55話 外にいる敵
食事と睡眠をとれたからか杏達やドド達はずいぶんとリラックス出来ているよう見えた。
機内の座席にあった雑誌を見たり機内を散策したりしていた。
「外には出るなよ」
「わぁってる」
「アニメ観れないんだ……」
杏達女子グループは座席の背に付いているタブレットのような画面を操作している。手には番組表であろう紙をもっていた。
薄暗い機内からも解る通り、電気は止まっているらしい。トイレやギャレーの水は出るのに電気は使えないという謎。
いや、水が出るだけでも充分な謎だ。しかも食料が復活すると言う大盤振る舞い、本当にチートスキルだ。
天井から物音がしたので、近くの窓のシェードを上げて外を覗いた。
実は、外から機内を覗き込まれないように機内の窓のシェードをできる限り下ろしたのだ。機内は照明が点かないので暗くなってしまうのだが、どのみち森も薄暗い。懐中電灯を何箇所かに設置して灯りをとっている。
機内の窓から見える森の木に羽の生えた獣が木に止まっているのが見えた。鳥のような獣のような中途半端な生物だ。それが何頭か木の枝にとまってこちらを伺っている。
おそらくソレが機体の屋根の上にもいるのだろう。カリカリと音がする。
さっきまで機内を歩き回っていたドド達が立ち止まって天井を見上げている。
ふむ。ちょっと外に出てみるか。俺のスキルなら危ない事はないだろう。
俺は皆に断ってからひとりで外へと出た。
と言っても、脱出用のスライドで地面へと降りたのではない。飛行機の上へ登りたかったので、開いたハッチの扉から翼へ降りられないかと思ったのだ。
翼へ降りるのは無理だった。遠い、遠すぎる。しかたないのでハッチの扉へ足をかけて直接上へとよじ登ろうとした。しかし、よじ登れなかった。
カーブしているうえに掴むところは無いしで飛行機の上に登るのは無理と諦めた。
スライドで地面へと降りた。最初からそうすればよかった。
空間スキルの安全性を確かめたかったんだ。飛行機の上からカリカリ音がするって事は飛行機に爪か嘴で攻撃を加えているのだろう。
その状態がどうなっているのか、見て確かめたかった。
俺が機内から出て地面に降りた事で、飛行機の上に居た獣がこちらへと移動してきた。
さっき俺が滑ったようにカーブした機体を爪が擦る音をさせて飛行機の翼の上まで降りてきた。
大きいな。
いくら完全防御とは言えやはり緊張はする。
ソイツは鋭い爪を翼の金属にブッ刺しながら翼の端まで移動してきてそこから俺に向かい飛びかかってきた。
飛行機の翼部分と同じように爪で刺すつもりだったのだろう。が、爪はボッキリと折れた。同時に突っ込んだ嘴も折れてぶら下がった。
うわっ、血肉が折れた嘴にくっついてぶら下がっている。
ギィエエエエエエッ
その鳥獣があげた雄叫びで森の木にとまっていたヤツらも一斉に俺に向かってきた。
俺は腰をしっかりと据えて弾き飛ばされないようにする。
ぶつかる衝撃は……そこまで感じない。あの大きさの獣にぶつかられたら車に跳ねられるくらいの衝撃があるかと思ったが、実際にはそうでもないのだ。
森の中で襲われた時もそうだった。実は弾き飛ばされた事は一度もなかった。
カツンカツンと、何かがぶつかったか?くらいの衝撃だ。
目に映る恐怖はトラックとの衝突くらいのインパクトがあるが、実際の物理的な衝撃は三輪車が軽く当たった程度だ。
しかし相手側はかなりの衝撃を受けたようだ。自分が相手に与えようとした衝撃を自分が受けている感じだろう。ゲームで言うところの『反射』機能でも付いているのだろうか。
見ると、爪で攻撃しようとした獣は足が折れて地面に落ちている。嘴で攻撃を試みたやつは、嘴どころか首が折れて死んでいた。
あ、俺の経験値が増えた。ありがとね。
俺は知りたい情報は取れたので機内へ戻る事にした。
……ところで、俺にはアイテムボックスとかインベントリとか無限収納とかは無いので、倒した獣は持ち帰れないのだ。
まぁ、地面に転がった肉塊は、持ち帰っても食べたいとは思えない絵面だ。




