良いとこどり令嬢と見る目のない男達
※説明を略し過ぎた部分を加筆しました。
「モブリーナ、君はリリアーナ・フェレス子爵令嬢を知っているかい?」
聞いて来たのは兄の第七皇子のクリストフ。
黄金色の髪の毛に、麗しい青空の青を宿した瞳の、美麗なる皇子である。
私はふるふる、と首を横に振った。
誰だそれ。
「寡聞にして存じ上げませんが、有名な方なのですか?」
「いや、そういう訳ではないが……」
何かもにょもにょしてる。
何なんだろう?
じいっと見つめて言葉を待っていると、ややあってクリストフは訳を話した。
「評判の良い令嬢だし、君ほどじゃないにしても得難い人物のようだからこの国に留め置くためにも、僕に婚約の話が回って来たんだ。聖女様のお気に入りでもあるらしいしね」
「はーん」
思わずぴんときた。
私の変な相槌に、クリストフは苦笑いをする。
最初こそ丁寧に話したけれど、公的な話じゃないならいいや。
時々こうして、兄や姉から厄介事が持ち込まれる私は、転生者である。
年相応ではないため、天才児だと思われてる凡人。
権力と調査能力を持つ一般人。
「要するに、懸念事項があるからわたくしにも調べて欲しいって事ですね?」
「そうなんだ。一応僕の方でも調べてみたんだけど、噂以上のことはよく分からなくてね」
「じゃあまず、お兄様が手に入れた情報をお聞かせ願えますか?」
「分かった。じゃあ事の発端から……」
そう言って、クリストフが話し始めたのは、ある宴での出来事からだった。
リリアーナは可愛らしい令嬢で、低位貴族ながらも評判の良い令嬢らしい。
だが、その日の宴で婚約者である、エルマー・バルテン侯爵令息から二人の婚約についての話をと持ちかけたところ、リリアーナが倒れてしまったらしい。
よろけた彼女は机に頭を強かに打って、昏倒。
大事には至らなかったものの、医務室へ運ばれて治療を受けてから家に帰された。
その後、バルテン侯爵令息は各方面から責められて、立場をなくしているらしい。
「婚約破棄だ!とか解消だ!とか宣言されたのですか?」
「いや?そんな騒ぎにはなっていない。だが、婚約を考え直したい、という話だったらしいね。でもあくまでその場では内容に触れてはいなかったんだ」
「ふーむ」
では、主催者の体面を潰したという事でもないし、両家の話し合いの前に軽くジャブを打った程度なら、特に問題視される謂れはない。
なのに、何故責められたのか?
しかも、内容まで話していないのに倒れるって、演出臭くない?
「女性連れだったとか?」
「いや、その日はリリアーナ嬢ではなく、妹のエルゼ嬢を同行していたくらいで、特に問題は無いと思うのだが」
「同行は常に妹優先、とか?」
ほらよくありがちじゃん?
妹ばっかり優先してー!ってやつ。
一応、問題点は洗い出しておかないとね!
「いいや?彼女も最近まで婚約していたから、その宴までは普通にその婚約者が同行していた筈だよ」
ほう?
その辺りに事件の鍵がありそう。
「ちなみに、エルゼ嬢の婚約者は何処の何方で、どういった方ですの?」
「アイザック・フランツ伯爵令息だ。騎士として王城に勤務もしているよ。第一近衛大隊の小隊長だ」
「花形ではないですか」
「リリアーナ嬢は近衛隊でも人気の令嬢でね」
おっと?
何で子爵令嬢が近衛騎士と知り合いなんだろう?
何か怪しい!
「何でですか?」
「良く差し入れを持って行ってたらしい」
「知り合いでもいるんですか?」
「いいや?いつも世話になっているとか何とか」
「それは、面白いですね」
思わず笑顔になってしまう。
将来生で見て見たい乙女ゲーの学園モノとは違うけれど、そこはかとなく似た匂いがするんだもの!
狙っている騎士でもいたのかなぁ?婚約してたのに。
「聖女様はリリアーナの事なんて仰ってるの?」
「教会の奉仕である慈善市を手伝ってくれる優しい子だって」
「ふふっ、ますます面白いですわ。良いでしょう、引き受けさせて頂きます!一応陛下にも許可を戴いて参りますね!」
クリストフはホッとしたように微笑んだ。
「ああ、頼むよリーナ」
私は早速、父の元へ急ぐ。
先触れを出して、急ぎ足で行けば、すんなりと執務室へと兵士が扉を開いてくれた。
いつでも私の謁見は最優先なのだ。
「おお、モブリーナよ!愛しのキャベツちゃん」
その形容詞はどうなの?
と思うけれど、まあいつも適当なので流しておく。
「お父様、お兄様からリリアーナ嬢の事についてお聞きいたしまして、わたくしも面白…気になるので調べてみても宜しいですか?」
「ああ、別に構わんが、例の、アレを動かすのか?」
「ええ、たまには狩りをさせないと鈍ってしまいますし」
「まあ、いいだろう」
例のアレ、とは私が作った諜報部隊の黒狼だ。
正式名称はシュバルツヴォルフなのだが、略して呼んでいる。
故あって五歳の頃に作り始めた組織で、獣人が中心にいる組織だ。
色々あって、そうなのだ。
番である獣人が色々と厄介なので、仕事を与えたくて作った組織と言うのが正しいかもしれない。
何故末っ子十五皇女の私がそんな機関を持てるかといえば、甘やかされているから。
だけではない。
国の大事を何かと解決する度に私が国を出ない条件として、飲ませているのだ。
一応、皇帝である父親の許可の下という規則を設けて守ってはいる。
一週間、調べて分かった事は、中々面白い結果だった。
あーほんと、いるよね、こういう人。
世渡り上手というか、立ち回りが上手い人。
改めて、私は再度皇帝に目通りした。
「お父様、えーとですね、結論から申し上げますと、わたくしはお兄様の相手としてリリアーナ嬢を迎える事には反対にございます。ちなみに、母上様達も否、と仰っておりました。お姉様達もです」
にっこり。
皇帝陛下はびっくり。
そりゃそうだ。
評判の良い娘、と言っていたんだものね。
「な、何故だ、評判が良いと聞いていたんだが?」
「では、その評判とやらをわたくしが引っくり返してきても宜しいですか?」
「構わんが、父を仲間外れにするでない!」
急にいじけだした。
めんどくさいなぁ、もう。
「うーん、簡単に言いますと、非常に貴族的な令嬢です。別に悪い人と言うのではありません。けれど、好きになれそうな人ではないんです。打算的な方ですので」
「ふむ?」
ぴんときていないようだ。
こんな言い方じゃしょうがないか。
「例えば、お父様の見ている前で傷ついた動物を助ける人が居て、良い人だなぁって思いませんか?」
「思うであろうな」
「じゃあその人が、お父様に見られているのに気づかない状態で、同じように傷ついた動物を助けなかったら、その評価は変わりませんか?」
「変わるな」
「そういう事です。件の令嬢は『自分の評判を上げてくれる場所でだけ、良い事をしていた』んですよ」
「やらないよりは、やる方がいいのではないか?」
その通り、だけれど。
「貴族的な打算の元での良い評価を得る行動、それは別に悪い事ではありません。でも人を責めるに足る理由にはならないでしょう?」
「まあそうであるな」
「まあ、見ていて下さいませ。わたくしが話した後でも、彼女を褒め称える人がいたのなら、それはそれで構いませんけれど、蛇の様な女を私の目の前にぶらさげられたら、うっかり排除してしまいそうなので、皇室入りはお断り申し上げておきまーす!」
この娘はやるな、って確信に満ちた目を皇帝にされた。
だってさ、面倒くさいんだもん。
宮廷闘争とか、そういうの。
評判の良い娘、ではなくて、良い娘だったら私は反対しないんだけどなぁ。
私が見過ごしたとしても、多分皇后陛下に潰されるだろうけど、無駄は省いた方がいいもの。
「とりあえずですね、当事者とお話ししてきます。別に悪口を言って回る訳じゃないので、気楽にお待ちになっててくださいませね!お父様!」
「お、おう……」
悪く言う心算ではないけれど、認識は改めて貰うよ。
だってさ、おかしいじゃん?
真面目に日の目をみないところで一生懸命やってる人が評価されないなんて。
評価される場所で、適当に贈り物だけして評価上げてる人が持て囃されるなんて。
私は嫌だな。
そう思いながら近衛隊の修練場所へと向かう。
エルゼの兄、エルマーが婚約解消へと気持ちを動かしたのは、エルゼが婚約を解消された件が問題だった。
と、私は考えたし、本人にも確かめて来た。
婚約解消自体を責める気はない。
寧ろその程度の間柄だったのだなあって思うだけだ。
けれど、無駄に失われた令嬢の名誉は取り戻さねば!
あと無駄に高い評価もね!
真っ当なものに塗り替えないと。
「アイザック・フランツ様はいらっしゃいますか?」
「これは皇女殿下、こんなむさくるしい所へ」
「何を仰いますの。いつもわたくし達を守ってくださる皆様には感謝しかございませんわ」
「有難きお言葉、胸に染み入りましたぞ。おい、アイザックを呼んで来い」
「あの、皆様にもご同席戴いても?」
「ええ、構いませんが、何か問題が?」
年嵩の騎士は、そこそこ見かけるお顔だ。
名は、エーゴンという。
「エーゴン様にも意見をお聞きしたいの。皆様にも」
「わ、我が名を覚えて頂いていたなんて、何という……」
見る間におっさんの目にうるうると涙が溜まっていく。
感動、しやすい!
「あら、わたくし、お世話になった方のお名前は忘れませんのよ」
あと、適当に練習台として使わせて貰ってます、黒狼の調査に。
それから、調査した騎士達の中で有望株がいたら、勝手に引き抜きもしてます。
いつも、育ててくれてありがとうございます!!
お世話になっております!!
そうこうするうちに、アイザックが現れた。
このアイザック・フランツ伯爵令息こそ、エルゼ嬢に婚約解消を持ちかけた本人なのだ。
「不躾な質問をしても宜しくて?」
「は、はい、何なりと」
「エルゼ嬢に婚約解消を持ちかけたのは何故か、お聞きしたくて」
「それは……」
言い淀むのも無理はない。
非常に私的な問題だ。
周囲に助けを求めるように視線を向けて。
アイザックの視線を受けて、ああ、と納得する騎士もいる。
「リリアーナ嬢がこちらに差し入れをする件と関わりが?」
面倒なのでぶっこんでみる。
明らかに、雰囲気が変わった。
「彼女のせい、と言う訳ではないです。ただ、私の婚約者なのに、エルゼは一度もここへ差し入れを持ってきた事はありません。リリ……フェレス嬢はよく来てくださっていて、私の婚約者の事も一緒に来ないかと誘ってくれたのに、エルゼは断ったのです」
「皆さんもリリアーナ嬢がここに差し入れを持ってくることに対して好意を抱いておられますよね?勿論、恋愛という意味ではありませんけれど」
何かあったら庇おうという雰囲気をもつ若い騎士達は大きく頷く。
「別に嫌いだとか他に好きな人が居る訳ではなく、ただ、結婚生活をするのならば、フェレス嬢の様に優しく、気遣ってくれる女性が望ましいと思ったのです。家同士の柵や利もありませんでしたから」
利があれば我慢した、と暗に言っている。
私は、なくてよかったね!と思った。
「ええと、まず、わたくしが調べた結果、エルゼ様は特に断ったわけではないようです」
「え?」
「誘い方の問題ですが、『騎士団に差し入れに行きませんか?』という問いに対し、『お時間が合えば是非』とお答えしているんです。問うた時点で日時を申し上げたなら、答えは婉曲な断りの言葉になりますが、日時を言っていないのでこれは断りの言葉とするには些か強引なのですよ」
断られてはいない、けれど来ていないじゃないか。
そう言いたいのですね?
分かります!
分かりますよ!
「では、エルゼ嬢が普段、その時間何をなさっていたかご存知ですか?」
「………いえ」
つまりこいつは、自分を気遣えという割に、彼女が何をしているのかさえ知らなかったのである。
なんなの?
相手に要求するなら、自分もきちんとやれや!
寧ろ自分がやってから言え!
「彼女は自分の家が支援の中心を務めている孤児院で、孤児達に勉強を教えておりました。毎日です」
「え……」
「それって、未来を嘱望されて出世間違いなしの騎士達に差し入れをする事より大事だと、わたくしは思うのですけれど」
さっきまで、ムッとしていた騎士達の多くが呆気にとられる。
そして、恥ずかしそうに目線を伏せる騎士もいた。
買ったか作らせたか知らんけど、その差し入れさぁ、騎士より貧民の方が欲してる物じゃないですかねぇ?
なのに花形の騎士を狙うって。
しかも、踊らされる奴も頭がお花畑…おっといけない!
本題に戻らねば。
「孤児院の子供達は親を亡くしてたり、養えない程貧しかったりして食べるのがやっとなのは知っておいでですか?その子供達に読み書きを教える事の大事さが分かりますか?彼らにとって一生の宝となり、生きる力となるものをせっせと、エルゼ嬢は与え続けているんですよ。自分の貴重な時間を使って」
しん、と辺りに沈黙が落ちる。
平民出身の騎士達は、苦い顔を隠さない。
大体何で皇女が騎士に教えを説いてるんだろ。
知っていなきゃいけないのは貴方達の方ですよねー?
まあ、前世庶民だから、いいんだけど。
「わたくしは為政者の立場から見て、思うのです。彼女の行いは立派に国の為になり、国を育てているのだと。貴方がたが王族や貴族を守り、其の剣を磨くために修練を重ねるのと同じ位、尊い行為だと私は思うのですが。それよりも、差し入れを持ってくる令嬢の行いの方が良い、と言えましょうか?」
「……あ、それ、は……知らなかったのです……」
でしょうね。
知ってたらそんな手には引っかからない。
おい、お前らもだぞ。
さっき、睨んでた奴な。
「知らない、と仰いますけれど、彼女は周囲に持て囃されたくて奉仕している訳ではないのです。それでも、良き事の為に心を尽くしていらっしゃったのは事実ですの。より、目立つ方へと目が奪われる事を責めはしませんけれど、何が大切な事なのか、見極める目を持つのも大事な事でございますよ」
しゅん、と叱られた犬の様に項垂れ尻尾を巻いている集団を見回して、言いたい事は言い終えた。
ふるふると拳を震わせている人を見上げれば、エーゴンが力説する。
「皇女殿下、改めてこのエーゴン、殿下に対する忠義を確かなものに致しましたぞ!」
「え?ええ、ありがとう?存じます?」
そっちじゃないよ!
エルゼ嬢の方だからね?
言いたいのは。
「……今回に限り、貴方に評判を貶められたエルゼ嬢の名誉はわたくしが責任をもって回復させたいと思いますわ。彼女に対する謝意があるのなら、反省してくださいまし」
「申し訳、ありません」
「それから、エルゼ嬢の兄であるエルマー様がフェレス子爵令嬢との婚約について考え直している件も、皆様余計な口出しをなさいませんよう。ただし、フェレス子爵令嬢へ求婚したい方がいらっしゃるなら止めは致しませんわ」
大騒ぎになってしまったから、婚約解消も間近だと噂になっていたし。
婚約を解消されたフェレス子爵令嬢を娶りたいと思う令息はいるでしょう。
騎士達だって……うん、さっきまでは俺が!って言い出しそうな人はいたのに。
何故、目を逸らすんですか。
止めないって言ってるのにね。
「では、わたくし、次の所にも行かなくてはいけないので」
次の場所、というのは憲兵隊の詰め所だ。
同じくリリアーナが出入りして評判を高める一方で、評価を下げられて婚約解消に至った者達がいる。
アルホフ・ハイマー伯爵令息と、カトリナ・ヘルツォーク伯爵令嬢。
この二人は軍閥同士なんだよね。
同じ派閥ながら、親同士が知り合いでってやつだけど、解消は簡単に成ったらしい。
本人達の意思を尊重しよう、となって。
憲兵隊の詰め所でも、元婚約者のアルホフを呼び出して、近衛騎士団での会話と似たようなやり取りをした。
ちなみに、カトリナ嬢は、傷痍軍人のお見舞いや生活の扶助に力を注いでいたので、憲兵達の冷たい視線がアルホフに集中したよね。
既に帝国の主な戦争は私が三歳の時にやらかして、終結させたんだけれども、傷は死ぬまで残り続ける。
国の為に力を尽くしたのに、顧みられることが少ない彼らを助けるカトリナ嬢もまた、私が思う良い娘だ。
こうやって見て見ると、リリアーナは自分の評判をあげつつ、婚約破壊してたのね。
ヤベェ女だね、おい!
まあ、見る目ない男から真面目女子を救い出せたという意味では良い仕事だ。
しかも揺り返しで自分の婚約もなくなってるのが面白い。
他のやらかしも全部、各所にぶちまけた。
彼女が考案した幾つかの物、例えば詩だったり刺繍だったり。
そういうものも、誰かの物を拝借した上に、少し付け加えて自分の物として優秀賞を得ていた。
気になったので、例えば城外に出る門に勤める門番に差し入れは??
と思って調べさせけど、彼らは知らないって言ってました。
王宮に居る使用人達には??
こちらにも子爵令嬢は来ていません。
つまり、平民だとか、発言力のない人達には無関心でした。
どうもありがとうございます。
分かりやすかったです。
ちなみに、目が節穴の聖女様に話はしていない。
あの子は力のある阿呆なので、そのままお仕事してくれたらいいので。
ただし、修道女や神官たちには話を聞いた。
やっぱり、聖女の前で良い事をするけれど、それ以外は特に……って感じだったらしい。
もっと陰日向なく奉仕してる良い令嬢は他にも沢山いるからね。
婚約破壊と横取り以外は特に悪い事をしていた訳ではないのが幸い。
「と言う訳でお父様、わたくしのお勧めはですね。軍閥のカトリナ嬢か侯爵家のエルゼ嬢ですわね!」
「むう……」
何だか浮かない様子だなぁ。
折角解決してあげたのに。
「何ですか。何が不満なのですか」
ぷうと頬を膨らませれば、急に強い力で抱きしめられる。
「お前を!嫁になど!やるものか!」
「な、何でーーー!?」
突然どうしたの!
何でそうなるんですか!
「お前が評価をひっくり返しに行った先々で、お前の評価もまた鰻上りになったのだ。息子を孫をと言われて、儂の心労がいかばかりか分かるまい!?」
逆切れされたんですけど。
んなもん知るかぁ!
「何度も申し上げますけれど、結婚相手は自分で決めますから、お父様にも口出しはさせませんよ!」
「あの獣人を婿にする気か!?」
「まだ分かりませんけれど!」
言い合いをしていると、聞いていた皇后陛下がおほほ、と笑った。
「相変わらず仲の良いこと」
この方は私の生母ではない。
けれど、優しい。
だから好き。
「大母様もお父様に言ってくださいませ」
「そうねえ、子離れしないと嫌われましてよ?」
「む」
漸く手を緩めた父の手から抜け出して、皇后陛下の横に逃げる。
「そう。それで提案があるのです。婚約解消となった二人の名誉の為、皇后陛下に勲章を授与して頂きたいのです。国の為に尊い働きをした者に与える勲章を」
「あら、それは良い案ね」
「それに、わたくしにもう一つ良い案がございますの」
「そうか、話してみよ」
後日、エルゼ嬢とクリストフお兄様との婚約が内定した。
侯爵家の持つ従属爵位と、飛び地を新婚夫婦に贈ってくださるそう。
やったね!
エルマー様がフェレス子爵令嬢と婚約を解消して、空いた婚約者の席にカトリナ嬢が座り、こちらも決着。
カトリナとエルゼも意気投合して仲良し姉妹の様になっているという。
お互い地道に良い事をしているご令嬢だもんね、うんうん。
私も未来の妹として、二人のお泊り会にも参加してきた。
三人からは非常に感謝されたし、後ろ盾にもなると言われるほど。
皇帝の座は狙っておりませんよ!
リリアーナ嬢は、良いとこどり令嬢という不名誉な名前を貰い、今では塩対応になった騎士団に現れる事もなくなったそうだ。
きっと、噂も消えた頃に適当な男を騙して捕まえるだろう。
噂や事実を捻じ曲げられて良縁を手放した男二人は、悔いたところでもう切れた縁は元に戻らない。
私が他の相手とさっさと結んじゃったしね!
覆水は盆に返らないのよ。
まあ、見る目を養って、敗者復活頑張って!
モブリーナ、10歳の出来事でした。
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感想&ご要望感謝致します。
まだ終わっていない連載があるので、書くとしても、短編か中編でシリーズ化くらいの感じで…いこうかと、思っています。
頑張って連載を進めてエンディングを迎えるじゃろ?
そうすると何が始まるか?
次の連載が始まるんじゃ……。
ちまちま頑張ります!干し芋美味しい!