111話 上位魔物
-----(清見視点)-----
500人分の転移石、あ、勝手に名付けた。転移石。
自衛官のひとりが冒険者チームへ問いかけた。俺も知りたい謎だ。
「その移動ポータルを作動させる石はどのように入手すればよろしいのでしょうか?」
「我々は現在500人弱がこの遺跡に集まっております。移動をするのならば全員でと考えております」
見れば見るほどゲームに出てくる冒険者チームは、小声で二言三言話した後にまた俺の花笠を見た後3佐へ顔を向けた。
どうしてもこれが欲しいのか。
もしかして、この世界、地下帝国では王族のみが被る事を許された王冠(花笠)なのか?
「清みん、清みん、それ違うから。何となく考えてる事わかるけど誤解ね。彼らが気にしているのは花笠の上のスライムだから」
「ぽよん君? ぽよん君はあげないぞ? いくら花笠に乗ったぽよん君が可愛いからって、ぽよん君は今やもう加瀬家の一員、家族だからな!」
「欲しがってないない。逆。彼らは怖がってるの」
「可愛いぽよん君を?」
「うん、そう。ぽよんさんはレアだよ。俺らが降り立った地でも結構スライムに食われたからな。たまたま清みんがテイムしたから仲間になったけど、それがなかったら敵中の敵。しかもスライムってこの世界じゃ上位魔物らしいよ?」
「確かに……そうだった。あのでろーんとしたスライムには苦労したっけ。ぽよん君が可愛いからすっかり忘れてた。って、上位なの? 魔物の中で」
「そう。大物も食うらしい。暴食王ってあだ名があるくらい」
「うちのぽよん君は少食だけど、もしかして我慢してたのかな」
俺は頭の上からぽよん君を下ろして目の前に持ってきた。
「ぽよん君、いつも腹すかせてた? ごめんな、気が付かなくて……」
スライムには顔が無いので、もしかしたらぽよん君の尻に向かって話していたかもしれない。
が、ぽよん君は身体の一部を細くみにょんと上へ伸ばしてふるふる。
気にしてないよ、とか、大丈夫と答えた気がした。勝手な解釈だ。
しまった、ぽよん君に気をとられている間に、転移石の入手の話は終わってしまったようだ。
兄貴がこっちを見て困った顔をしている。3佐達と冒険者チームもだ。今度は花笠ではなく俺の顔を見ている。
「あ、すみません。聞いてなかった。何です?」
「仏間をどうやって持って行くかだ」
そっか。転移石が手に入っても仏間……建物は。って、転移石の入手の算段はついたのか?
「石はひとつあれば誰でも通れます。過去に他の国?世界?から来た方も潜った記録があったはずです。けど、建物は聞いた事がありません」
そうか、そうだよな。
けど、仏間、置いて行くのかぁ。
一定期間離れると消えてなくなるんだよなぁ。俺たちをずっと守ってくれた仏間(と、トイレとお風呂とキッチン。それと病院と保育園。あと飛行機)。
俺たち、ずいぶんと助けられたあの建物の数々。一度消えたらもう戻らないよな。
でも、地下都市で生活出来れば不要になるのか。
待て待て待て。
人間(冒険者)の出現で皆安堵しているけど本当に信じていいの?
人型の魔物って事はない?俺たちに似せて化けている可能性もあるよな?
こんな先の見えない状況で、救助してくれそうな人(?)との出会いでつい気を許してしまってない?
と、一般市民のしかも引きニートの俺がどうこう考えるまでもなかった。
ちゃんと自衛隊でもしっかりと、俺よりもしっかりと考えて交渉、行動していたようだ。
まずは自衛隊の一小隊が、冒険者と共に地下へ降りて向こうの偉い人と交渉をするようだ。
その際に500人が生活出来る空間、食糧などがあるかどうかもしっかり確認してくるようだ。
その隊が戻るまで俺らは避難態勢で待つ。大島氏の同行は必須らしい。兄貴もメンバーに入っていた。
俺は引きニートとしてここが踏ん張りどころだと思った。いつもいつも兄貴の陰で俺は安穏と隠れていられた。
でも、今度はダメだ。
もしも、地底人である彼らが実は人に擬態した魔物だった場合、地底人に連れられて行く先が罠である可能性が高い。
兄貴には裕理が居る。いや、裕理には父親である兄貴が必要だ。兄貴は死んじゃダメな人だ。
「俺が行く。兄貴は残れ。俺が、行くから」
俺はぽよん君をしっかりと抱きしめて、宣言した。
大島氏が俺の右肩をポンポンと叩いた。ぽよん君が俺の腕の中から細長く伸ばした腕で俺の左肩をポンポンと叩いた。
兄貴をそれを見て笑っていたが、ほんの少し誇らしげな顔もしていた気がする。
ちょっとした準備の後に俺らは出発した。
遺跡地下2階の、ボス部屋だと思っていた石版の奥、何もない場所だが、マントを着て杖を持ったヒョロイ冒険者(きっと魔法使いだな)が懐から出した石を地面に置くと、まさに漫画チックな魔法陣みたいな物が現れた。
地球で見たそう言う情報(漫画とか小説の元ネタ)って、絶対に異世界へ行って戻って来た人の元ネタだと思う。ってくらい、イメージどおりだ。
そして冒険者の人が次々に魔法陣の中へ入り消えて行く。続いて自衛隊が、そして大島氏と俺が。
出た先も同じ感じの遺跡の中。
そりゃそうだ。地下2階から地下10階へ来ただけだからな。俺の後ろから最後に石を持った魔法使いが降りて来た。
石を置きっぱなしにすると、魔法陣が開きっぱなしでうっかり魔物が降りて来てしまう事があるそうだ。
なので移動石(俺は転移石と呼ぶぜ)の持ち主は登録が必要で、誰でも持っていいものではないらしい。と言っても、都市や街によってルールはまちまちだったりするらしい。
俺らはその後、彼らの先導で迷路のような通路を進んでいく。
都市や街、村を繋ぐ通路は魔物の侵入を防ぐ工夫はされているが、それも所によりなので完全に安全ではないそうだ。
それでも途中、魔物に襲われる事なく、2時間ほど歩き街へ着いた。俺はへとへとだ。
宿に案内されて(いやマジゲームかアニメかよ)、俺はそこで休憩。自衛官がひとり一緒に残ってくれた。
大島氏と自衛隊は冒険者達とどこぞへ。
この街はまだ通過地点だそうだ。
冒険者が活動していた都市はここから6時間ほど歩いた先だそうだ。多分、俺の休憩で寄ってくれたらしい。
ここで、移動の乗り物を借りると言っていた。
あれかな……。馬とか馬車とか、乗って走る鳥とか?まさか自動車……なわけないよな。
俺はベッドに寝転がってふくらはぎをモミモミ。
乗馬は出来ない。チョコボンなんて乗った事ない。馬車だったらいいなぁ。徒歩6時間……歩ける気がしない。だって引きニートだぞ?押入れなら6時間入っているのは全然問題ない。
トイレママからトイレ借りてくればよかった。(借りれないです)
馬車の代わりにトイレを引いてくれないかな。トイレならこもっていられる。
なんて益体もないことを考えていたら大島氏らが戻ってきた。
食糧と足を調達したので出発だそうだ。
足……。宿の前には馬でもチョコボンでもなく、ラクダサイズの爬虫類?恐竜?が居た。
あー……、そっち系かぁ。
こいつらは結構な力持ちだそうで、前に冒険者が座り操縦、その後ろに2人座る。一体で3人乗りだ。
勿論俺は冒険者と自衛官に挟まれた真ん中だ。
跨ると言うより、座席のような物が取り付けられていて、座るといった感じだ。
「慣れないと尻が痛くなるそうですので」
自衛官がそう言いながら畳んだ布を差し出して来たので受け取り、座布団のように敷いた。
走り出すと結構なスピードで上下というより前後に揺れる感じだ。ちょっと楽しい。
ちょっと楽しかった、最初の30分は。その後は飽きた。そして眠くなった。後ろから寄りかかっていいですよと声がかかり、ちょっと寝てしまった。腰に安全ベルトが無ければ落ちてたとこだ。
大島氏は、そんな場所でよく眠れるな、と呆れていた。
徒歩6時間ではなくダイソナーで6時間か。途中一回のトイレ休憩を挟み、都市へと到着した。




