12月28日(土)
原案をぼやいた人:蒼風 雨静 書いた人;碧 銀魚
昨日のドラゴン瞬殺劇は、既に国中で噂になっていた。
エレーナからひとしきり褒められたあと、城外に出ると道行く人ほぼすべてに声をかけられた。
なんだか、本当に英雄にでもなったような気分だったが、僕らはそれに浮かれている場合ではない。
昨日の戦闘でわかったが、二人だけではドラゴン一頭なら倒せても、複数相手となると、厳しくなる危険性がある。加えて、戦闘の司令塔は僕だから、もう一人くらいアタッカーになる人が必要だと判断した。
ローレンにそれが務まりそうな人はいないか尋ねてみたら、一人だけ心当たりがあるという。
「誘うのは難しいと思いますけど……」というコメント付きだが。
案内されたのは、港近くに建っていたあばら家。
中には、一人の女性が、わりとはしたない格好で寝転がっていた。
彼女の名はクローディア。
ほぼ単一民族国家であるアグレスでは珍しい他民族の出身で、戦闘が極度に得意なのだという。
確かに、顔立ちにはまだあどけなさが残るのに、体つきは現世でいうところの、一流アスリートのようで、とてもしなやかで筋肉質だった。
見た目も肌や瞳の色が、エレーナやローレンたちとは違い、特徴的な赤毛をしていた。
僕は事情を説明し、一緒にドラゴン討伐に行ってもらえないか頼んでみたが、ローレンが言った通り、答えはノーだった。
だが、それで引き下がるわけにもいかず、何とか説得を続けたところ、クローディアは
「そこまで言うなら、あたしと勝負しろ。勝ったらなんでもいうこときいてやるよ!」
と言い出した。
彼女の民族では、そういう掟があるらしく、余程戦闘に特化した民族らしい。
あまり気が進まなかったが、他に手立てもなかったので、僕はそれを受けることにした。
結論からいうと、僕はクローディアに勝った。なんとか。
昨日戦ったドラゴンより、クローディアのほうが何倍も苦戦した。
だが、これだけ強ければ、アタッカーとしては申し分ない。
僕はねじ伏せたクローディアに改めてお願いをすると、今度は素直にうなずいてくれた。
なぜか、顔がわずかに赤かったが、それだけ激しい手合わせだったということだろう。