26話 スキルに変化が
早速連れ帰った親子は仏間を見てびっくり仰天した。それから泣いていた。ちょっとこの奥さん、泣きすぎる。
兄貴は仏間にあげて食事を用意してた。
仏間は16畳の広さなので、兄貴、俺、裕理の他に、鮎川さんと親子が加わっても十分な広さはある。
問題は水と食料だよな。尽きる前に救助してもらいたい、けど俺はここが異世界と思っているので救助は99%無理だろうとも思っている。
水や食べられる物を探した方がいいと思う。
それとスキル。せっかく入手したスキルだ。レベルアップが出来るに越した事はない。
だけど使い方がわからない。
踏ん張って瞼の内側に表示しても一瞬で消えてしまう。触れると詳細が……なんて事もない。
手探りで見つけていくしかないのか。とりあえず使う。
「回復っ!」
何も起こらない。正式名称でないとダメなのか。
「回復かっこ微 かっことじ!」
声に出して詠唱してみた。もちろん手振り付きだ。が、何もおきない。
だが俺は気がついた。
今、前方の空中にスキルを放った(つもりだ)が、俺のスキルはそも回復だ。
名前からして、何かを回復させるんだよな?空中に撃っても意味がなかった。
では何を回復させるか。
俺?
ノンノンノン。スキルを試すためにわざわざ怪我をするとか、絶対にお断りだ。
庭(仏間の外)をみまわして、雑草を見つける。
雑草を足で踏みつけた。
流石は雑草だ、ちょっと踏んだだけでは葉が折れたりちぎれたりしない。雑草のごとく生き抜いている雑草だな(意味不明)。
横に落ちてた尖った石でガンガンと叩くと伸びていた葉に少しだけ傷がついた。
そこに右手を突き出した。
「回復かっこ微かっことじ」
何も起こらない。てか、詠唱長っ!まぁいいか。
「回復かっこ微とじかっこ、回復かっこ微とじかっこ……ボソボソボソボソ」
呪文のように唱えていたら、おおう?傷が消えた?
ふんすっ!
回復(微1.000001)
ん?
んぎゃっ?
「あーにきぃぃぃぃっ!」
思わず大声で兄貴を呼んだ。
「どしたっ」
兄貴が慌てた様子で飛び出てきた。
「微にゼロ付いたぞっ!」
「ビニールの衝立て?」
「兄貴、耳、かっぽじけ」
「ん? ん? カッポジ家?」
ふぅ、まぁよい。よく聞け、聞いてください。
「スキルの回復に変化があったんだよ。回復(微)の微の後に数字が付いた! 1.000001……だったか、俺のスキルが回復(微1.000001)になった!」
「それ……は?」
俺たちの騒ぎに気がついたのか鮎川さんも部屋から出てきた。
「それってスキルアップしたって事ですか?」
「コンマ000001だけどな。今まではそんな表示なかっただろ? 使ったら出た」
つまり、スキルは使用した方がいい。使用しないとレベルアップしない。(経験値が貯まらない?)
スキルがあると言う事は、それが必要な世界だ。
ここは、物理攻撃が必要な世界……。
そう、そして回復が必要な世界。つまりここは危険と背中合わせの世界じゃないか。
仏間……が、必要な世界?それはよくわからん。
トイレはどんな世界でも必要だな、うん。
母子も仏間から出てきた。
「あの…………実は昨日、目が覚めた時に空間トイレとかって見えた気がしたんです。気のせいだと思ってました」
はい、スキル空間トイレ、来たぁ。
多分『スキル空間』なんだと思う。踏ん張る方法を説明すると早速試して確認をしていた。
「あ、空間です! 数字は出ていないですね」
「おお、清見に次ぐ空間スキル持ちだぞ。凄いな」
ここでスキルについて全員が確認をした。
兄貴と鮎川さんが『物理攻撃(微)』、俺が『回復(微1.000001)』と『空間(仏間)』、親子のお母さんが『空間』だ。
因みに親子の子供は郁未君2歳だそうだ。鮎川さんと兄貴はお母さんの方を郁未君ママと呼んでいる。
今のところ、裕理と郁未君のスキルは不明だ。
「清見が回復を使って経験値が表示されたって事は俺たちも物理攻撃の訓練をした方がいいな」
「清見くん、仏間の方は経験値は出ていないの?」
「うん、そっちは変わらず」
「空間スキルは経験値が必要ないのか?」
「そうかも。(微)は付いてないもんなぁ」
「そうねぇ。攻撃や回復は経験を積むのが必要だけど、仏間やトイレは経験は不要よね。ただ普通に使うだけ」
でも俺は…………。




