101話 宝の山
-----(自衛官視点)-----
最近、遺跡地下2階の探索が始まった。
今のところ、地上の森のように魔物が出る事はない。以前に行方不明になった自衛官は、あのボス部屋の魔物にやられたのだろうか。
それでも、もしもと言う思いで探索は続く。死んだとしても何か遺品が落ちているのではないか、と。
もちろん、探索だけが目的ではない。地下の地図を作成している。
地下1階、あの大穴の周りは、小部屋や通路があるのだがどれも直ぐに行き止まりになっていて進めない。崩れて進めないのだ。
それに比べて地下2階は、狭い通路の先の大広場、そこに石版、そして周りの壁には沢山の通路が伸びていた。
まだひとつひとつゆっくりと進んでいる状態なのだが、かなり広い空間のようだ。
避難民が暮らしている遺跡1階(実際には地面の下だが)もかなり広いので、地下2階もそれと同じくらいかもしくはそれ以上に広くも思える。しかし地下1階は塞がっている場所が多い。
実は中央の大穴はもっと下まで続いているのだが、そこに降りられる道具も明かりもないので放置している状態だそうだ。
まずは地下2階部分。魔物が居ないという情報も今後の役に立つだろう。
そんな感じで地図を作りながら移動をしていると、行き止まりに見えた通路の先が右へと曲がりちょっとした広場になっていた。
通路はそこで行き止まりなのだが、その部屋の奥で木箱が発見された。
この洞窟で何かを発見するのは初めてだ。
この遺跡自体でも石壁や瓦礫以外では初めての発見だ。
木箱。
一応、ミミックと言う宝箱に擬態する魔物かもしれないので、迂闊に近寄ったりはしない。
一名が戻り、隊長へと知らせに走った。
直ぐに隊長がやってきた。大島氏と清見君を同行していた。
大島氏のスキル内に入った隊長が、木の箱を棒で突いたり横倒しにするが、箱は動くことはなく箱のままだ。
隊長は次に清見君に何かを伝えて、清見君が頷いた。
「箱だけ食べてくれる?」
どうやら清見君のスライムの手を借りるようだ。
キュキュ。もっもっも。
スライムが箱を食べている途中で中から石のような物がザザっと流れ出てきた。
多少のサイズの違いはあるがひと口饅頭サイズのガラス玉のようだ。ぱっと見であるが、殆どがグレーで、深緑が幾つかあるように見えた。
そのガラス玉は特に魔物ではないようだ。
隊長がひとつ手に取ってみた。表面はツルツルの濁ったガラスっぽい。形は楕円型の…………あれ?この形。
どこかで見覚えがある。しかも最近だ。
「あ、石版」
「ん?」
「石版に凹みがありました。ちょうどその石のサイズくらいだったかと……」
木箱はぽよんさんが食べたので、地面に落ちたそれらを仲間の隊員がささっと集めて袋に入れた。
そして俺ら一同は急遽石版へと戻った。
石版には凹みが5箇所。似た形だがサイズがバラバラで、ひと口饅頭サイズから大きなあんまんサイズまでだ。
隊長がその石を手に、石版の一番小さい凹んだ部分へ置いた。
隊長は一瞬目を見開いたが、直ぐにため息を吐き出して振り返った。
「岩本、お前確かNOスキルだったよな」
「はい。自分はスキル入手が出来ませんでした!」
「うん。よし、お前、これをここに差し込んでみろ」
隊長はガラス玉を岩本隊員へ渡した。岩本が石版の凹みに玉を差し込むと淡い光が岩本を包み込んだ。
「スキルを取得致しましたぁぁぁ!」
岩本が嬉々として叫び声をあげた。
どう言う事だ?
隊長が説明をした。
「あの箱に入っていたのは石でもガラス玉でもない。石版にセットするとスキルを入手出来る仕組みのようだ。ただし、既に入手済みの者には何も起こらない」
なるほど、隊長はスキル取得済みだったな。
「あ、俺やってみたい」
大島氏が手を挙げた。
「俺、防御オンリーじゃん? 攻撃スキル欲しいです。あ、でも自衛隊の人が優先かぁ。石、結構な数あったけど、スキル持ってない隊員全員にはいきわたらないか」
大島氏が直ぐに諦めて後ろへと下がった。
「臼井、石の数は?」
「はい、……しのごの……20……40、43あります」
「加藤、隊の中でスキル未取得は何名居る?」
「はい。52名であります」
「ふむ……」
仲間の半数はスキル未取得か。
「俺はまたでいいです。またどこかで発見したらで」
大島氏が引いた。そうだな、完全防御なんて後衛に見せかけた前衛スキルのようなもので、しかも超レアスキル。
現在、この団体で1番強いのは大島氏だよな。今更、物理攻撃、しかも微量を取得してもな。
「あ、あの、隊長! 自分は完全に後衛の物流部隊ですので、物流部隊10名を後に回していただければ、大島氏の分が出来るかと。大島氏は民間にもかかわらずいつも最前線で頑張っておられます」
「…………そうだな。大島さん。どうぞこれを」
隊長が差し出した石を受け取った大島氏は隊員達へと深く頭を下げた。
隊長が清見君を見た。清見君は慌てて頭を横に振った。これ以上前線に連れていかれてなるものか!という気概が伝わってくるな。
大島氏は石版の前に立ち、淡く光った。おめでとう。
その後、慌ただしく隊員達のスキル取得が始まったようだ。




