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天使の導き、湖畔の底なし

作者: 今村 賢治

あなた誰?


ある月明かりの夜、森の湖凪いでいた

光のおかげでまるで鏡、向こうに誰かがいるみたい

水面に写るその少女、私の姿と瓜二つ

「あなた、何て言うの?」

「私の名前は⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎」

「私と同じ」

決して成し得ない、はずだった

そんな二人の出会いだった



その子は遊んでくれたの、私が一人の時

鬼ごっこ、睨めっこ、隠れんぼ

他にもいろんなことをしたの

でも、その子は水の中にしかいないの

「どうして?」って聞いたら

「そっちへ行けないの」そう答えた

「そっちへ行きたい」って聞いたら

「こっちへ来てはいけない」そう答えた

変なの



私、本を読んだの

あの体験とよく似た物語

《こちらとあちらは左右対称

向こうの者達鏡に映らず

凪の水面、月明かりの反射が

くっきりと像を結んだ時、向こうの世界と繋がる

そうなれば水のある所全てが通じて

水のある所ならどこでも会える》と

でも、道端に落ちていてぼろぼろだったから

全部は読めなかったその本の名前は

〝水面鏡の異世界〟著⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎〟

私と同じ名前

その本には、向こうに行く方法も書いてあった



私はお父さんが大好きなの

お母さんがいない時は、いつも私の側にいてくれるの

でも今はあの子がいるから、

私はお父さんが必要じゃないわけじゃない

でももう寂しくは無い



私はお母さんが大好きなの

お父さんがいなくても、いつも私のために頑張ってくれるの

でも見ていれば辛そうだから、

私はお母さんの優しさを否定したいわけじゃない

でももう大丈夫だから



私にはお友達がいるの、男の子

でもその子、あの子のこと信じてくれない

私にしか見えないのかな


その男の子は鏡に映らない



私にはお友達がいるの、女の子

でもその子、あの子のこと信じてくれない

私にしか見えないらしい


その子は私を心配していた



「そっちへ行きたい」私はそう言った

「わかった」あの子はそう言った

方法はもう調べていたらしい

自らの体が入れる程度の面積を持つ水面

その水面に両手を合わせ、呪いを唱える


成功した、でも、私が入った瞬間

あの子と入れ替わってしまった



どうしたの?私、あの子と入れ替わっちゃった?

どうしよう、とりあえずもう一度あの方法を試さないと、そして一旦元に戻そう


どぷん


沈んでしまった、鏡の向こうは水の世界

誰も鏡に映らない、そう、あの子も

こちらの者が入ってしまえば

ゆらゆらゆっくり沈んでく

抵抗は無い、息もできる、ただ泳ぐことは当然無謀なこと、行き場の無い無念と負の感情をつのり

そのまま死を、待つばかり



ここが、あの子の世界?

入れ替わっちゃった、どうしよう

あれ?あの子、どうして映らないの?

どこかへ行ってしまったのかしら


この人があの子のお母さん

薄暗い部屋に俯き座り、周りに積み込まれた灰燼あり

「ねえ、お母さん、大丈夫?」

返事は無かった、だがその代わり抱きついた

締め上げる勢いだった、そしてそれを通じて彼女の不安も伝わった、この人を守らなきゃ、私はそう思った


来る日も来る日も慰めた

いつでもどこでもそばにいた

そしてあの子のことも思い、月日は過ぎ


「ねえ、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎、ちょっとお出掛けしない?」

母はそう言った

車で連れられ、雨の中向かった

雨が強くなった、すぐに嵐へと変わった

そして私達は断崖絶壁へ辿り着き、車を止めた

お母さんは私の手を掴み外へ連れ出した

「いやだよ!離して!お母さん!」

見向きもしなかった

そして今際の寸前、落ちる直前、彼女は口に出した

「あなたは、産まれて来なければよかったのに、ごめんなさい」


ドポン


そうして二人は荒ぶる海の中

大きな渦に巻き込まれ

ぐああんぐああん溺れてしまう

嵐の海に呑み込まれ

ざららんざららんもう姿は無かった

目覚めたそこは砂浜

「私、どうしたの?」

思い出すと体が震えた

とてもとても怖かった

今でもあの体験を、身に沁みて覚えている

この思い出の謎を解くため

まずは今までのことを書き残した本を書いた

〝水面鏡の異世界〟

誰かに届きますように、そして

もう同じ過ちを繰り返さないように



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