59話 ひとり探索
それからは、毎日定期的に外での経験値稼ぎをするようにした。
機内でスクワットをして体力増強図る紬と共に、桜井さんと九条さん妻もスクワットやストレッチをした。九条さん旦那も出来る範囲でのストレッチだ。
それから紬と一緒に外の散歩にも連れ出した。旦那さんは居残りだ。森の怖さを知っておいた方がいいと思ったからだ。
救助は来ない。
わかっている。ここが謎の異世界なら、地球から救助が来るとは思えないからだ。
けれど心の何処かでまだほんの少し、誰かが助けに来てくれるのではと思う気持ちが残っている。
誰かが……誰が?
何処から?
小学生コンビが泣き言を言わずに頑張っているのに、大人の俺がこんなんじゃダメだと思いつつも、誰かに頼りたくなってしまう。
だって俺だって、だたのサラリーマンだったんだぞ?
最近の俺のルーティンは、午前中は皆の経験値稼ぎに付き合い、午後はひとりで森を探索している。
「先にここから出た人らに会えるかもしれない。もしくはどこかに救助がいるかもしれないからな」
俺は森の探索を続けながら、木に印をつけている。『SOS、10人』と、ナイフで木に刻んで……、刻もうとしたが無理だった。
ここらの木はかなり硬いのだ。それでノートの切れ端を貼り付ける事にした。紙だと雨でも降れば流されてしまうのだが。
探索をしながら色々と考える。
俺のボックスは6人でもぎゅうぎゅうだった。現在10人。完全にキャパオーバーだよな。
それにひとりは車椅子がないと移動が難しい。仮に車椅子があったとして、俺を中心に9人。赤ん坊は車椅子の九条さんが抱く。かなり密着すれば行けないことはないかもしれない。
問題は車椅子を押して森の中を進めるか、だ。街中の綺麗な道路ではないのだ。少しでも地面がぬかるんでいたり穴や石があったら難しい。
俺は森を探索しながら、足場が良さそうで広めの道をメモっていく。木に印も。ただ、どちら行けばいいのか、何があるのか、何も無いのか、わからない。
結局今のところは桜井さんのスキルの機内の中が1番安全なのだ。
一度、九条旦那が突然言い出した事があった。
「私を置いて行ってくれ」
「そんなっ」
「妻だけなら君らについていける。小太郎くんも抱いていけば良い」
「あなたっ」
「ダメぇ、おいてかないもん」
奥さんは首を横に振る。杏と紬もおっさんに両側からしがみついていた。
「それは、却下ですね。そもそも俺のスキルでは狭すぎる。この狂気の森で少しでもはみ出たらアウトだ。それにそもそも行き先があるわけじゃない。結局森を彷徨うだけなら、この天国のような機内に居た方がいい」
「俺も賛成ー。ここでレベル上げしたい」
「うん。(微)の次まで何としても上げたいです。ここを出て行ったらあっという間に食べるのに困ってレベル上げどころじゃなくなる」
「ですね。ここの食料が減って出ていかざるをえないならともかく、今のところ俺らの食い分はあるみたいだし、居させてもらいたいですね」
皆同じ気持ちのようだ。良かった。
ただ、何らかの先は考えておきたい。森の中の検索は続ける。食料的に余裕がある。もしもまだ生きている乗客が居るなら連れ戻すのもアリか。
出来れば新しい情報も掴みたい。わからない事だらけだからな。
午後の探索は、夕方には戻れるように時間を気にして進めている。行って戻れる距離だから進める距離も限られている。
今日は今まで行ってない方角へ進んだ。
気のせいか森が小さくなっている感じがした。小さく……というのは変か、木の幹が細くなっている。若い森っぽい。
心なしか攻撃も減ってきた? 獣が出なくなり虫のサイズが小さくなってきただけでなく、襲ってこなくなった。幼い虫なのだろうか? と言っても地球に比べて十分大きいのだが。
スマホを見て時間を確認する。そろそろ引き返すか。
立ち止まっていると樹々の間でガサガサと動く華やかなモノが目に入った。
カラフルな花? 今まで見なかったな。
ガサリ
花と思ったそれは、頭に花の付いた何かを乗せた、男だった。
人?
え…………着物?
和服のような着物を来た……マタギ?????
互いに目が合った。
「あ、どうも」
「こん、にちは?」
やはり、日本語だ。しかし、いつの時代の人だ?
「どした? おっ、救助者発見か」
「なになに、新しい救助者?」
マタギの後ろから、和服……の男が数人出てきた。
えっ、何。
この異世界って『和の国』っぽい世界観なの?
ファンタジー世界ではなくて、パラレルニッポンへ転移したのか。




