35話 消防士の話
「おはようございます。すみません、お世話になってしまったようで」
うおっ、びっくりした。
爆睡消防士がいつの間にか目覚めていた。
「助けていただきありがとうございます。自分は山根と申します」
畳の上でお互い正座で頭を下げあった。
-----(山根の話)-----
あの日、一昨日の朝だ。
俺はいつものように出動がかかるまで署で待機していた。そんな時に電話がなった。しかも相次いでなり続ける。受電の内容はどれも要領を得ない。
目の前で人が消えた。
車が消えた。
そこら中で何かを避けて車が事故っている。
救急車はあっという間に出はらった。非番のやつに出動をかけた。
そして消防署の前の道でも騒いでいるのが聞こえてきた。
署の前の道で、それは空から降ってきた。黒い雨?にしては粒が大きい。
黒い粒は目の前に居た男性の背中に吸い込まれた。すると男性の身体が捩れるように渦巻いて中心へと吸い込まれた。
何が起こったのか全く理解不能だった。
自然災害?
それとも何かの攻撃?
どこかの国の兵器?
通りに居る人達にそれが降り注ぐ。彼らは何が起こっているのか全く理解していない表情のまま捻れて消えていく。
気がつくとひとつの黒い物体がこっちへ向かってきた。俺は道路の端へ飛び込むようにジャンプして避けた。
避けたはずだった。
だがそれは俺を通りすぎたそこで止まり、Uターンした。
まるで生き物のように、クイっと俺の方を振り返り向かってきた。
俺は顔の前で両腕をクロスして身構えたが、たぶん無駄だったのだろう。
瞑った目の奥、暗い世界が渦巻いているのがわかった。そして目眩を起こしたように意識がなくなった。
-----(清見視点)-----
消防士さんの話は、流石だ、すごい臨場感だった。俺は自宅に居たのでその騒ぎを知らなかったが、兄貴から聞いた話と合わせると、多分、同時刻に空からソレが降ってきたんだろう。
それが自然のモノなのか、どこかの国の攻撃なのか、異世界からの召喚なのかはわからない。
…………異世界のは違う気がしてきた。そんなに無差別に大量に召喚する意味がわからないからな。
もしかすると俺も気が付かなかっただけで、うちにその黒いのが入ってきたのだろうか?
もしくは仏間ごと黒いやつに吸い込まれたのか。
そうだ!山根さんはスキル貰っただろうか?




