34話 消防士がきた
作戦会議はそんな感じで着地点が決まった。
そんな時に消防士がきた。
残念ながら救助にきたのではない。救助されに来たようだ。しかもたったひとりだ。
「すみません! どなたかいらっしゃいませんかぁ!」
外から怒鳴る大声がした。
「すみません、ここはどこでしょう、住所をお教え願えませんか、何で山ん中に居るんだ、署で、署に待機してたはずなのに、すいません、いったいここは、あぁ! 日本語通じませんか、もうどうなってるんだ、あ、あの、水があったらいただけると」
一瞬ポカンとしていた全員が慌てて立ち上がった。
ママさんらは子供をパントリーへと移動させた。兄貴が先に外へと出た。俺も裕理をパントリーへ入れて直ぐに兄貴を追っかけた。
声の主、汚れてはいたが消防士の格好をした若い男は一気に話したあと脱力したようにその場にへたり込んでいた。
もしかして3日間、飲まず食わずか。
続いてキッチンママがマグカップに水を入れて持ってきた。
座り込んだ消防士に手渡すと凄い勢いで水を飲み干した。
キッチンママの後ろには麦茶が入ったプラスチックのポットを持ったトイレママが居て、消防士のカップにおかわりをそそいでいた。ママたちは顔を見合わせて仏間の方を見た。
子供達は今、キチママのキッチンの奥のパントリーに居る。一応子供の安全を確保して消防士を仏間へとあげる事にした。
その際に消防靴を脱がすのに時間がかかった。消防服もかなり汚れていて畳の部屋へあげるのを躊躇した。
消防服の上下を脱ぐように促して何とか脱がせた。消防士はランニングシャツとズボンのまま転がって気を失うように寝てしまった。
俺と兄貴が見張りのためそこに残った。
念の為、今日は皆にキッチンママのダイニングで過ごしてもらう事になった。
裕理も兄貴が居なくてもむずがる事はなくおとなしかった。
そうだよな、兄貴が出勤の時にもほとんどぐずらない良い子だった。
「どうする? 交代で見張る?」
「一晩くらいならふたりで起きてた方が、何かあった時に対処が出来る」
「そうだな。ひとりで見張っててこの人に飛びかかられたら、俺は即、ギブする。見ろ、このガタイ」
「さすがは消防士だな」
俺らがすぐ横でボソボソ話しても全く起きる気配はなかった。よほど疲れていたんだな。
腹が上下してなかったら死んでるんじゃないかと思うくらいだ。
俺らは差し入れのコーヒーをブラックで飲みつつ、眠気を払うために話題を探す。
「消防さん、居たな」
「居たな。きっと警察や自衛隊も居そうだな」
「ここ、地球……だよな?」
「うーん、まぁ、呼吸出来るって事は空気もあるし、月とか火星でない事は確かだな」
「でも、ただの遭難じゃないよな?」
「そうだなー。仏間ごと、と言うか仏間だけで森の中だからなぁ。部屋付き神隠しか」
「イリュージョンで地球っぽいどこかに飛ばされた、と言うか俺の知ってる界隈では、それを異世界転移と呼ぶ」
「その界隈は、マンガとかアニメか?」
「兄貴、漫画を馬鹿にするな、漫画やアニメは案外世の中の真実を突いてる事が多いんだぞ」
「お前……最近、都市伝説にものめり込んでいたよな? 2025年にと地球は滅亡するとか言ってなかったか? 2025年は無事に越えたな。今年は2026年だからな」
「そ、そそそれは、俺らの知らないところで滅亡を防ぐべく動いてくれたやつらが居たんだ。たぶんだが」
「そ。良かった良かった。地球は滅亡しなくて」
「ズレた……だけかもしれませんね」
うわぁっ!びっくりした!!!




