109話 地底人
-----(清見視点)-----
俺はまた、逃げ込んだ押入れの中で膝を抱えているだけ。
「清見さん、抱えているのは膝じゃなくて裕理くんですよ」
「そうよぉ、清見くんは今、裕理くんを守っているの。出来る事は人それぞれでしょ? 私達だってここに隠れているし」
「そうだよー。俺らだって攻撃スキルあるけどまだレベル低いから、今は隠れさせてもらってる」
「だよな、俺らの活躍は今じゃない」
ドドクサめ、いい事を言う。うん、俺も今は無理でもいつかきっと活躍するぞ!(たぶんだが)
そういえば兄貴、戻ってこないな。保育園と病院へ知らせに行ったはず。
「兄貴……」
「橘さんは遺跡の人たちを病院へ誘導してた。そっちに逃げ込んだんじゃないかな」
そっか、無事に逃げ込んでくれてる事を祈る。
皆が押し黙ったその瞬間、押入れの襖が突然外から開けられた!
ガラっ!
キャッ
女性の小さな叫び声と同時に俺は裕理を抱え込んで襖に背を向けた。
「あぁ、居た居た。清見」
兄貴……?
びっくりした、こっちに避難に来たのか。押入れの壁にへばりついていた俺らは、兄貴の声に顔をあげた。
「兄貴、無事だったか」
「よかった橘さん。清見くんが心配してましたよ」
「あ、すまんすまん。スマホが使えないって不便だよなぁ」
「橘さん、下はいっぱいだから上にどうぞ?」
押入れの上段からクサが、ボリボリと頭をかく兄貴に声をかけた。
「違うんだ。清見を呼びにきた。鮎川さん、裕理を少しの間預かっていただけますか?」
俺も……最前線で戦う時が、来てしまったのか。思ったより早かった……。
震える手で裕理を鮎川さんへと手渡す。
「きぃたんきぃたん、お手てぶるぶるねぇ」
裕理くぅん、俺のなけなしの勇気に水をささないでぇ。
「清見さん……」
「清見くん」
「清見兄貴!」
クサ、秀は最近俺を清見兄貴と呼ぶ。ドドもだ。うん、兄貴として頑張らなくては!見せてやるぜ、俺のスキルを!
スキル仏間……はおいておいて、スキル回復も最近は修繕の腕が上がった。が、地底人には使えないな。前線の隊員の修繕くらいか。
あ。そうだった。俺には強い味方のぽよん君が居たぁぁ!
「わかった! 兄貴、一緒に行くぜ。行くぞ、ぽよん君! あ、あれ? ぽよんくん、どこいった? ぽよんくーん!」
ドピュンっ!
ぽよん君が仏間の庭から凄い勢いで俺の胸へと飛び込んで来た。俺の胸にぶつかる寸前に勢いを殺したようで、それほどの衝撃は受けなかった。
あの勢いだと、兄貴が障子を開けっぱなしにしてなかったら、障子に穴が空いてたな。
それだけでなく、俺は押入れの奥へと弾き飛ばされていたところだ。これがドッヂボールなら、俺は当てられて外野になるところだ。
ぽよん君は俺の腕の中から抜けて肩に上がった。俺の右肩左肩を行ったり来たりしている。あ、そうか。
俺は仏壇の前に置き去りにしてあった花笠(幼児サイズ)を頭に乗せて落ちないように顎で紐を縛る。
ぽよん君はその花笠の上に乗るのが好きだ。
裕理くんは俺を見て両手をパチパチとしている。ドドクサコンビは少し残念そうな顔だった。
女子やママさんらは、なんだろう、温い視線で一応応援をしてくれた。
「ん? 何処かに戦にでも行くのか?」
いや、呼びに来たあんたがそれ言う?
俺は遺跡の地下本部まで連れて行かれた。
そうか、前線はもう崩されてここまで下がってきたのか。
中に入ると、まず大島氏が目に入った。良かった。無事だったんだ。
大島氏は俺を見て一瞬吹き出し……かけて、なんとか息を整えていた。
あ、今日の俺、スウェットは洗濯中で、羽織りと下は曾祖父さんのももひきだった!
恥ずかしい。でも、遺跡じゃみんな似た服装じゃん。自衛官達だって非番(?)の日はこれと変わらないぞ?
大島氏は口を一文字に結んでいるが肩がクツクツ動いている。
その大島氏の後ろにはなんかカッコイイ自衛官のグループがいた。
宝箱から出たのだろうか?マントや鎧?を着ている。俺が治した剣以外にも、槍とか杖も持っている。
新しい宝箱を発見したのか?
彼らはまるでファンタジー小説の冒険者のようだ。
アニメと違うと思ったのは、女性がビキニアーマーではなく、男性同様に着込んでいた。うん、小説でもそっち系はあるよな。露出を抑えた系。
いや、残念とか思ってないからな!ちょっとだけ思ったけどぉ。
それはともかく、その女性自衛官が金髪の毛を天辺で縛っていて、ビキニアーマーとか似合いそうな美人だったからだ。
って、あれ?
自衛隊に外国人も居たんだ、知らなかった。まぁ俺はそこまで自衛官と親しくしていないからな。
ついガン見をしてしまったからか、向こうも俺をガン見している。ひぃじぃのももひきが恥ずかしいぞ?
けど、美人自衛官は俺のももひきではなく、頭を見ていた。あ、花笠か。
外国人には珍しいのかな?花笠。最近は保育園でも他の人達も結構被ってるよな?




