38話 経験値あがる
食べ終えた食器を下げるついでに鮎川さんが皆を呼んでくるとのことだった。俺らは仏間で待つ事にした。
そこに子供らをつれたママさんらがきた。
お互いに紹介を終えた後に、謎の空間スキルの話もした。
山根さんは大仰天していた。
「そっちの話か」
どっちの話だよ。きっと小説のタイトルを思い浮かべてるんだろな。俺も最初は考えたよ。
『うちの仏間が異世界転移した件』とか、
『仏間の押入れがダンジョンになったのでスタダした』とか。
押入れにダンジョンは無かったけどな。
それから森の危険について話が進むと、ママさん達は顔を引き攣らせていた。
「やっぱり人を増やした方がいいんじゃないかしら。違う意味で」
「そうね。交代で見張りを置きたいわね」
「けど人が増えると必ず揉めるわよねぇ。今居るメンバーはちゃんと人の話を聞ける人だけど、みんながそうとは限らないじゃない? いえ、ママ友の中に居たのよ。他人の話を聞かない自己中なママさん」
「ああ、居るわねぇ、うちの近所にも居たわ」
山根さんが手を挙げる。消防士という仕事からか、皆が彼を見る目には信頼感のようなものがあった。勿論俺も頼る気満々だ。
「救助は出来るなら早い方が良いです。自分もそうでしたが、何も持たずにここに来た者はそろそろ命が危ない。この森の生物に襲われる以前に動けなくなって死ぬ可能性が高い。水を摂れないと脱水もかなり進んでいるはずです」
「そうですね。私もたまたまここを早くに見つけたから助かりましたが、そうでなかったら今頃……」
「それに、ここのメンバーをある程度増やした方がいいのは、もうひとつ理由があります。身ひとつで来た人らが集団になって森を彷徨いここを見つけたら、絶対にここを襲い我が物にしようと思いますよ。平和な日本ならいざ知れず、謎の森にこの安全地帯」
「山賊化……」
「早めに人をゲットしましょう。先程聞いた翌朝食糧が復活する話、その食糧で賄いきれる人数までは集めたいですね」
「けど集めると言ってもどうやって? 森には人喰いの巨大な虫が沢山いるんですよね?」
「あの、私が目を覚ましたあたりは虫は居なかったです。たまたま居なかったのかもしれませんが、まずは安全そうな方面を探索してはどうでしょう」
「そうですね」
「探索メンバーはどうしますか? 子供だけで残してはおけないし女性と子供だけで残るのもちょっと不安」
「橘さんか清見くんのどちらかが必ず残る事にしましょう。鮎川さんは申し訳ないですが探索に参加していただけますか?」
「はい。スキル物理攻撃もありますから!」
「羨ましいな。僕は体力(微)なんですよ」
「そうだ、山根さん。スキルを再確認しましたか?」
「再確認? そんな事出来るんですか? 最初の一瞬出た後にもう見えなくなってしまったんですが」
「大丈夫です。ふんすと力めば」
「力まなくて、頭で唱えればまた見れますよ。瞬間ですけどね」
「出っ放しはうっとおしいから瞬間観れるくらいがちょうどいいわね」
え、力まなくて良かったのか。
「お、本当だ。スキル:体力(微1.01708)になってる」
「0.01708の経験値? 凄いな、流石は消防士。体力おばけ」
「いや、微ですけどね。だけど数日間逃げ回ったのも無駄じゃ無かったのか」
とりあえず、今日は休む事になった。
救助は早いに越した事はないのはわかっていたが、もうすぐ陽が沈むだろうし夜間の森は絶対に行ってはダメだ。
山根さんの話を聞いて尚更そう思った。
山根さん自身も3日間森を彷徨い疲れがマックスであったろうし、捜索活動は明日の朝から始める事になったのだ。
あっという間に3日か。
この先どうなってしまうのだろうか。俺の引きこもり生活はこの先復活できるだろうか。
以前とは違う意味で、マジ、引きこもりたい。




