11話 スライムは魔物
向こうから高校生トリオと小学生コンビが走ってくるのが見えた。
「おいっ! ここだ、しぃぃっ」
俺を見つけた5人が一瞬止まった。俺が人差し指を口に立てて静かにと合図をしてから地面を指差したからだ。
静かに移動しろ。
杏と紬は声を出さずに泣きながら、静かに足を進める。その後ろで高校生トリオも周りの地面を抜かりなくチェックしながら進んでくる。
「ふわぁぁぁん、ふぅぅふぅぅ」
「うえっうえっ」
杏と紬が俺の腹にぶつかるように抱きつき、声を殺して泣き続けた。
息を吸え、呼吸困難になるぞ?
「ほら、もう大丈夫だ。吸ってー吐いてー吸ってー吐いてー。で、どうした?」
後ろから追いついたドド達に聞く。
まだ2時間経ってない、それなのにこれって事は何かがあったに違いない。
「それが、ちょっと前にさっき逃げた人達が戻って来て」
「戻ってきただけなら別に良かったんだけど、アイツら大量のスライム引いて戻ってきた」
「それで、私たちが登ってた岩盤石に気がついて、登ってきたのよ。あの広さだもん、10人登ればいっぱいなのに無理に上るから押し合いになって、それにスライムも飛んでくるし」
「そんで俺らあそこから降りて大島さんが行った方へ向かおうって」
「飛び上がったスライムが上まで上がったみたいでそこでも大混乱起きるし、うちらの後を大声だして追いかけてくるヤツいるし!もうヤダ!」
「スライムにやられたフリしてまいた」
おお、凄いな、ナイスだドドクサ。
しかしこの場所だと追いつかれるかもしれないな。少し進むか。ずっと強気の杏の方がもうグズグスで泣き止まない。杏を背負って、紬は倉田と手を繋いでもらう。そして静かに静かに移動する。
「忍者と言うよりドロボー歩きだな」
「何それ」
「抜き足差し足忍び足って、今時は言わないのか。いや俺の世代も言わないか。職場のおっさんがサボる時に言ってた」
「言わねーよ、知らない」
そう言われると俺もよくわからんな。抜く足とか差す足とかどんな足だよ。
さっきの少しだけ植物のあった場所まで移動した。休める場所があるわけではないが、休憩を兼ねて俺のスキルを調べようと思った。
ドドクサは俺のスキル『完全防御』の話を倉田から聞いたらしく知っていた。
「ずりぃな、ずっと秘密にしてたなんて」
「完全って付くくらいだから絶対的な防御なんだろうな。でも俺なら絶対防御ってネーミングの方がいいと思う。絶対防御の方がSランクの冒険者っぽいな」
すまんな。絶対でなくて。それと冒険者でもないからな。
「もっとカッコ悪くなるが完全防御にカッコ箱型が付く」
「え、何それ」
「完全防御(箱型)? (微)じゃなくて?」
「完全だからレベルアップないんじゃない? でも箱型って何だろう?」
「うん、それを調べたいから協力してくれ」
そうして、攻撃を試すためまずは石を軽く投げてもらった。
石は、自分よりも向こう側で跳ね返った。自分では触れないが壁があるのだろうか?
やはり自分の身体を包む防御ではなく、『箱型』なのかもしれない。スライムに気をつけながら砂を集めて俺に向かって投げてもらう。
砂はパラパラと俺の防御を明らかにした。
電話ボックスタイプの箱型か?
あ、今時は電話ボックスを知ってるやつは少ないか? 俺の職場の最寄り駅の前にあったんだ。珍しいよな。誰かが使っているのは見た事がない。
前後左右から砂を投げてもらう。
高さ2m、前後左右直径1.5m……はない、1.2か1.3mくらいか、砂がぶつかり落ちる。両手を広げるとちょいはみ出る。
杏が俺の近くにくると、杏にも砂はかからない。つまり本人以外でもこの箱の範囲なら防御の対象になるのか。
問題は防御の強さだ。小石も弾く。小宮に全力で石を投げてもらった。弾く。
まぁ、そうだ。何しろ完全防御だもんな。これは、スライムに試してみたい。
探すとちょっと遠いがスライムはいる。恐る恐る近づいてみる。箱の角にスライムが押されていく。スライムからの攻撃はない。
思い切ってジャンプしてスライムに乗ってみた。スライムはペタンコになった。だが倒せはしない。砂に潜りながら移動していった。
スライムを倒す事は出来ないが、スライムがウヨウヨいるなかスイスイと移動可能だ
くっつけば余裕で4、5人入れるスペースがある。
密着した状態で進んでいく。スライムに攻撃されないだけリラックス出来る。
草が一面に生えている地にやってくると、やがてスライムは見かけなくなった。
荒地では見なかった虫や小動物を目にするようになった。




