32話 キッチン万歳
「あの、食糧の目処がついたのか? 兄貴、てんとう亀虫を倒せるほどレベルアップしたの?」
「ん? いや、レベルは微妙の1.0012だ! じゃなくてキッチンママさんの話」
「あ、ごめん。聞いてなかった」
「ええと、水が無尽蔵に出せるとこは?」
「そこは何となく聞こえてた」
「トイレットペーパーが翌朝復活する話は?」
「そうなの?」
「そうなのよ。と言ってもトイレットペーパーが新品になるわけじゃないの。使っても、ここに来たあの朝と同じくらいに今朝戻ってたのよ」
トイレチートかっ!タンクの水が復活するだけでなく、ペーパーの復活まで?
「けど、水と違ってペーパーの復活は朝だけかしら。日中に使い切っても朝まで復活しないみたい。あの初日にタンクから水を出すのに床をビショビショにしちゃって、紙を使い切ったのに昨日の朝にはまたあったの」
「同じようにキッチンでもな、使った食糧が翌朝復活したそうだ」
うええええええええ????
なんじゃ、それぇぇぇぇ。キッチンの水道が自由に使えるだけでなく、ガスも使用可な上に、食糧が復活?
食糧が、復活?
それって異世界転移でチート中のチート!キングオブチートじゃんよ。
何、これ、ママさん主役の異世界転移チートストーリー?
「キチ、キチママさん」
「ちょっとぉ! 誰がキチママよ! 失礼ねっ」
「あ、すみません、弟の言い間違いです。おいっ」
「あ、はい。キッチンママさんのスキルが凄くて……俺、噛んじゃいました」
「噛むにも程があるわよ。キチママってきちがいママって事だからね」
そ、そうなんだ。ママ界隈の用語か。危ない言い間違いをしてしまった。
「て言うか、清見君って私の事キッチンママって言ってるんだ?」
「あら、じゃあ私はバスママ? 風呂ママ? ちょっとお水っぽい呼び名ね」
「えー、まさか私はトイレママぁ? めちゃくちゃ嫌なんですがっ!」
うわっ、俺、ママさん達に詰め寄られて、絶賛大ピンチ。土下座しかない。スキル土下座を発動だ。
ゴンっ
土下座ってる俺の背中に誰かが乗っかった。
「こらっ、まなちゃん」
よじよじ
何かもうひと物体が背中によじのぼったぞ?
「もう、リコちゃん」
土下座した俺の背中に3歳コンビがまたがっていた。仕方ないので揺すってやった。喜んでいた。
「お昼寝から起きちゃったか」
「おやつにしようか」
「続きは中で話しませんか? あ、まなちゃんちのダイニングキッチンで」
まだ昼寝中だった郁未くんとりりちゃんも連れてきた。
ダイニングキッチンとは言え、さすがに11人入ると狭く感じる。
キッチンママは手早く冷蔵庫から出したミルクを温めたり、上の戸棚からクッキーを出して子供達が座っている床の上に置いたちゃぶ台に置いた。
因みにそのちゃぶ台はうちの仏間の押入れの奥から出てきた、昔婆さんらが使っていたものらしい。子供にはちょうどいい高さだ。
ところで、鮎川さんや兄貴達が話していた『食糧枯渇問題』は、現在の人数なら、キッチンママさんちの食料で十分やっていけるのだが、これ以上救助者が増え続けると食料の復活に間に合わず足りなくなる事を懸念したそうだ。
なので、自分達で森から調達する方法も考えていくそうだ。




