47話 その頃荒地では
時は遡る。移転2日目。荒地から逃げ出した人達。
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俺を中心に高校生トリオと小学生コンビの5人が密着したまま森の中を移動する。
俺のスキル『完全防御(箱型)』は電話ボックスのような空間が防御で守られている。
その空間内に居ればとりあえず謎生物の攻撃から身を守る事が可能だった。しかし目には見えないのではみ出ないように常にくっついている必要があり、移動には苦労する。
「はみ出るなよ」
両脇に高校生男子、背後に女子高生とその両脇に小学生だ。
…………何の因果で男と両腕を組まなければならないんだよ、しかもこの歳になって。
まぁ、そのくらい密着していないとはみ出てしまうので仕方がない。
本当なら知らない森を歩き回るのはNG行為だ。最初にいた荒地は周りに何もなくて遠くまで見通せて良かった。だが、俺らと同じように転移してきた人らで大混乱になってしまった。
あそこは危なくて戻れない。落ち着いたらあるいは、とは思っている。
亀のような進みではあるが、森に入った理由は飲み水、食べ物を探すためだ。
植物が生えていると言う事は雨も降るだろうし川があるかもしれない。それに食べられそうな物も見つけたい。空腹で動けなくなる前に何かを見つけなくては。
それと救助してくれる人に出会いたい。子供5人をいつまでも連れて歩けない。出来れば大人、それも自立していてパニックにならない人が好ましい。
小学生コンビの体調を気にしながら進む。岩盤石の荒地で人が襲われるのを間近で見てしまったせいで、皆口数が減った。それでなくとも子供らは家に帰りたい、親に会いたいと思い始めている事だろう。
俺にはどうにも出来ない。とにかく安全が確保出来そうな場所まで連れて行くのみだ。
遠くから悲鳴のようなものが聞こえた。俺にしがみつく皆の手に力が入る。
右へ進むのはやめよう。
「あっち方面へ行くぞ。はみ出るなよ」
返事はないが頷いているのが目の端に映った。
木の幹が太くなってくるとそれを避けるようにして進む。根拠があるわけではない。ただ樹々が太い……つまり樹齢が長い木が生えていると言う事は人もあまり踏み込まない森と言う事だ。
樹齢が若い、細い幹の木が生えているのはその辺りを植林などで人が踏み込んでいる可能性があるからだ。
つまり、人のいる可能性が高い。街があるかも知れない。
なので、なるべく細い木が繁っている方向へ進んでいるつもりだが、日本に比べると巨木が多い気がする。
巨木の足元を移動しているとまるで自分達が小さなアリになった気がする。
出来るだけ早くこの一帯を抜けた方がいいかも知れない。
ほら……。
「上を見るなよ」
俺が忠告したのに、皆はその言葉に釣られて逆に上を見てしまったようだ。
「何あれぇ」
「キモキモキモ」
うーん、サイズ感がバグってはいるが、一応、虫……だよな?何虫かは知らない。毛が生えて居ないから昆虫っぽい。足が多いな。
ギュっと密集して下を向いて進んでいると、スキルのボックスの上部にボタっと何かが落ちてきた音がした。
ボタっとね。
見上げるとそこには虫の裏側!ギモギモギモイィィ!これは俺も無理。
「動くな! はみ出るな! 入ってこれないはずだ」
ボタ、ボタボタボタ
ぎょえええええ、マジ無理。
俺の、俺のボックスに虫が幾つもひっついているぞ!
きぃぃぃぃぃっ!
金切り声のような音が遠くから近づいてきて思わず顔を上げると、低空飛行でこちらに飛んでくる何かがいた!
そいつに飛ばされないように足を踏ん張った。
鳥……とは言いたくない、羽毛はなくイボイボが身体中にある蝙蝠のようなの生物が俺のボックスの上空を回りながら降りてきて、足の多い長さ30センチのムカデっぽい昆虫を啄んでいた。
啄んで……なんて可愛い言い方をしたが、ミミズのような触手を口から出してぬちゃぬちゃとムカデを食べていた。
全部食べてさっさと帰ってくれぇい!




