108話 持ってきた
-----(清見視点)-----
兄貴が本部から帰ってきた。
持って帰って来たのは情報ではなく、残りの剣2本だった。
「いやぁ、お前が修繕した剣な、ものすごく斬れ味が良かったぞ。あれ、鞘がないと怖いな。そんで残り2本もお願いしたいって」
あ、そうですか。
兄貴にさっき考えた話をした。この世界の人間の話だ。それを聞いた兄貴はもう一度本部へ聞きに行った。俺は兄貴が戻るまで剣の修復を行う。
押入れの中で一本、仏間の外に出て地面で一本。
やはり地面での方がスキルの使い勝手良いように感じる。気のせいかも知れないが。
飛んでいった兄貴が飛んで帰ってきた。(飛んで、は比喩だ)
「大変だ! 清見! 大変だよ! 地底人に遭遇した!」
「ええっ! どこでぇ? 大丈夫だったのか!」
「あ、俺じゃなくて自衛隊が遺跡の地下2階で遭遇したそうだ! 今あっちじゃ大騒ぎだ。出来るだけ建物内に隠れるように言われた。保育園と病院に行ってくる」
「じゃあ俺は飛行機とトイレ風呂キッチンにいってくる」
「頼む、お前もその後は仏間に隠れてろ。裕理も一緒に」
「わかった」
外でもザワザワと騒めきが広がっている。
地底人……?
遺跡の魔物か?
遺跡ではミノタウルス(顔コング)以外の魔物はいままで出てこなかった。
地底人が一匹程度なら自衛隊もそこまで騒がないだろう。という事はかなりの数の地底人が現れたのだろうか? 大島氏は今、遺跡か?ドドやクサは何処だ?
俺はこの辺りを回り、指示を伝えていく。
地底人は遺跡の地上、ここらまで上がって来るだろうか。空間スキルの建物の中に入ってくるだろうか?
俺は裕理を連れて仏間へと戻った。途中で遺跡から出てきた高校生トリオにあったので一緒に連れていった。
仏間では何組かの親子が生活している。鮎川さんも居た。
「清見くん、怪獣が出たって聞いたけど」
「地球防衛隊がいるから大丈夫よね?」
子供を抱えたママさんのらが俺を縋るように見る。
地球防衛隊?……ああ、自衛隊の事か。子供が絵本を持っていた。保育園から借りてきたのか。
「でも、防衛隊だけじゃ勝てないんじゃない? ウルソラマンもいないと!」
「清見くん! 誰かウルソラマンに変身出来るのよね?」
えぇぇ…………変身スキルなんて聞いた事ないぞ?俺が知らないだけかもだが。
「いやぁ、聞いた事ないです」
そんな必死な目で俺を見られても聞いた事はない。誰かスキルで『変身ウルソラマン』とか表示あったのだろうか?追加の宝箱箱にレア石が入ってた?
「変身したソレ……を、どなたか見ました?」
「見てないわ」
「私も見てない。けど怪獣が現れたのなら……ねっ?」
ねっと相槌を求められても。
それよりも押入れへの避難を勧めた。子供は狭い所が大好きだから喜んでいた。
俺の仕事部屋になっている押入れは修繕前の衣類でごった返していたので、その隣の押入れの中の物を出してそこに入る。
皆同じとこに入ろうとしたので幾つかに分かれて入った。
俺が入った押入れの上段にはドドとクサが、俺と裕理と同じスペースには鮎川さんと倉田女子だ。
押入れの上からドドが話しかけてきた。
「清見さん、何があったんですか?」
「俺ら、遺跡の地下1に居たら突然、地上に上がって避難するように言われて」
「そう言えば私もキッチンに来た清見くんに空間に隠れているように言われたのよね。詳しく聞く間もなく走っていっちゃうし」
「俺も詳しくは聞いてないです。遺跡の本部から戻った兄貴が……。その…………地底人が出たって」
「地底人!!!」
上の段からクサの大きな声がした。
「遺跡内に魔物が出たって事かぁ。宝箱が復活したのもそれでかな。魔物も宝箱も復活するシステムなんだ……」
「って事はミノタウルスも復活したんだ?」
いつのまにか顔コングを皆はミノタウルスと呼んでいる。それとも俺が知らない間にミノタウルスも出たのか?
「あれっ? でも、ボスを倒す前にお宝ゲット? おかしくね?」
うん、それは思う。普通は宝箱よりボスの方が先だよな?
それに……。
「自衛隊は、あ、兄貴の話だけど、自衛隊は地底人が出たって言ってたって。ミノとは言ってなかった」
「って事はボスは変わるシステムですかね?」
何、そのシステム。
と言うかミノタウルスはボスっぽいけど、地底人って雑魚っぽくないか?
「地底人って人型よね?」
「ミノタウルスも人型っていえば人型ですよ。大きさがバグってるけど……」
「じゃあ今回出たのは小型ボスなのかしら」
うーん、地底人で思い浮かぶのは、ネズミ顔……いや、モグラか。確かに小さめな印象だしボスと言うイメージではない。
「小さくてもさ、自衛隊が慌てるくらいだから、もしかすると数が多いのかもしれない」
大量の人型モグラか。
大島氏はきっと最前線で戦っているんだろうな。俺はまた押入れで隠れているだけ。
俺には攻撃スキルも武器もない。これ……言い訳だろうか。




