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俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?  作者: くまの香


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62/112

62話 機体を持ち帰る

 -----(大島視点)-----


 昨夜の夕食と、今朝の朝食にギャレーの食事セットを出すと自衛官は大喜びしていた。

 もしかするとあちらは食糧が不足しているのだろうか?



「いえ、そんな事はありません。が、やはり機内食は夢がありますね」



 瞳を輝かせた自衛官を見ながら俺たちも同じ物を食べた。うん、言われてみるとそうかもしれない。



「そうだよねぇ。私、飛行機乗った事ないから機内食はここに来て初めて食べた!」


「紬ちゃん初めてだったんだ。私ね、夏休みにお祖父ちゃんちに行く時飛行機だよ。でもご飯が出た事ないなぁ」


「杏ちゃんのお祖父ちゃんちは飛行機で行く場所なのね。国内線は時間帯によっては食事は出ないからね」


「そうなんだ」


「あっちはどんなだろう。ちょっと楽しみだね」


「だけど、どうやって移動するんですか?」



 杏と紬は自衛隊や救助隊に会えた事をシンプルに喜んでいたが倉田女子は単純には喜べないようだった。足の悪い九条さんの避難が気になるのだろう。



「はい。一度あちらへ戻り救助の体勢の相談をつめてまいります。が、大島氏にはご面倒でも何度か往復に付き合っていただく事になるかなぁ。この辺の森はかなり危険ですよね」


「そうなの? そっちはそうでもないの?」


「大丈夫ですよ。あっちは避難所の周りも比較的若い森ですから。少し奥へ行くと昆虫はいますがこちらが何もしなければ襲ってはきません」


「そうなんだ。良かったぁ」


「良かったねぇ」


「毛長蝙蝠とかも居ないんだ。あれ、エグかったよなぁ」


「けながコウモリですか? この近くで襲ってきたアレですか?」


「いや。アレは足長すぎ毛蟹蜘蛛。カニのようなクモのようなよくわからんかった」


「そんなん出たの! 大島さん!」


「そうなんだよ。ここらでは初見かもな」


「毛長蝙蝠を殺りすぎたから生態系が変わったかな。毛長領域にカニが進出してきたのかも」


「毛長蝙蝠……カニクモ……。色々いるんですね……」


「あ、あとね。口からミミズが出てるやつもいた」



 自衛官の、おっさんと言うにはそこまで歳いってないか、俺より少し上くらいか?その自衛官の兄ちゃんの顔色が少しだけ青くなっている気がした。

 まぁね、俺も初めて見た時は腰が引けて膝ガクブルだったからな。



「でも、お兄さんのボックスがあれば無敵なのー」



 紬のひと言で場が明るくなった。



 朝食が済むと俺はまた自衛官と一緒にあちらへと向かう事になった。

 最近は午後に森の探索をしていたとはいえ、かなりハードだぞ。アスリート並みのウォーキングじゃないか?スマホで昨日の歩数を確認した。ちょっと気が遠くなった。



「大丈夫です。最短を進みますから、あ、勿論、安全優先ですが」



 そう言って地図見せてきた。いつの間にかここまでの道も書き込まれている。

 と言うか、直線に近い線が引かれていた。



「大島さんのスキルならここまでは直進出来ると考えました」



 物凄いスマイルで言われた。うん、まぁ、出来るけどね。

 そうか、探索ではないからクネクネ歩かなくていいのか。それだとだいぶ近くなるな。


 それでもここからだと徒歩3時間ってとこか。意外と近くに居たんだな。


 今日は向こうに泊まりになるかも知れない事を伝えた。

 本当なら何度も往復をしていっきに救助を終わらせたいだろうが、俺の体力がそれを許さないだろう。


 そうしてここを出発した。




 自衛官が言っていた最短路のおかげか、3時間かからずに到着した。

 何度見ても不思議な建物……仏間。


 とりあえず中へあがらせてもらった。畳だ。なんか懐かしい。と言っても俺が住んでたワンルームは洋室だったのだ。畳なんて何年ぶりだろうか。実家のばあちゃんが生きてた時は畳部屋だった気がする。俺はあまり入らなかったがな。


 あー……、ゴロンと横になって寝てぇ。眠いわけじゃないけど、ゴロゴロしたい。畳恐ろしいな。

 が、直ぐに男どもが集まって救助作戦の話になった。


 救助はやはり要に俺が必要らしい。俺のスキル『完全防御』が必要だ。俺らの機体があるあたりの森はかなり危険なのだそうだ。

 そこを抜けるのに俺が必要になる。


 しかし俺の防御スペースは俺を中心にせいぜい4〜5人が限度だ。何しろはみ出たら即、死だからな。



「そこで大島さんには大変なご苦労をおかけしますが、3回に分けての救助、つまり往復をお願いする事になります」



 3回かぁ。あの距離を往復3回。



「安全と体力を考慮して、1日1回の往復。3日かけての救助にしたいと考えています。急病人や怪我人もいらっしゃらないようですし、食糧問題もありませんので急いで事故を起こすよりも確実にいきましょう」



 おお、なるほど。ありがたい。俺は一般人だからな。ここに居る救助のプロの皆さんのように鍛えてないからな。

 さらに救助作戦の詳細を説明された。


 俺を中心に必ず救助メンバーがふたりついてくれるそうだ。ありがたい。何か起こった時のフォローが速そうだ。となると一回で運べるのは3名程度か。

 それに九条さんはどうやって運ぶんだろうか?自衛官の兄ちゃんは背負うとか言ってたな。


 なんと、昨日、俺らが去った後に救助用の背負子を作成していたそうだ。それも2個。

 なるほど、それなら九条旦那運べるな。…………運べるのか?5分や10分じゃないぞ?2〜3時間の森歩きだぞ?



「大丈夫ですよ。普段からそういう訓練はしています。重い荷を背負い山の中を数日歩くなんて訓練もありましたから」



 自衛官の兄ちゃんは眩しい笑顔で言い切った。が、他の人はどうなんだ?確か消防士とか救急とか言ってなかったか?

 誰がどの職かハッキリ聞いてなかったのでそこに並ぶ男性らをちらした。皆、やる気に満ちた笑顔だった。


 俺の体力さえあれば、きっと今日中にでも3往復したいんだろうな。すんません、俺にはちょっと……。

 1日1往復で、お願いします。


 あ、少し休んだら今日中にあっち戻るのね。はい。第一陣の救助は明日開始ですね。はい。かしこまりました。

 とりあえず昼までは休憩して良いと言われて、俺は念願(?)の畳ごろんをした。


 睡魔に襲われて抵抗をやめようとした時に、体にふわっと何かがかけられた。

 タオルケット?

 かけたのは昨日森で出会った花笠の青年……俺と同じくらいの年齢だろうか、気の弱そうな男だった。


 なんとなく、気が合いそう。そう思いながら意識を手放した。



 揺さぶられて起こされた。目を開けるより先に鼻が目覚めた。味噌汁の匂い?

 そう言えばこっちの食糧事情も聞いてないが、キッチンの建物(?)があったので味噌汁が作れたのか。……材料はどうしたとかはどうでもいい。


 昼食が用意されていた。温かい味噌汁とご飯とおかず。おかずは缶詰っぽいな。

 でも味噌汁とご飯と畳で幸せを感じるなんて、俺ってけっこう日本人だったんだな。


 俺が食べている横、仏間の外では救助チームがやる気満々で準備運動をしていた。まじに。


 それから背負子を背負った2人と出発した。昨日付けていた危険の目印、ここからは俺に密着して移動してもらう。

 なるほどプロの人が選んだ道だ。横3人並んでも歩きやすい道だ。そして最短でもあったので2時間ほどで機体へと到着した。


 今夜は機内で休み、明日から救助開始だ。今日初めてここに来た消防士のはしゃぎ様は凄かった。途中の昆虫や獣が出た時より、機内食が出た時の方が反応が大きかった。



「うわっ、デザート付きですか。え? コーヒーのおかわりもある? いただきます! ぜひ!お願いします! パンもまだある? 凄いですねぇ。スキル飛行機!」



 スキル飛行機…………。ちょっと違うが、まぁどうでもいいか。俺のスキルじゃないしな。




 そして翌日から始まった救助作戦。


 まずは第一陣。俺の両脇に背負子を背負った救助ふたり。ひとりの背負子には九条旦那が、もうひとりの背負子には九条妻が乗った。

 俺の真後ろを倉田女子が歩く。



「私も自分で歩きますから」



 九条奥さんが言い張ったが、ずっと機内にいた九条奥さんは体力的にもイマイチ不安と判断された。



「我々が背負って移動した方が速いですから。大丈夫です。安全地帯では歩いていただくと思います。危険地帯はなるべく早くに抜けますので」


「え、でも、その、私重いですよ」



 九条奥さんは小さいのでそんなに重くないんじゃないか?倉田女子が165センチの60キロくらいか?としたら、九条奥さんは145センチの45キロ………ゲホっ!

 倉田女子に脇腹をどつかれた。俺、何も言ってないよな?



「何となく考えてる事がわかったのよ。チロチロ九条さんと私を見比べてたもん!」



 あっという間に背負子に乗せられて何箇所かしっかりと紐で固定された。手作り背負子だし材料もあるもので作ったって感じだった。

 だが尻や足が辛くないような作りになっていたし、手で握るところもあった。凄いな、プロさん。確かにただ背負うよりお互いに楽かも知れない。


 俺の後ろに倉田女子が立つ。ドド達に砂をぶつけてもらい、全員がボックスに収まっているかを確認した。


 そして、森へ。


 流石にプロ救助人だ。歩みもしっかりしている。スピードが落ちる事なく森を突き進む。

 途中でカニクモが襲って来た。驚いた九条夫妻が声を上げるが両脇のプロはものともしない。一瞬止まりかかった俺の腕を引き、足を止めない


 ボックスに張り付いたカニクモ同士が勝手に戦っている。



「九条さん、奥さん、下を向いとってください。上は見ないように」


「大島さんの防御は完璧ですねっ! 大丈夫です。カニどもは勝手に動いてるだけです。大阪のかに道楽とでも思っておってください」



 なるほど。俺のスキルボックスがかに道楽に……。

 しかし、このカニクモを付けたまま仏間の避難所へは行けないよな、どうする?途中で止まって倒すか。

 と、考えていたが、上からぼたんっと何かが降ってきた。


 あ、スライムか。最近見なかったな。こいつ悪食だからカニもクモも食うはず。と思う間も無く食い終わってまた木に戻っていった。


 割と安全な地域に入り、一旦休憩を取った。背負子を降ろしてストレッチだ。乗っていた九条奥さんも一緒に身体を伸ばす。

 九条旦那も座ったまま伸びをしている。


 15分ほどの休憩で再び出発だ。ここから森はどんどんと若くなっていく。木が細く小さく。そして木のない場所も出てくる。

 とは言え俺らが初日に居た荒地とは違う。山の麓のような背の低い植物も多い。



 そうして仏間のある避難所へと到着した。


 仏間は畳ではあるが、今日救助してくる九条さんの旦那が足が悪いと話したせいか、畳の部屋に段ボールで簡易ベッドが作ってあった。それに椅子もある。

 何気ない気遣いが出来る人がいるのか。良い避難所だな。


 俺はこれから機体へと引き返す。明日の第二陣のためだ。同行する救助メンバーは自衛官はそのままだが、消防士が別の人にチェンジした。

 俺は昼食までまた畳で昼寝をしようかと思ったが、今日は風呂に案内された。


 普通の、個人宅の風呂だ。

 不思議な光景。外から見るとコンクリートでボトリと地面に置かれた風呂場。元はマンションの一室の風呂場だったそうだ。


 あの日のあの謎現象、知れば知るほど謎が深まる。だが俺は今、バスタブに沈みここ何週間かの疲れを癒しているのだ。謎などどうでもいい。

 ふはぁ。いい湯だ。あと2往復。頑張れ俺。

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