43話 この森は厳しい
兄貴と山根さんは軽く夕食を摂りながらボソボソと話をする。鮎川さんは足に絆創膏を貼っていた。
俺の視線に気がついた鮎川さんが小さい声で説明をした。
「靴擦れ。森歩きなんて慣れてないから」
「ああ、それと枝で切った切り傷擦り傷も結構出来た。さっきシャワーでしっかり洗っておいたけど、今日助けた人らも明日は交代でシャワーしてもらってしっかりばい菌を落とさないとな」
「そうだな。こんな場所に病院があるとは思えない。ちょっとした怪我は自力で治さないとならない。化膿したらアウトだ」
「清見くん、回復スキルだったよね?」
「いやいやいや、そうですけど、『微』ですから、まだ『微』」
「微かぁ。ツバつけといたほうがマシなレベルか」
ぐはっ、ツバに負けた、俺の回復スキルよ。
「救急箱の中身って復活するのかしら?」
「どうだろ? 今まで使ってなかったから」
「今使ったから明日わかるわね」
「救急箱の在庫をメモしておいていただけますか? 今後、必要な事も出てくるでしょうから」
「そうね」
「トイレとバスルームに救急箱はないですよね。仏間はどうです?」
「無いわー」
「うちも無いわね」
「無かったなぁ。いや、あの押入れにあっても腐ってそうだけどな、年代モノだから」
「うん、使いたくないな」
それから、兄貴達が軽く語った森の中の話。
この周り程度の太さの木が生えている地帯には、あのバカでかい虫は居なかったそうだ。
ただし、木の幹が太くなるにつれて、まず虫が目につく。それも日本で見たより大きい。
だが、触れなければ襲ってこない。
しかし木の幹がかなり太く、樹齢100年どころか300年、400年をこえるくらいの太さになると、虫も大きくなり凶暴さが出てきているようだ。
虫同士で戦っていたり、食い合ってたりしたそうだ。勿論危険を感じて進むのを断念。
「樹齢300年ってどれくらいだよ」
「300年くらいだと日本でも割とそこらにあるんじゃない?種類にもよるけど」
「そうですね。まぁ、どっしりした木って思っておけば」
「清見、ほら子供の頃に家族で伊勢神宮に行ったの覚えてないか?」
「ん……ああ、うん」
「凄く太い木が幾つもあっただろ?」
「ああ、お伊勢さんの木は400〜1000年くらいでしたっけ」
な、なななるほど。
あれくらい太い地域は虫バトルが凄いんだな。虫王とか虫ボスとかが居るに違いない。
300年でも気の強い(体もデカイ)やつが居る、と。
「細い木の地域もあったのか?」
「うん、あった。今日連れてきた人たちと出会ったのは比較的細い…若い木の地帯だったな」
若い木……これから太くなっていくんだよな。
今は大丈夫なこの辺の木もいずれ育つのか?そして虫の王国に。
やだなぁ。
虫の天敵いないのか?まだ大きくなる前に、幼虫のうちに虫を食ってくれる鳥とか獣、この森に居ないのかよ。
「虫の天敵とか居ないのか」
俺がボソリと呟くと兄貴と山根さんが顔を見合わせて、苦笑いになった。
え、何それ、居たの天敵?居なかったの?
「虫を喰う天敵は居るらしい。俺らは見てないんだけど、なっ?」
「ええ。救助した中の2人が居た場所に、鳥や栗鼠っぽいのが居たそうです。ただ、幼虫でもそれなりの大きさで、その大きさの幼虫を喰うんで鳥も小動物も……いや、小動物じゃないのか。結構な大きさの獣がいたそうです」
「大きい動物ってクマとか?」
「遠くから見るとリスだそうです。けど体長1メートルくらいと言ってましたね。まぁ測ったわけではないですし、パニック状態なので大きく感じただけかもしれませんが」
「木の上の方にとまっていると、雀か椋鳥に見えたそうですが、降りてきて羽を広げたらコンドルくらいあったそうです。それがデカイ幼虫をむさぼり食ってたと」
「自分達が縮んだのかと思ったと言ってたな」
まさに俺もそれを考えてた。地球からここに来た時に人間のサイズが縮んだんじゃないかって。
ここは地球によく似た生態の星で、ただ俺たちがちびっこくなった?
「で、でも、虫に喰われるよりは……」
「鳥も栗鼠も肉食らしい。」
ひぃぃやぁぁぁ。
どっちみち、人間が食料になる方?この異世界転移ってそんな話なの?
『異世界に転移したら俺が食料だった件』
『食料として召喚された勇者』
マジ…………。




