52話 スキルの消滅
何とか無事に戻れた。
兄貴達はホッとしていた。俺ははぁはぁしていた。裕理くんはキャッキャしていた。待って、裕理くん、叔父さん今疲れて遊べないから。
隊長と山根さんはまたフェリーに引き返していた。大丈夫なのか?日が暮れるまでに着けるのか?
場所がわかっているので大丈夫だそうだ。ママさん達から弁当を渡されていた。
ごめんなさい、俺はもう無理。一緒に行くメリットよりデメリットのが多いからな。完全な足引っ張りだった。
結局、自分のやる気を試したかったけど、命がかかってる場では迷惑なだけだよな。俺はまず自分の体を鍛えるのと、回復の訓練だな。それと仏壇に手を合わせて経験値を稼ぐ。
あ、今日はまだ朝の一回しか手を合わせていない。最低でも朝昼晩の3回は合わせないと。
仏間の畳の上を這って仏壇へと向かう。隣で裕理くんもハイハイをする。俺より先に仏壇に到着していた。
何とか身体を起こした。裕理くんが俺の膝にきた。
「裕理くん、のんのんするぞ?」
俺はチン棒で鐘をチーンと鳴らしてナムナムと拝んだ。裕理くんも小さい手を合わせてムニャムニャ言ってる。
はぁ、今日はここでこのまま寝たい。
そう思っていたら兄貴が布団を持って来てくれた。とりあえず横になった。
声をかけられて起きると夕飯も持って来てくれた。
「兄貴、すまん。あんがと」
「おう。今日はご苦労だったな。どうだ?うちの敷地は広がったか?」
「うん。広がった。…………でも、うちの敷地も結構危険だった」
「そっか。うん。それがわかっただけでも手柄だな」
兄貴は相変わらず弟に甘いな。お袋も親父も甘かったな。
1番甘かったのが人生を舐めてた俺だ。異世界に来てそれがわかった。明日から頑張るから今日は甘えさせて。
おやすみ。
目が覚めたら昼近かった。
驚いた事に、フェリーにいた人達も皆戻って来ていた。今朝、あそこをたってここへ向かってきたそうだ。
仏間には知らない顔の人達が居た。
地図に印はつけたので場所はハッキリしているフェリーやバス、車などは、今は持ってこない事に決まったそうだ。俺が寝ている間に話し合いをしたらしい。
「置き場がなぁ」
「そうなのよ。今取ってきてもここはもういっぱいでしょ?とりあえず物体より人の救助を優先って事になったのよ」
なるほど、確かにそうだな。
「それに、車の持ち主はわからなかったの」
「あの親子は?」
「あの人達はバスに乗ってたって。スキルも確認してもらったわ。空間だった」
そうなんだ。バスの運転手でなく乗客でも空間スキルは取れたんだ。あ、じゃあ他の客も?
「空間スキル持ちはその親子だけね。物理攻撃がひとり居たわ」
「森を逃れまわって何人か助けていた人がいたの」
「自衛隊関係?」
「普通の建設業のおじさん。清見くんがフェリーに辿り着いた時にそこに居た人たちって皆、その人に助けられたそうよ」
凄いなぁ。そんな人もいるんだ。
「バスや車はもうエンジンもかからないし今更取ってこなくてもいいけどフェリーの客室は欲しいわよねぇ。自販機だけでなくトイレもあったんですって」
そうだったんだ。すぐ戻ったから気が付かなかった。
しばらくはレンジャーチームの森捜索、残った者が身体を鍛えたりなんだりとした日が続いた。
瀕死の人を何度かレンジャーチームが救助してきた。
仏間は女性や高齢者が優先で使った。男性は仏間前の庭で過ごしている。
そんなある日、バスママのスキルが消えた。
その2日後、フェリーママのスキルが消えた。




