56話 機内の安全性
俺は機内へと戻った。皆の心配そうな目に迎えられた。
「大島さん、大丈夫ですか?」
「お兄さん、食べられたかと思ったぁ」
「うん、怖かったね。あんなおっきな……鳥?がいっぱい、お兄さんにくっついて」
「ほら、俺のスキル、ボックスだから平気だぞ? 外から見たらくっついて見えたかも知れないが、ちゃんと空間はあったからな」
「おっさんにハゲタカが群がってたぞ。最後何羽かが逃げたな」
「何を調べにいかれたのですか?」
九条さん(足の悪い旦那の方)に聞かれた。そうだった。幾つかわかった。
「スキルを調べたかったんですよ」
「お兄さんのスキル? ボックスの?」
「まぁ、それもあるけど、桜井さんのスキル『空間(機内)』です」
俺は思ってた事、今見てきた事を話した。
桜井さんの空間スキルはかなりのチートだ。水や食料が復活すると言う機能がある。
それはそれで凄い機能だと思うが、外の獣が入ってこない事からもしかすると『空間』として何某の機能もあるのでは思った。
俺の『完全防御』と同じように、『空間』にも防御機能が備わっているのではないか。でないと、こんな場所に何日も無事にいられるわけがない。
何しろハッチは空いているし、ギャレーの先はカーテンのみなのだ。幾らでも侵入し放題のはずだ。
機体の屋根に登りたかったのは、さっきの獣が天井部分をガリガリと削った跡がどうなっているのか見たかったのだ。
登れなくて断念したが、その後に面白い事がわかった。
機体の上から滑り降りてきた鳥獣だが、滑っている時も爪はたてていた。しかし、機体に爪跡はつかなかったんだ。
そしてウイング……翼部分を移動した時、爪はしっかりと翼の金属を破り突き刺さっていた。
そもそも、この森に落ちた……置いてある状態の機体だが、前後は綺麗に斬れて無くなっている。まるでケーキでも切ったようにだ。
しかしその胴体部分に付いたウイングは大木が邪魔したのか、折れて千切れかけていた。
「それって?」
「うん。恐らくだが、この機体の胴体部分はひとつの空間として守られている、と思う。翼はオマケと言うか空間じゃないんだろうな」
俺は『空間』と言うスキルは防御スキルの一種なのかもしれないと思った。
「それってさ、ゲームで言うとセーフティゾーンみたいなもんかな」
「何よ、ドド。そのセーフゾーンって」
「だいたいのゲームにあるよな、セーフティゾーンは」
「だから何よ」
「システムでそのゾーンは敵に襲われないってなってるんだよ。ゲームだと街とかがそうだよな」
「そうだな。多分だが空間スキルは、その空間、桜井さんの場合は『機内』とあるだろ? だからこの機内はセーフティゾーンかも知れない」
「やったぁ! つまり安全って事だよね!」
「ご飯もあるしお菓子もあるし最高だね! コタ君ママ凄い!」
「こたくん?」
桜井さんの子はどうやら光太郎と言う名前らしい。杏達はコタ君と呼んでいた。
それと俺はもうひとつの疑念。俺の完全防御スキルのある検証を桜井さんの機体を使って実験させてもらったのだ。(こっそりと)
と言うのも俺のスキル『完全防御(箱型)』だが、目には見えないが電話ボックスのような空間が展開されている。
敵(獣)に襲われても奴らはこのボックス空間には入って来れない。
森を移動している時に気がついたのだが、木が繁る狭い空間を通った時に、小さく細い木や枝は箱型空間に押しやられていた。
流石にデカい大木を倒した事はないが、やってないだけで試したらいけそうな気もする。
つまり、そうだな、電話ボックスがそこらの(小さい)物を薙ぎ倒して移動しているイメージだろうか。
俺はここで機体を発見した時、自分は入れないかもしれないと思った。
機体のハッチと俺のボックスのサイズだと微妙に俺の方がデカい気がしたからだ。
だが、実際にスライドを登りハッチをくぐるとあっさりと中へ入る事が出来た。
そして機内の狭い通路も座席を薙ぎ倒す事なく進む事が出来た。
空間スキル同士はお互い干渉し合う事はないのだろうか。
それは良かったと思う反面、スキルを持った人間なら誰でも入れる事になってしまう。悪人や犯罪者も?
その辺のブレーキ機能はないのだろうか?そう言えばドド達や杏達も普通に俺のボックスに入ってきたな。
「それはさ、おっさんが無意識に俺たちの受け入れを決めたって事じゃね?」
「でも、桜井さんは? 私たちがここに入ってきた時は寝ていたわよ。私たちを受け入れてないわよね?」
「うむ。とすると人間なら誰でも入れてしまうな。まぁ、スキル同士がぶつからないという事はわかった。それと、機体のウィングに近寄った時だが、ウィングの端が潰れた。俺のボックスが翼の金属を押し潰した。そこからも桜井さんの空間はこの胴体部分だけである事がハッキリした」
俺たちは少なくともこの機内では安全でいられる事がわかった。
救助が来るまで、救助が来るとは思えないが、しばらくはここでやっていける。




