106話 家族
-----(清見視点)-----
大量の衣服(下着含む)の修繕を行ううちに経験値がだいぶたまり、回復は中レベルになった。
弱レベルと何が違うかと言うと、回復にかかる時間が格段に短縮された。
そして、やはり俺は『回復』を人に使うのは怖い。
それと、何でも回復出来るわけではない。やはりスキルを使う者の知識にもよるのだろうか?
機械系を回復出来ないのは、俺がそれに対しての知識を持っていないからだろう。
例えば壊れたスマホ。
ヒビが入ったスマホの画面のヒビは治せた。しかしスマホ自体が壊れた時は治せなかった。スマホの中のイメージがわかないからだろう。
俺に回復スキルは宝の持ち腐れだな。だって俺は引きニートだから。
自衛隊員達はメキメキとスキルのレベルを上げている。避難民の中でもスキル持ちは頑張っているらしい。
高校生トリオ、しかも倉田は女の子にも関わらず頑張っている。杏と紬なんか小学生にも関わらず、自衛隊のおっさん達について行ってるらしい。大島氏は相変わらず最前線だ。
俺は押入れで修繕をしてる。大島氏と同じ歳なのに大きく差が付いてるなぁ。
それでも羨ましいよりもホッとする気持ちの方が大きい。魔物と戦うのはどう考えても無理だ。
「清見ー、飯持ってきたぞ。裕理も一緒だ。出てこい」
兄貴に呼ばれて修繕をやめて押入れから出た。
「おう、ご苦労様だな」
「あ、今日はギャレー飯の日なんだ」
ギャレー飯、飛行機のギャレーに毎朝復活している機内食だ。軽食セット、これが意外と人気がある。だが数に限りがあるので配給制になっている。
裕理は最近、頑張って自分で食べようとする。かなりこぼしてはいるが、器の中がカラになると、ドヤ顔をするのが可愛い。
兄貴が一生懸命拾って食っている。
「そういえば兄貴、スキルどう? レベル上がってるの?」
「おう、今は弱に入ったとこだ。俺は若くもないし戦闘職でもないからな、ペースは遅いがそれでも着々と上げてるぞ?」
「そっか。無理すんなよ?」
「おう。無理はしない。お前と裕理が居るからな。絶対に死なない程度に頑張るさ。お前も無理はするな。お前と裕理は俺が守るからゆったりと生きろよ?」
引きニートになった時、世の中の全ての人間が信じられなくて、両親がかけてくれる言葉も邪魔で仕方なかった。
自分だけの自分しかいない世界に行きたいと思った。
でもそんなのは嘘だ。
周りに甘えられる人がいたから『ひとりで居たい』とか思えたんだ。
本当にひとりだったら、そんな事をいっていられないはずだ。
生活を支えてくれる両親が居て、いざとなったら助けてくれると俺はわかっていた。
今更だが、大学時代も会社員時代も俺を攻撃するやつばかりではなかったかもしれない。
声をかけてくれたやつはいた、俺が自分から遠ざかったんだ。嫌なヤツに囲まれて攻撃されるたびに自分を『被害者』に仕立て上げた。俺は可哀想な被害者だった。被害者でないとならなかった。
「ふざけんなよっ!」と大声をあげればよかった。ぶん殴ってもよかった。それで大きく変わったかもしれない。
今だからわかる、『人』の大切さ。
大学の友人……連絡を無視しているうちに連絡がこなくなった。
会社の先輩、相談にのると言ってくれたのに無視をした。段々と声かけてこなくなった。
どちらも俺が拒否をした。距離をとられて当たり前だ。彼らは今回どうしだろう。こっちの世界に来たのだろうか?
こっちの世界で知り合ったママさん達や大島氏も、きっと俺が思ってる以上に俺は面倒をかけているんだろうな。
それに、兄貴と裕理。
絶対に絶対になくしたくない。両親が亡くなりあの時した後悔を2度としたくない。
と、決意をしてもヘナチョコの俺が出来る事は限られている。
「うん。あんがと。でも、俺と裕理も兄貴を守る。後方で守る。なっ、裕理」
「あいー!」
「そうだ、清見、聞いたか? 遺跡からまた宝箱が出たそうだ」
えっ?そうなんだ?
あれから魔物も宝も出ないから、『遺跡=ダンジョン』説は消えかけていると思った。
「宝箱だけ? 魔物は? 顔コングとか」
「いや、宝箱だけ」
どうなってるんだ?
遺跡がダンジョンではないのに、宝箱だけ復活するのか? やはりダンジョンなのでは?
としたら、先に宝箱をゲットしたが、もしかして魔物やボスは遅れて湧いてくるんじゃないか?
「なぁ、兄貴。まずくない? 宝箱があったって事はもう一回ボスも湧くんじゃないか?」
「うーん、でもさ。ボスを倒さずに宝をゲットして今更ボスが湧くか?」
『しまった!寝坊した!』と、慌てるボスを想像した。
「遺跡内って避難民達は今けっこう勝手に過ごしてるよな。少しの間でも遺跡の外に避難した方がよくないか?」
「ああまぁその辺は自衛隊も考えてるだろう。お前も裕理も暫くは保育園かこの仏間かのどちらかにしておけよ。あまり外で遊ぶな」
「うん」
「橘さん、清見さん、居らっしゃいますか」
外から声がかかり障子を開けた。
自衛隊員から呼ばれて遺跡内へ行く事になった。裕理を保育園に預けてから遺跡内の自衛隊の作戦本部へと案内された。




