27話 ちょっと待て、騙されるな
「どうした? 清見。何か気になることがあるのか?」
「いや、うん。スキルのさ、(微)がレベルアップするなら(仏間)もレベルアップしてもよさそうじゃないか?」
皆が押し黙った。なんか間がもたない。
「あ、その、ごめん。何でもない。レベルアップしないスキルがあってもいいよな」
「ふむ。でも清見は納得していないんだな?」
「どう言う事? トイレも仏間もレベルアップするって事?」
「そうね、攻撃や回復が訓練して経験値を手に入れるなら、空間スキルは使う事でそれが経験値にならないかしら」
郁未君ママさん、グッジョブ!それだ。
「だけど、昨日から仏間は使っているけど清見のスキル変化はないんだよな? 数字は出ていないんだろ?」
「使いが足りないのか、あとは使い方とか?」
「寝泊まりはしたけど仏間としての役目を果たしてない、とか」
「あ、まだ今日は仏壇に手を合わせていない」
全員が慌てて仏間に戻る。仏壇の前に並んで座り手を合わせた。各自がムニャムニャと唱えた。
「あ」
「えっ?」
「出たか?」
「出た。出ました。空間(仏間1.000001)。ゼロが多いな」
「それでも経験値が貯まる事がわかった。朝昼晩と手を合わせよう」
「となると郁未君ママのトイレも試したいわね。徒歩15分、往復30分かぁ。ちょっと遠いけど、トイレは必ず郁未君ママさんとこのを使わせてもらう?」
「是非是非お願い。私もレベルアップしてみたいわぁ。トイレのレベルアップがどんなものかわからないけど」
徒歩15分の道のりを皆で話しながら歩いた。俺が付けた印を見ながらだ。これだけ印があれば道に迷う者もいないだろう。
歩きながら回復の経験値の事を考えた。
雑草に回復を何度かかけた事で経験値が表示された。回復(微1.000001)。
きっと経験値が増えていくと『回復(微2.000000)』になるんだよな?
それは、つまり、回復微妙(微量?微小?)レベルが2になっただけだ。
『微妙』はレベル幾つまであるんだ?
経験値を百万貯めるのさえかなり大変なのだが、百万貯めてレベル1アップ。それも『微妙』の、レベル2だ。
レベル10にするには経験値が一千万!
『微妙』はレベル10でカンストか?レベル100とかまであったら気絶もんだぞ?微妙のくせに。
そんで?『微妙』の次は何だ?
回復……(小とかか?)
回復(中)
回復(大)
回復(特大)
いや、回復(低級)、回復(中級)、回復(高級)…………。
回復、回復、回復……解りづらっ。
どんな表示にしろ、気が遠くなるな。これは考えたら負けなやつだ。そうだな、考えたら終わりだ。
俺が回復に思いを馳せている時に皆は空間スキルについて語り合っていたようだ。
「トイレや仏間ってレベルアップするとどうなるの?」
「さぁ?」
「トイレットペーパーがシングルからダブルになるとかかしら」
「えっ、そういうレベルアップなの? 流せる水の量が増えるとか」
「便座が暖かくなる、とか」
「やだぁ、うちのトイレはちゃんと便座ウォーマー付いてるわよ」
「仏間はどうなるんだ?」
「仏壇がグレードアップしてゴージャスな仏壇になるのかしら」
そんな話で盛り上がっているとあっという間にトイレに到着した。
交代でトイレを使用する。
最後に郁未君ママさんが入り、出てきたあとに例の踏ん張りでスキルを確認していた。
「あ、あらあら、出てるわぁ。空間(トイレ1.000001)。気が遠くなりそうな数字ね」
「もっと頻繁に使わないとゴージャストイレにならないわよ」
「でも片道15分は遠くなぁい?」
帰り道そんな話をしながら歩いて仏間まで帰ってきた。
「いい運動にはなるけどトイレのたびに往復30分かぁ」
「トイレを持ってくる事は出来ないの?」
どうやって?
鮎川さんのその言葉に、皆、うんうんと頷く。移動できるもんならこっちに持ってきたいよな。
「ん? もしかしてレベルアップすると移動出来るのとか? スキル『空間(移動式トイレ)』に?」
「なるほど」
なんの気無しに呟いたら聞かれていた。
「とりあえず清見、お前仏間を持ち上げてみろ。えいやー!と」
無茶を言う。そんな事が出来れば苦労はしないよ。
ふんすーっ!
あ、動いた?
動いたぞ?
動いた……よな?
兄貴と鮎川さんがポカンとする中、郁未君ママが郁未君を鮎川さんに差し出した。
「ごめん、ちょっとトイレ取ってくるから持ってて」
「あ、危険なんで一応ついて行きますよ」
兄貴と郁未君ママさんが今行ってきたトイレ方面へと森の中に消えていった。
俺は仏間を持ち上げたり下ろしたりと試した。持ち上げたと言っても地面に埋まってると思ってた部分が地上に出てくる程度だ。
そして、少しズラしてまた地面に着地させて手を離すと埋まる。
ふむ、やはりただ置いてあるだけじゃないんだ。隣で鮎川さんも一緒にガン見していた。
郁未君と裕理は、地面に敷いたシートの上で遊んでいる。
「どうなってるのかしらね。清見君ってマジシャン?」
「違います」
「えと、建築士とか土建屋さん?」
「……がいます。ただの引きニートです」
「最近のニートは凄いわね。あ、そうだ。私が乗ってても持ち上がる?」
そう言って鮎川さんが靴を脱いで仏間に上がった。
「どうぞ。やってみて」
えぇ………。ふんしょおおおお。上がらない。
よいっしょお!ふんしょ!えっさ!
持ち上がらないぞ?
「ダメね? 私が重いからって事はないわよね?」
鮎川さんの目が怖かったので首をブンブンと横に振った。
「た、たぶん、人が居る空間はダメなのかな」
「そうね。そうよね、うん」
首をブンブン縦に振った。
兄貴と郁未君ママさんが戻ってきた。思ったより時間がかかったな。けどちゃんとトイレも持ってこれたようだ。
「慣れるまで操作が難しかったわぁ。油断すると手から離れちゃってぇ」
「でも、持ち運び出来るって便利ですね」
「それに近くなったから頻繁に使ってレベルをあげましょうよ」
加瀬家の仏間の横にトイレが設置された。
「何処かにお風呂落ちてないかしら」
「キッチンも欲しいわね」
女性陣達、強っ。




