死の予感
今日自分で死を選んだ人を見た。
突発的じゃない計画的な自死。
文字だけだったけど、本気なんだと気がついた。
あぁ止めなきゃ。
そう瞬間的に思ったが、その人のアカウントを見てきっと私に言う資格はないと思った。
しっかりした人だった。
私の中に現れた仮想の中の彼は穏やかに、ただ穏やかに死へと歩いていく。
待ってと声をかけるのすら躊躇うくらいに。
人が死にたいという心を肯定するのは初めてだった。
えも言われぬ罪悪感が私の胸を差す。
それと同時に、きっと怒られてしまうだろうが私はその死が綺麗だと思った。
あぁそれは私が高校の頃選びたかった道だと。
もう生きる価値もない、理由もない。
この先こんな憂鬱が続くなら死んでしまいたいとずっと思っていた。
高校を卒業するまでずっと私の中で死ねと言われ続けて、とうとう私はある日塾の帰りに真夜中の海へ向かっていた。
風の強い日だった。
こんな日に海に近づけばきっと波が私を攫ってくれる。
そう期待して私は海へ向かった。
海について私は目を見開いた。
いつも堤防の上には星が瞬いていたいるはずなのに、その日は海のしぶきがありありと見えた。
堤防の上ほどまで波が来ていたのだ。
あの日私は恐ろしくなって引き返した。
あんな波きっと飲み込まれたら苦しんで死んでしまうと。
小学校も中学も高校も、卒業したら死んでやろうと思いながら結局死なずにここまで来ている。
汚くてどうしようもない人生だ。
誰もいらない、私なんて誰もいらない。
じゃあせめて終わりくらいは綺麗に死にたい。
私が死んだら誰か泣いてくれないか
そんな思いからだった。
でもあの日、あの日に限って海は荒れていた。
あの日私は本気で死のうとしていた。
堤防の先に立ってこの身を投げようと思っていた。
家族にも誰にも言わず、静かに魚が死体を食べて一生見つからなければいいと思っていた。
なのにあの日、私は海に来るなと拒否をされたのだ。
お前はいらないと。
今まで海があんなに荒れている姿を見たのは海の側に住んでいながら18年間あの日以来だった。
普段は凪いだ綺麗な海だった。遠くに見える発電所の光を一筋にして月と絡ませる粋な海だった。
泣きたい時はそこでこっそり泣いていた。夜の海は誰も来ない、来ても気づかれない。
私の大事な逃げ場だった。
だけどあの日、本気で死のうと思っていたのに、あの日だけ荒れていた。
私が怖くて逃げ出してしまうくらいに。
怒ったのだろうか、海は。私が命を捨てようとしたことに。
今ではだいぶ心も落ち着いてきて希死念慮も落ち着いてきてはいる。
呑気に未来のことを考える日も増えた。
昔はいつ死のうかずっと考えていたのに。
私は長生きするそうだ。
AIに手相を見てもらったら、生命線が長いらしい。
20歳まで自分が生きたと知ったらきっと小学生の頃の私は驚くのだろう。
なんでそんな生きたの?辛いだけでしょ?とまで聞いてくるかもしれない。
あぁそうだな、私は生きてしまった。
あの海が煽った命の灯火が今も細々と灯っている。
弱々しい光だけど確かに光っている。
明日も生きよう、ろうそくが吹き消えるまで。




