17話 おぶって掃除中
背中から響く泣き声で目が覚めた。
あ、裕理。
良かった。下敷きにしてなかった。ごめんごめん。
ヨレヨレと身体を起こして背中を揺すった。
俺、何で寝落ちしてたんだ? 昨日夜更かししたっけか?
目の前の仏壇を見て、あ、俺、チーンしたっけ? 覚えていないので、もう一度チーン。
『南無南無、両仙堂の薄皮饅頭です。南無南無』
俺、仏壇のお作法とかわからないからいつも適当。
親が死んでから思う。生きているうちに色々ちゃんと聞いておけばよかった。
とりあえず南無南無したから立ち上がって仏間を出た。障子扉を開けて廊下に。
廊下が無い。
障子の外が外?
一歩下がって障子を閉めた。
そこに正座して深呼吸。正座のまま障子をソソっと開ける。
そぉーとぉー。
閉める、開ける。閉める、開ける。
「きゃっきゃっ」
裕理くん、君、楽しそうだねぇ。叔父さんは困惑中だよ?
部屋の方へ向き直り部屋の中を見回す、仏壇、座布団、テーブル。
そう、この部屋は仏間で普段は使っていない部屋だった。両親が亡くなってから頻繁に出入りしているが、父が長男で昔は親戚が集まったとかなんとか。俺のうんと小さい頃までよ。
奥にちょっと大きめの仏壇があるけど部屋はがらんとした16畳の和室。真ん中に大きめのテーブル。ええと畳用の座卓って言うんか?
あ、廊下側の反対側は押入れ、仏壇と向き合う側には居間と繋がる襖がある。全開出来るタイプ。
そこへ向かい襖を、恐る恐る開けた。閉めた。開ける、閉める。
「きゃっきゃっ」
裕理くぅん、叔父さんね、困ってるのよ。
開けた。居間が無い。外。閉めた。
裕理くん、うちの居間、どこに行ったか知ってる?
「ダァブゥ」
うんうん、そうか。どっかに行ったんだね?
ふと押入れの襖を見る。……押入れもどこかに行っちゃったかなぁ。
諦め半分で押入れを開けた。
あ、布団がミッチリ。座布団もミッチリ。何か分からん包みもミッチり入ってる押入れだった。
押入れあった!良かった!
「……よみぃ……きよみぃ、清見ぃ!」
何処かから聞こえた兄貴の声に慌てて廊下……元廊下があった側の障子扉を開けると木々の奥からこちらに走ってくる兄貴が見えた。
駆け寄ろうとしたが、あ、俺の靴が無ぇ。玄関とか2階とか台所とかどこ行ったんだよ!
「ダッダッダッ」
俺の背中でジタバタ暴れる裕理を揺さぶりながら兄を待った。待ちきれず仏間から外に飛び降りた。
「いったっ」
高さはさほどでは無いが裸足でゴツゴツした地面はかなり痛かった。石とか枝とか。
引きこもりニートのやわな足をなめてた。




