卒業記念写真が撮りたくて
なろうラジオ大賞6参加作品です。キーワード全部盛り♪
タイトルにキーワード入れるの忘れておりました(修正済み)
来るんじゃなかった。
忘年会のジャンケンに負けた罰ゲームで、幽霊が出る中学校に一人で行くなんて。
「ベランダに飛び降り自殺した生徒の幽霊が出るんだ」
ニヤニヤ笑うルームメイトの先輩にカッとなって出てこなきゃよかった。
いつもと違って、道で犬の散歩をする人やトレーニングウェアでジョギングする人が一人もいない。恐いくらい静まり返った校舎で私は出会したんだ。
「ねぇシャッター押して!」
忍び込んだ中学校。校庭にある朝礼台の前で女の子の声がした。
「ヒッ」
人型だけど、人じゃなかった。真っ黒な靄みたいな影みたいなナニカ。それが三体。
「んじゃ、いっくよぉ」
真ん中の影――幽霊が両手でハートを作って両脇の二体と一緒に
「ハイ!」
ジャンプした。私の手が勝手にスマホのシャッターを押す。
「ダメだ。ユッコが白眼」
「やだぁ。もっかい!」
そしてかれこれ二時間、私はシャッターを押し続けている。
「ハイ、チーズ!」
ポーズは変わるけど、三人でジャンプするのは同じ。シャッター音はするけど、スマホ画面は真っ暗。何も写ってない。
あれ? なんで幽霊たちは校庭に出るんだろう? ベランダじゃなくて? 写真を撮るにしても、ここよりベランダの方が、プールも紙飛行機を持つ乙女の銅像も、遠く観覧車まで一枚に収めることができるのに。
「ジャーンプ!」
ベランダの少し下には大きな張り出し屋根。簡単に降りられそう。
あれ? もしかして幽霊たちが亡くなったのって自殺じゃなくて事故? いや、今は真実はどうでもいい。不毛な撮影会を終わらせないと。
「やっぱ地味過ぎぃ」
「でも卒業の時から変わってないの、ここだけじゃーん」
「卒業記念だもん。そこは譲れんしょ」
なるほど。何年も経つと施設もリニューアルされるし、観覧車もできたのはつい最近。当時と変わらないのは、年季の入った朝礼台だけなのか。
いや、待って。先輩が言ってた学校の怪談で古そうな話があったはず。確か……。
「あのう」
思い出した私は幽霊たちに声をかけた。
◆◆◆
無事、撮影会から解放された私は、先輩たちの所に戻った。お酒がまわって眠くなったのか「お弁当、Aランチ、ライス大盛りでぇ」と寝言を言う先輩を会社で貰ったカレンダーの筒でスパーンと叩き起こす。
「ほら、記念写真」
笑顔でスマホを差し出した。ややあって盛大な悲鳴が上がる。画面にはしゃがんでポーズを取る幽霊たちと小さな石碑、その下から生えた何十本もの白い腕が揺らめいていた。