18話 橘と清見
仏間に続く廊下や居間が無くなったのではなかった。
兄貴の声がする方向には何かの木々が生えていて、その隙間から兄貴が走って来るのが見えた。
廊下、居間に続き、うちの庭も無いぞ! 引きこもりにとって自宅の敷地は重要なのに、酷い…………。
振り返り仏間を見る、正確には仏間の周りを見た。
庭どころか、2階が無いっ!って事は聖地『俺の部屋』が、俺の部屋が無いぃぃぃぃ!(大号泣)
兄貴の部屋も、ってか、無いよりも『ある』方を確認した方が早い。
仏間ある。
てか、仏間しか、無い。
どういう事だ!何でこんなにバッサリと切り取られているんだ?いや、これで成り立ってるうち(の仏間)の凄さよ!
背中の裕理くんごと俺を抱きしめる兄貴。兄貴の名は橘。俺は清見。背中の兄貴の子は裕理。
兄貴は家に目をやり、ポカンと口を開けた。顎がはずれたかと思うくらいデカイ口だ。
「俺の部屋……は?」
「俺の部屋も無いぞぉ」
「…………泥棒でも入ったのか?」
「いくらなんでも泥棒が持ってくには大きすぎんだろ」
「そ、そうだよな?」
「あ、兄貴、裕理くんの服や紙オムツも無い」
「ミルクは台所に、あー………だよな、うんうん」
兄貴は呆然としたまま仏間へと上がり込んだ。ひとしきりキョロキョロしていたがいつの間にか顎は閉じていた。
「仏間……残ったんだ。良かった、親父達の写真。それと清見と裕理が無事だから良しだ」
「仏間が残っただけマシか。部屋も台所も風呂もトイレも玄関も、あ、俺、靴無い。兄貴! 兄貴兄貴! 靴どうした?」
「どうしたって?」
「ここに上がる時靴どこで脱いだ?」
「どこって玄関も縁側も廊下も無かったから、そこによじ登った時にちゃんと脱いだぞ?」
「靴、ちゃんとキープしとかないと! 唯一の靴だぞ、無くなったらアウトだ」
「そ、そうだな」
意味不明の現状把握より身近な物をしっかり確保しなくては。これ以上失くしたくない。
「押入れん中確認しとくか」
「今?」
「そう、今。確かお袋が防災関係物は仏間にしまったと言ってたんだよ。台所が無い今、防災グッズは必須だぞ?」
なるほど。
「あれ? 防災グッズは外の物置って言ってなかったか?」
「ああ。前は物置だったんだが、外の物置は意外と砂ぼこりが侵入するんだよ。それで缶詰が砂まみれになってたとかで家の中にするって」
そうなんだ。ずっと自宅警備員だったのに全然知らなかった。
押入れを漁っていると防災用の水と食料を発見した。兄貴が長靴を発見した。
「清見、長靴あったぞ?」
何で長靴が押入れにしまってあるんだよ。普通は玄関の靴箱だろ。
「靴箱が狭くて、普段使わないゴム長靴は押入れにって言ってたからな」
とりあえずありがたい。俺の柔な足を包む物があって良かった。お袋、ありがとう。




