45話 仏間の押入れ
5日目の朝。
昨夜キッチンで休んだ男3人は早朝に起き出した。ママさん達ももう動き出した。
山根さんが朝メシ前に少し走ってくると出ていったのを見送っていると仏間の障子扉が開いて男性が出てきた。
起きてきたのは自衛官だった。
「まだ寝ていても大丈夫ですよ」
「おはようございます。昨日は本当に助かりました。ありがとうございます。ところで……ここは何なのでしょうか?」
自衛官の男性は自分が出てきた仏間をジロジロと見回していた。
「あー……」
兄貴が答えあぐねている。
「あ、いえ、昨日お聞きした家ごとこの世界に来た話。話半分に聞いていましたが実際に目にすると驚きますね。本当に、その、仏間だけなのですね」
うん、2階が無いどころか屋根も無いからな。
「とりあえず、トイレと風呂に案内しますね。落ち着いたら皆さん揃って話をしましょう」
兄貴はそう言ってその人を仏間の裏へと案内していった。俺はそこに残ったが、他の人が起きてきたら嫌だなぁ、どう対応しようかと逃げたくなった。
そうだ、とりあえず外に出した箱の中身を検証しよう。
毎朝復活する防災用の水と食料。今までは押入れの中で復活していた。
何故復活するかは置いておく。何しろここは異世界だからな。地球人の俺が知る由もない。
では、どんな法則で復活するか、それが大事だ。
例えば、2リットルのミネラルウォーターのペットボトル。押入れに6本入りの段ボールがあった。
一本使ったらそこに一本が増えるわけではなかった。
部屋に出しっぱなしの飲みかけのボトルが新品になってた。押入れのペットボトルの段ボールは5本しか入っていなかった。
押入れに関わらず仏間内の復活なのか。
なので、昨日は一本を仏間の外に飲みかけで出して置いた。さらにもう一本はカラのペットボトルを外に出した。
つまり、昨日は仏間の段ボールに残り4本。
外に置いたペットボトルを確認すると、飲みかけの方は新品になっていた。キャップがしっかりしまっている。そして、カラの方は空っぽのままだった。
どう言う事だ?
飲みきってはいけないのか?けど、初日は飲みきったはず。仏間の中でないと飲みきったボトルは復活しないのだろうか?
飲みかけは外に置いても復活していた。外に置いたカラはカラのまま。つまり一本減ったわけか。
静かに仏間へと上がる。かなり大変な4日間を過ごしたのだろう。皆、泥のように眠っている。
起こさないように静かに押入れへと移動した。押入れの中にペットボトルの段ボールの蓋を開く。
4本残っているはずだ。
だが、5本入っていた。
5本の新品のペットボトルと、外に新品が一本、そしてカラのボトルがひとつ。
中身は6本分だが、器が増えたぞ?
食料は、昨日メモした物と照らし合わせていく。うん。復活している。
3日目に食べかけた缶パンが新品になっていたよな?今回、食べ掛けはなかった。食べ掛けと完食のゴミの検証も必要だな。
キッチンへと戻ると、ダイニングテーブルにむき出しの乾パンが置いてあった。
食べ掛けが新品になる事はわかっていたが、テーブルの皿の上の食べ残しは消えないのか?空き缶はゴミ箱にあった。
と言う事は、出してしまうと中身は残り、翌朝新品として仏間に復活。つまり、中身も増えるって事か。
と言う事は、やりようによっては、器も中身も増殖出来るのか。
空間スキル、凄いな。
ママさん達は起きてき始めた子供達に朝食を食べさせる。それを見ながら今朝発見した件を報告した。
空間スキル仲間として情報は共有しないとな。
「それって、空間内なら普通に復活する物が、空間の外だとイレギュラーな復活をするって事?」
「たぶんです。まだ一回しか試していないので」
「ねぇ、でもそれってかなり重要よね。だって上手くすればもっと物資をふやせるじゃない?」
「どう言う事?」
「今まではあの、転移?した時間帯にあったのと同じ量しか復活しないと思っていたけど、清見君の実験だと、器か中身をじわじわ増やせそうじゃない?」
「うん?」
「だって6本しかなかったペットボトルが今は7本あるわけだし、乾パンは新品が10缶?それとそこの剥き身の分ある」
「完全に増えたわね」
あ、水は段ボールがもう1箱ある。が、まぁ今の話の流れだとどうでもいいか。
「それって、例えばうちのキッチン。現在のお米だと今の人数だと毎日の復活で間に合うけど、これ以上人が増えたら足りなくなるじゃない? でもさ、中身を外に出しておけばキッチン内は普通に復活するから、お米が増える事になるのよ」
「なるほど、そう言う事かぁ。あ、じゃあうちのトイレットペーパーも増やせるかしら」
「バスルームのシャンプーコンディショナーも増やせるのかぁ。問題は入れ物」
「そう!入れ物。清見くんちの仏間の押入れに器になりそうなものありそうじゃない?今日は押入れ掃除の続きをしましょうよ」
ちょっと意識を失いそうになった。またあの作業か……。
とは言えスキルの検証に繋がるのだから弱音を吐いてはいられない。慎重にやらないといけない。もしもうっかり使い切って復活しないなんて事になったら俺たちは詰んでしまう。
まずは押入れから使えそうな物を探す。




