48話 稼げ、経験値
俺のボックス上部に張り付いていたムカデもどきをホバリングしながら捕食しているイボ蝙蝠。
「倉田! 杏と紬をしっかり寄せておけ」
俺の両肘に抱きついているドドとクサには改めて言わなくてもふたりはぎゅうぎゅうとくっついてきた。
後ろは見えないので常に注意は必要だ。女子3人を置き去りにしたら大変だからな。
「少しずつ左へ動くけど、歩けるか?」
杏の泣き声が聞こえていたので倉田に確認をした。
「待って、待って大島さん。杏ちゃんがガクガクしてて上手く歩けないかも、です」
「わかった。じゃあここで一旦止まる。鳥が虫を食べ終わったら声をかけるから下を向いとけ」
イボ蝙蝠とも巨大ムカデとも言わない。あえて鳥だの虫だのと言う言い方をした。
「大丈夫だ。ただの虫と鳥だ。ちょっ大きいけど鳥が虫を食べるのは普通だからな」
イボ蝙蝠の攻撃(食事)が終わるまでジッと待つ。終わりそうで終わらないのは、この位置、上からボタボタと食料が落ちてくるんだよ。
だから出来れば移動したかった。
まぁ、立ったままだが休憩と思えばいいか。
時々、イボ蝙蝠がボックスにぶつかる。上を見るとボックスの上にはムカデがてんこ盛り。
あぁ……見ちゃいけないやつだ。気持ち悪いにも程がある。
これ、ボックス全体を虫に包み込まれたらやばいな。見えなくなる。進めないぞ。
そうだ。
「ドド、ちょっと右腕を離してくれ。捕まるのは腰で頼む」
右側から俺の腕を掴んでいたドドに断り、右腕をフリーにした。
ちょうど右上からボックスを這うようにムカデモドキが降りてきたのでそこへ向かって右腕を突き出した。
俺の完全防御(箱型)は、スキルの持ち主である俺は箱からはみ出ても大丈夫だ。
見えないカバーに包まれた感じで敵の攻撃を弾く。
なので、思い切ってムカデモドキを殴った。俺には攻撃スキルはないので殴ってもムカデモドキは死なない。ダメージも受けていない。だた、下へと落ちた。
ボックスの高さは2メートルほどだ。腕を真上に上げると拳が突き出る感じだ。
俺は天井部分を端からドンドンと突き上げた。ムカデモドキは地面へと落ちていく。
防御で守られているせいか、素手で触った感じもしない。それでなきゃムカデなんて殴れないからな。
俺のボックスの上空を旋回しながらムカデモドキを捕食していたイボ蝙蝠を見て思ったんだ。
食べにくそうだな、と。
なので、下に落としてやったぞ。ほら、食え。
イボ蝙蝠は地面へと降りてきてムカデモドキをムシャムシャと食っていた。
飛んでいた時は触覚を使っていたが、今はもう地面へと顔を突っ込んで食べまくっていた。
ふぅ。
ため息を吐いた時、面前にスキルが一瞬表示された。
『完全防御(箱型1.0000003)』
ん?経験値が上がった?
どう言う事だろうか。俺が倒さなくてもいいのか?ムカデを下に落としただけだぞ?
落とした瞬間ではなく、落としたムカデが食べられてから経験値が入ったって事か?
どうもこの世界でのシステムがよくわからないな。
ゲームでは、敵を倒して経験値を取得なんだが、防御系スキルは防御をする事で経験値を取得出来るのだろうか?
いや、防御をするだけではダメか。落としただけでは経験値は入らなかった。
俺が防御した敵を誰かが倒したら、入る?
んー…………、謎だな。蝙蝠とはPTを組んでいるわけではないし味方でもない。
けど、俺が防御した敵を誰でもいいから倒すと俺に経験値が入るのか?
ドド達に確認をとった。
「ドド、クサ、倉田さん。俺は今経験値が入ったんだが、お前らも入ったか?」
「えっ、何も……」
「うん。何も出てこなかった」
「私もです」
今考えた事を話し、ドドにもムカデを下に落としてもらう。ただしドドはボックスをはみ出るとムカデに腕を食われる可能性があるので、前に拾ってしまって置いた拳大の石を渡した。
それをムカデに投げてもらった。
下に落ちたムカデが蝙蝠に食べられるのを待った。
「何も起こりません」
「そうか……」
ドド達のスキルに変化は起きなかった。攻撃スキルはやはり攻撃を与えて倒さないと経験値が貰えないのかも知れない。
しばらくして蝙蝠は腹が満たされたのか飛んでいってしまった。しかしムカデもそれなりに減ったので俺たちも移動を開始した。
さっき進もうと思っていた左方面へと足を進めた。




