110話 顛末
-----(清見視点)-----
美人自衛官が俺に近づいてくる。青い目だ。欧米人か!いや知らんが。
俺……、日本語しか話せないぞ?兄貴、3佐、通訳頼むぅ。
「それ、凄いわ。どうやったのですか?」
ソレッス ゴイわ ドゥイッツディス?
ドゥイッツディス……どう、ゆー、いみーん?
「落ち着け、落ち着け清見、日本語だっ!」
え、あ?日本語?そうか、日本の自衛隊に居たんだもんな。日本語出来るよな。
何だろう、一瞬、知らない言語に聞こえちゃったぜ、俺。
ええと、それどうやった、だっけ?花笠の被り方かな?
「ええと、これは紐が付いていて顎で結んでいます」
どやっ!とばかりに顎で結んだ紐を見せた。が頭を後ろに反らせた事で頭上のぽよん君が落ちた。
美人自衛官が後ろに飛び退いた。
「あ、ごめんごめん。ぽよん君」
ぽよん君が俺の頭目掛けてジャンプした。
冒険者のコスプレチームが何故か後ろに飛び退き、剣を構えていた。
「大丈夫です。大丈夫ですから」
3佐がコスプレ自衛官達を落ち着かせるように宥めている。
敬語?部下じゃないないのか?海外から預かっている研修生とかだろうか。
俺の不審そうな視線に気がついた3佐が俺に向かい紹介をした。
「彼らは、この世界の住人で冒険者をしておられるそうだ」
ええと、ええと?
この世界の住人???
冒険者?本物の冒険者?マジもんの冒険者?
えっ、この世界のじゅうにぃぃぃんんん???
じゅ、じゅうにんって何だっけ? 10人。12ん。自由人?
大島氏が俺の肩を叩いた。
「うん、気持ちはわかる。俺らもさっきまでそっち側で驚いていたからな」
巨大生物がいるこの謎世界で、いきなり冒険者?
人間が俺たちと似たサイズだけでも驚きなのに、いや、人間が居た事に驚いた。
でも俺達と同じ構造と限らないよな。いや、だから、ええと?
「落ち着け、清見」
「冒険者と言うのは、我々が勝手な認識で言語が変換されていると思います」
「あ、そうだ、そう。日本語……」
一瞬、日本語っぽくない気がしたのは翻訳の微妙なズレだそうだ。
「身体の構造云々はともかく、我らがこの世界で空気を吸って生きている、この世界の獣の肉を食べている、それらだけでもかなり似た構造なのではと思われます」
「清みん、冒険者な、それ、聞く人によっては探索者にも聞こえるらしい。まぁ似たもんっしょ」
「え、じゃあ、モグラ怪人は? 冒険者の皆さんはモグラ怪人を追ってきたのか?」
「モグラ怪人?」
「清見、なんだよ、それ……」
「だって地底人が出たって……」
「あ、それ、伝言ゲームと一緒。地下3階以下で地球人ではない人型との邂逅があった。相手が不明のため、避難を呼びかけた、らしい」
その後、兄貴や大島氏と一緒に『冒険者』さんらと自衛隊の話を聞いた。
驚きの連続だった。
この遺跡、俺たちが遺跡と呼んでいたここは、過去に踏破されたダンジョンだそうだ。(ダンジョンだって!やっぱダンジョンだったんだ)
通常、踏破されたダンジョンにはもう魔物は発生しない。
ただし、地上に近い浅い階層には、たまに地上から床石をぶち破って落ちてくるそうだ。
そう、この世界は、地上こそ魔物で溢れているそうだ。
そしてダンジョンの地下へ落ちた魔物はその重さ故に戻れないうえに命が終わるまでそこにいるそうだ。
強い魔物はたまに落ちてくる他の魔物を食べて命を繋いでいる。しかも魔力(俺らにはイマイチ理解不能だが)が高い魔物は魔力を命へと変換して存えるそうだ。
んー。つまりファンタジーゲームで言うところの、MPをHPへ変換するって事か?
この世界は地下で繋がった都市がある。
と言うのも、地上の生き物はあまりに強大で強い。そこで普通の人々が生きていくのはかなり難しいのだそうだ。
いつからか、この世界の人々は地下へ地下へと移動をして、今は地下都市が普通である。
地下で農作物も育つ。地下水も豊富で困らない。
「と言う事は、我々もその都市へ行く事は可能でしょうか? 出来れば受け入れていただければと思っているのですが」
3佐達自衛官が真剣な面持ちで冒険者さん達に迫る。
何だろう?自衛官に迫られながらも俺をチロチロと見る。俺、と言うか花笠を。
花笠……ほしいのだろうか?こっちの世界では珍しいのか?花笠を、プレゼントしたら受け入れてくれるだろうか?
「それは大丈夫だと思われますが、一旦持ち帰り、都市の◯◯機関へと……」
時々難しい言葉が、俺の変換能力に弾かれている。
3佐達は頷いているからちゃんと聞き取れているんだろうな。
あ、大島氏も。兄貴もか。いや、兄貴と大島氏は知ったかぶりだと思う。
この遺跡はミノタウルスが落ちた時に石段を壊したらしい。以前はあそこは地下と地上を繋ぐ石段があったそうだ。おそらくミノが落ちた後這いあがろうと石段や壁を壊しつつ何とか地下2階までは来たんだろうという事だった。
ん?地下2階からなら、普通に地上まで階段あったよな?
遺跡は何重かのシールドにより地下都市を守る機能がある。
地下都市を繋げる通路は地下10階より下にある場合が多い。外から落ちて来たものが入れないように何重かのシールドがかかっているそうだ。
落ちた勢いで破れたシールドも時間が経てば修復される。おそらく地下2階まで登って来た時にはシールドが塞がってしまったのだろうと。
「もしも受け入れを断られたとしても、もっと地下へと降りた方が安全ですね」
「しかし階段は壊されているんだろ?どうやって皆を降ろすんだ」
「あれ? そう言えば冒険者さん達はどうやって上がってきたんですか?」
「私たちは◯◯◯から◯◯を通って移動して来ました」
俺の自動翻訳が翻訳してくれません。アップデートが必要ですか?
ニートには理解不能な言語か……。としょぼくれていた俺に気がついたら兄貴がコソっと教えてくれた。
「ほら、ステータスが見れる石版があっただろ? あそこは階層の移動……移動ポータル?があるんだと。気が付かなかった」
「ええ、全く気がつきませんでした。我々もあそこは隅まで探索したつもりでしたが、移動……石?と言う物を持っていないと作動しないそうです。我々は持っておりませんから。はっはっは」
3佐が豪快に笑い飛ばした。
「え、じゃあ、その移動石ってのがあれば地下に降りられるんだ? その石はどうやって入手出来るんだ?」
ゲームだとモンスターからのドロップ、店売りとかだよな?
今この避難所には500人くらいいる。もしもドロップだったら大変だな。それもたまにしか落とさないドロップだったりメチャ強い敵からのドロップだったら、無理だ。




