもアレルギーでもなく、大島氏の箱型防御が邪魔してたんだな。

 ランチボックスからおかずも出して、スライムに乗せた。ちょっと押すとジュワっと消える。


 ランチボックスが空になった。小説だとスライムはゴミも食べてくれるんだよな。一応聞いてみるか。



「おいお前。このゴミも消化してくれるか?」



 スライムと会話が出来るわけがない。勝手にゴミを押し付けてみた。


ジュワ


 その時俺は核に少しだけヒビがあるのに気がついた。やはり大島氏のボックスでずっと踏んづけたままだからな。重かったのかな。

 俺はヒビに向けて指を差し出す。触ったら溶かされるからちゃんと少しだけ離すのを忘れない。



「回復。回復、回復、回復……」



 俺の微々たる回復で治せるわけがないので10回くらい唱えておいた。



「ちょっ、清みん、スライムに回復なんてかけるなよ」


「あ、ごめん。この子核がひび割れてたからさ。大島氏、移動出来る? もう踏まないであげてほしいかな」


「あー、まぁ。じゃあジャンプするから俺におぶさって。清みん残してジャンプしたら大変な事になるからな」

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