112話 都市
-----(清見視点)-----
ウトウト(熟睡)していたら都市に到着していた。
驚いた。
遺跡の狭い通路から、突然開けた空間に。まさに、地下都市。
これ、地底人とか、エイリアンとかがいるやつ。ファンタジーから一気にSF映画か?
ただ、目に映るそこらを歩いている住民は人型だ。俺らと似ている。
手も足も目もふたつずつ。
鼻も口もだいたい定位置にある。
頭から触角が伸びていたりもしない。
そういえば、獣人さんらしき人も見ないな。犬耳とか尻尾持ちとかもいない。
背の低い人はいても、その人がドワーフかどうかなんてわからん。耳の尖った超美形のエルフっぽい人も見当たらない。
もしかするとこの国(都市)は、人型以外を敵対視していて入れない、どころか殺戮している可能性も……。
「清みん、清みん、ここらは地域的に人型が多いけど、他はいないわけじゃないそうだぞ。あと、別の都市では結構見かけるらしい」
大島氏も俺と同じ事を思っていたのか。でも、その情報いつ聞いたんだ?
えっ?さっきの移動中に色々と質問をした?流石は営業マンめ、抜け目がない。
俺らが乗ったダイソナーはゆっくりと都市の中を進み、大きな建物の前で止まりそこで降りた。
上を見る。
地下とは思えないな。明るい夜空のような天井がある。太陽と比べるとだいぶ劣るがそこそこ明るい。
地下なのに普通に植物が生えている。普通に。普通サイズの。
建物は石壁が多いな。
ここら辺はいわゆる上流なのか、大きな屋敷が多い。遠目に見える街並みは普通の家とか店みたいのも見える。
ここからは見えないけど、田畑とかあるのかな。ここの住民の食生活ってどうなっているんだろう。
冒険者達の先導で、一際大きな屋敷へと入っていく。
警備隊だろうか、武器を持っている。俺たち大丈夫かな。このまま捕まったりしない?
かなり不安なまま中へと案内されると、広いエントランスのような場所に立派な服装の人達がいた。
「き、貴族、かな」
俺が大島氏に聞こえる程度の声でボソリと囁いた。
「うーん。なんか、まんま異世界ファンタジーだな。真ん中の人がこの屋敷の主人で貴族、その周りが部下かな? 宰相とか……」
冒険者達が膝を折り頭を下げたのを見て自衛隊員達も真似をした。
慌てて俺たちも……、俺は慌てるあまりに土下座スタイルになった。うん、この角度だと自衛官の背中に完全に隠れられるな。俺、グッジョブ。
が、逆に土下座が目立って、社長の横にいた専務が俺を起こしに来てしまった。
俺は貴族の階級に詳しくないので、心の中で真ん中のヤツを社長、その両隣を専務、その周りを部長と認識した。引きこもる前に少しだけ会社員だった事があるからな。
「頭をお上げください」
専務は優しそうな人だった。こんな人の下で働いていたら、俺も引きこもらなかったのに。
とりあえず頭をあげて正座にした。
話は自衛隊の人がしているので、俺はじっと正座をしていた。やばい。足が痺れてきた。
すみません、胡座にチェンジした。だってさ、話が長いんだよ。
この世界に来た半年前からを語っているからな。
まだ長くなる事に気がついた社長……あ、待て。専務の方が偉い呼称だっけ。社長を会長に格上げした。
会長もよく気の回る方らしく、休める部屋へと案内してくれた。
3佐とふたりの自衛官のみ、また話をしに行った。今後の避難民の話だよな。
俺たち残りの自衛官と大島氏と俺、それから俺たちをここまで案内してくれた冒険者チームは、食事が用意された部屋に連れて行かれた。
日本食(日本で食べていた普段の食事)と比べると、ワイルドだったが、俺たちもこの世界に来て半年、昆虫を狩って食べるというワイルドすぎる日々を送っていたからな。それに比べると、『食事』という感じだった。
一応冒険者さん達に断り、バッグからぽよん君を出してぽよん君にも食事をさせた。
最近は俺らと同じ物を食べる事も多かったからな。俺らが寝ている間、狩りに行っているみたいだったから、足らなかったんだろうな。ごめんな。
冒険者さんはぽよん君が食事をする風景をガン見していた。
壁際に立っていた数人の課長(たぶん警備の人)のひとりが慌てて扉から出て行った。
トイレを我慢していたのかな?間に合うといいね。
戻ってきた課長は部長達と一緒だった。
そして何故か俺の背後で俺(と、ぽよん君)の食事風景をガン見している。
はっ、もしかしてこの食事、部長さん達のだった?ごめん、食べちゃったよ。
「驚きました」
「ええ、本当に」
「あ、すみません。勝手に食べちゃって……」
「いえ、違います。◯◯スライムです」
ん?また聞き取れなかった。いいや、別に。
「あ、この子はうちの子でぽよん君と言います。良い子ですよ」
部長課長だけでなく部屋に居た俺ら以外が全員どよめいていた。
自衛官が彼らに説明をしていた。そうだ、俺もぽよん君に言っておこう。
「ぽよん君、この街の人を襲ったらダメだからね。あ、でも俺達を襲うヤツは返り討ちにしていいからね」
周りが一斉に首をブンブンと横に振った。
食事を終えて酒を勧められたけど、自衛官達も大島氏も飲まなかった。俺もだ。
そうしていると偉い人同士の話し合いが終わったのか、3佐達が戻ってきた。
3佐達用の新しい食事が運ばれてくる。それを食べながらざっと話を聞かせてくれた。
今夜はこの屋敷に泊まる。
明日3佐達は、新しい避難先を見にいくので、俺らは街で自由にしていいそうだ。
新しい避難先、実は都市の中には500人もの人間を受け入れるには住居が足りないそうだ。
それで、この都市から近い踏破済み遺跡を利用してはどうか、と言う話になったそうだ。
小さい街や村は踏破済み遺跡を利用している事もままあるそうだ。
使い道のない踏破済み遺跡は通常は放置されるが、大きな街や都市の近くはゴミ捨て場として利用する事もある。
ゴミ捨て場と言っても生ごみではない。
地球(日本)で言う所の不法投棄ゴミに近い印象だろうか。
特に冒険者達が不要なドロップを廃棄する。持ち帰っても売れない物だ。
例えば、武器装備を新しくした時、使い古しの装備や壊れた武器を捨てる。
それからドロップしたスキル石。既に誰でも持っているスキル石はドロップしてもただのゴミ石だ。
「なんだ、それ。スキル石を捨てるとか」
「ええ、我々はスキルがないので欲しい石ですが、この世界ではありふれているそうです。物心ついた子供にすぐにスキル石は使うそうです」
「で、その石のスキルって」
「はい。我々が拾ったあの宝箱、あそこに入っていた『物理攻撃』がそうですね」
「えっ、じゃあ、あれは宝箱じゃなくてゴミ箱だったって事?」
「そうなんですよ」
3佐が苦笑いを抑えられないように笑った。
宝箱……顔コングを倒したから出たのではないのか。たまたまそこに捨ててあったゴミ箱なのか。
「どうも、以前に通りがかった冒険者が廃棄をしたのではと。割とあるみたいです。遺跡ダンジョンを渡り歩く冒険者あるあるですね」
「じゃあもしかして、その明日3佐達が行く所にもゴミってか俺達には宝だが、山ほど転がってるのか」
「はい。全員に配っても余るくらいあるそうです」
それは凄い!
「逆に驚かれたのが、よく地上で生き残れたと。地上の魔物はサイズも強さも地下と比べ物にならないくらい別格だそうですよ」
「そうです。地下にある遺跡ダンジョンの敵は普通サイズだそうです」
「あのミノタウルスは地上から落ちて来たと言ってましたからね」
え、じゃあ地下遺跡ダンジョンのミノタウルスはどのくらいのサイズなんだ?
まさか、1メートル弱とかだったら可愛すぎるだろう、ミノタウルス。
どうやらダンジョンは水も食糧も豊富。獣や魔物も強くない。普通の大きさ。セーフゾーンも多く存在する。
地下都市の住民は冒険者が持ち帰る物で生活が出来るらしい。
勿論、大きな地下都市には農地もあり、ちょっとした作物を作ったり、食用の獣を育てたりもしているらしい。
俺たちはこの大きな地下都市のすぐ近くのゴミ置き場、もとい、踏破済み遺跡のゴミを整理してそこを拠点に出来るようだ。
まずは明日、3佐達が確認に行く。500人も生活出来るスペースがあるかどうか。
そしてその結果を持ち帰り、まずは自衛隊が作業に来るそうだ。勿論ボランティアも募集するそうだ。
それから徐々に避難民の移動だ。
なにしろ、徒歩2時間プラスダイソナー6時間の距離だからな。
全員で歩いての移動は難しい。ダイソナーを借りて少人数ずつの移動になるだろう。
それから、1番の問題は建物の移動だ。
森の中の移動でさえ、木々を薙ぎ倒していた。そんな物を地下遺跡の通路に持ち込んだら、通路が破壊される。
1番小さいトイレでも、徒歩の途中に天井が低い場所が幾つかあったから通すのは難しいだろう。
置いて、いくしかないか? 建物から離れて数日すると空間スキルが消える。
消えるしかないのか。
あのスキルがあっただけで俺たちはかなりラッキーだったのだ。なくて当たり前の人がほとんどなんだ。
地球(日本)の遺物が無い方がこの世界へ馴染めるかもしれない。
俺もそろそろ押入れを出る時が来たのか。………いや、遺跡には押入れっぽいスペースはある。という遺跡の方が押入れっぽいスペース多いよな。
よっし。仏間とはさよならだ。
あ、今すぐじゃないぞ?もう暫くは仏間のお世話になる。
「清みーん、そろそろ寝てくれる? それとも寝言なのか?」
「あ、ごめんごめん」
俺たちの冒険はこれから始まる。
「はよ、寝ろ!」
完
-------------
あまり盛り上がりのない地味な話でしたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。
くまの香




