105話 人気スキル
-----(清見視点)-----
俺はキッチンママさんのところのダイニングで女性に囲まれていた。
ここに味方(男)はいない。
トイレママさんとこの郁未君(男児)も今は保育園だ。いや、2歳児が居ても味方としてはどうだろう。
スウェットの上半身は剥ぎ取られた。
女性陣による何かの検査が行われている。俺は捕まった密入国者のように大人しくしているしかない。
下半身のスウェットは脱がされていないが、結構際どい所まで下されてパンツを弄られている。もう、これってパワハラ?モラハラ?セクハラ?
俺、引きニートなのに、ハラスメントに合うなんて思わなかった。押入れに静かに棲息してるだけなのに。ぐすん。
俺から回復スキルの話を聞いたママさん達は奥で作戦会議を始めた。
コーヒーを出されて暫し待たされたあと、会議の結論が出たのか全員が俺の前に正座をした。
「清見くん、お願いがあります」
聞くの怖いんですけど……。
「清見くんのスキルで私達を、いえ、避難民全員を救ってください」
「無理です」
即答した。
わからんけどイエスと言ってはいけない気がした。
すると正座をしたママさんらがニジニジと寄ってきた。あぁ、断れない、俺に『スキル気力』があれば……。
「……ゎかり、ました」
そう答えるしかないじゃないか。
ママさん達は立ち上がって大喜びをしていた。お互いに手を叩き合ったり飛び上がったりしていた。
あの、俺は、何をさせられるのでしょう?
聞いてから、最大に後悔した。無理無理無理無理。
セクハラがひっくり返って逆セクハラ、いや、無理矢理セクハラ?自分でも何を言ってるのかわからなくなった。
ママさん達の頼み事は、ママさん達の下着、しいては避難民全員の下着の『回復』をしてほしいとの事だった。
気持ちはわかる。皆、この世界へは身ひとつで来たから着替えの下着などない。
それに、俺もスウェットとパンツが新しくなってもの凄くリフレッシュした気持ちになれた。
うん、気持ちはわかる。男の下着は受けれる。が、女性のし〜たぁぎぃ〜?
未婚引きニート彼女居ない歴んー年の俺が?女性の下着に触れて回復をかける?
むぅぅぅぅりぃぃぃぃ。
「だいたい女性側だって嫌でしょう。見ず知らずの男に下着触られるなんて。てかそれ、俺が変態じゃん」
「あ、じゃあさ、希望者だけだったらどう?」
「うんうん。念書も書くわ。絶対に訴えないって」
ぎゃあああ、下着ドロとして訴えられるとこだったよ、俺。
「見ず知らずじゃないし。清見くんを知らない人居ないんじゃない?」
何で!
何で?
引いてるニートなのに?
インフルエンサーでもアイドルでもない27歳引きニートなのにぃ。
「とりあえず、一回やってみない?」
にっこりと笑う鮎川さん。なんかその笑顔が詐欺っぽいんですが?
「直接触れるのが嫌なら洗濯ネットにいれたらどうかな? うちのお風呂場に干してあったネットがあるから」
風呂ママさんが意気揚々と言い出す。
持ってくるね、と飛んで出ていった。
「お兄さん、諦めなよ」
女子高生の倉田さんが俺のかたをポンと叩いた。
女子高生なら男に下着を触られるのなんてきっと死んでも嫌なはず。
「嬉しいなぁ、ひさしぶりに新しく下着」
ちょっ、何で!
「洗って入れてきたわぁ」
風呂ママさんが戻ってきたら。アミアミの袋に多分下着が入った物を差し出してきた。
皆が興味津々で俺を囲って見つめている。
もう引き返せないのか。
俺は引きニートから変態引きニートへとランクアップを余儀なくされる。
諦めてネットに手を乗せて唱えた。
「……かいふく、回復、回復、(繰り返し)」
ネットが淡く光るまで唱えた。
ママさん達はソレを素早く持ってキッチンの奥へといった。
「やだ! 新品みたい! 買った時同然よこれ」
「ねえ、洗濯ネットまで綺麗になってる」
「私、下着洗ってくる! 次やらせて!」
「私も洗ってくる!」
ママさん達は一斉にどこかへ居なくなった。ええと、俺は?ここで待っていないといけない?
戻ってきたママさんらは手に濡れた何かを持っている。うん、下着だよね。わかってる。
そしてママさん達から兄貴や自衛隊にも話がまわり、俺はとうとう世間で知られた変態引きニートになったのだった。
ではなく、洗濯屋のごとく、布に囲まれる事となった。
「洗濯屋じゃないだろ。みんなちゃんと洗ってくるんだから」
兄貴に怒られた。
「そうだよ、清みん。正しくは修繕屋、かな? 物を正しい形に戻す。回復スキルって有用ですね、橘さん」
「そうだな。他に取得したやついないのかね」
遺跡の地下の石版で全員のスキルを調べた自衛隊曰く、今のところ俺だけみたいなんだよな。『回復』スキル持ちは。
女性のスキル持ちが出ればいいのに。
男性用は洗濯ネットには入れず、直に渡される。行方不明にならないように皆名前を書いている。




