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二クラスは渋々ながら魔石を持って帰る事を認めました。こんな田舎ギルドではあまり予算が無い為高価な物の買い取りは難しいようです。ましてこれほど大きな魔石は生活に無くてはならない物ではありません。
大量の魔物が押し寄せたり強力な敵が攻撃してきた時など、身を護るための魔道具等を使う時に必要なものです。ですけど用心のために手元に置いておきたい気持ちもあったのでしょうね。
「仕方無いな、今は何かと物入りだ。先ずは復旧に力をいれないとな。で、これが例の依頼の報酬だ」
ズシッと重めの布袋を机に置くと紐を解いて中身を見せてきた。
「「「こんなに……」」」
ネーポムク以外の私達はそれを覗き込み言葉を失いました。
「昨日報告を受けたから朝一で川を見回ってきた。思っていたより早くて丁寧な仕事だったな。あれだけ片付いていれば後は土魔法師を待てばいいから依頼は完了としてくれ。あれ以上はこっちの支払いが滞りそうだ」
二クラスが雇っている土魔法師には既に賃金を払っているらしく、それらを上手く使わなくては勿体ないということらしい。これ以上私達が整地をすれば予算がオーバーするということで本日で依頼停止となったようです。
予定を変更し商店が並ぶ通りにやって来ました。
買い物を済ましたあと四人で串肉を頬張りながら、思っていたより早く金が稼げたので明日にはここを出る方向で話し合いました。
パウラが欲しがっていたフライパンや防水シート、三人用のテントなど旅に必要な物を買い広場に戻りました。
「パンや日持ちする干し肉も買ったわね。もう買い忘れたものはないかしら?」
「干し肉じゃなくて普通の肉がいい」
さっき肉屋で買った時に味見させてもらったが、干し肉は食事というよりおやつに近い。あれでお腹いっぱいにはならないし、したくない感じがします。
「ロータル我儘言わないの。いつも狩りが上手くいくわけじゃないんだからアレも必要なのよ。食事に肉無しになってもいいの?」
「……嫌だ」
パウラが小さい子を宥めるように私に話してきます。ムカつきますが肉無しは絶えられないのでここは引いておきましょう。移動中は狩りに集中すれば良いだけの話です。
あくる早朝から出発の準備を始め、門が開く頃にはすっかり荷物は整っていました。
「では行くか」
一番荷物の少ないネーポムクが偉そうに言うと皆で町の外へ向かいました。
門前は相変わらず人が多く商人の馬車や冒険者が数組固まって時間を待っているようです。
エアハルトが何人か顔見知りになっていた冒険者達と世間話をしながらお互いに何処へ行くかを教え合い笑顔で離れていきます。
「俺達は方向が違うけどアスカム山脈辺りでは強力な魔物が現れたって噂があるそうだ」
冒険者から情報を仕入れてきたのか、エアハルトが声を潜めて言いました。
「儂も聞いた。王都へ向かう街道からは離れていると聞いたが、それも古い情報かもしれん」
二人が別々の場所で聞いてきた話なので少しばかり信憑性がありそうですが、私達は刀鍛冶のいる森の奥地へ向かうのですから今はそこまで気にすることは無いでしょう。そもそも魔王の部下の話ですから大して気にしていません。大体アスカム山脈にそこまで強い魔物は配置していないはずです。あそこは戦いに不向きな場所ですから。
人々がざわめき、門が開いたことがわかりました。並んでいた人達が順番に出ていく後ろについていくとカルロの顔が見えました。
「よぉ、今日出発するんだってな」
この町に来てからカルロとは一番関わった気がします。二クラスを抜きにして。
「世話になったな。元気でな」
エアハルトが拳を突き出しカルロも同じ様に出した拳をガシッとぶつけました。
「なんだよそれ?」
二人の不思議な行動に驚いて尋ねました。
「挨拶だよ、冒険者はよくやるんだ」
エアハルトが教えてくれました。
「俺もやりたい!カルロ!」
同じ様に私も拳を突きだすとカルロが笑って拳をぶつけてくれました。
「ロータルも、元気でな」
「カルロも元気でな」
カルロが反対の手でクシャっと私の髪を撫でました。
もしかしてこいつも私を年下だと思っているのでは無いでしょうか?いや実際にロータルの年齢はしたですが、ちょっと見かけが頼りなさすぎなようです。これは問題ですね、なんとかしないと。
門をくぐり多くの人が街道を行くなか、私達は森を目指しました。他にも数組森へ向かう者達がいましたが、そいつらは狩りが目当てだったり何か訳ありなのか街道を通りたくない輩のようです。
しばらくはそんな感じで人目がありましたが、森の奥へ進んで行くとそれらの姿が見えなくなりました。
「そろそろやるか」
おもむろにネーポムクが数メートル先の切り株を睨みました。
「"えろ"」
切り株は難なく燃え上りイイ感じに魔力が無駄なく使われていることも確認出来ました。
「いじゃないかネーポムク。次、パウラも」
「わかってるわよ」
私が名前を呼んだことで少し体をこわばらせましたがパウラは大きく息を吸うとさっきの切り株を睨みます。
「ふぅ~、"つけ"」
燃え上がった切り株へ真っ直ぐに矢じりのような氷が突き刺さりました。
「出来た!」
喜んで振り返るパウラにネーポムクが厳しい口調で続けるように言いました。
「火が消えるまで打ち込め」
「わかったわ!"つけ、つけ、つけ"」
四、五発打ち込むと切り株の火は消えました。
「少し弱いな、もっと魔力を込めることを意識してみろ。少なくとも二発で火が消える威力でなければ使えぬぞ」
下級魔法とひと口で言ってもでも威力の調整と認識は必要です。でないとパーティで戦っている時に連携が取りにくくなりますから。
「うっ……わかった。やってみる」
やっと師匠らしくなったネーポムクの言葉をパウラは素直に聞き入れ刀鍛冶の元へ行く道すがら、数日は移動しながら訓練を続けました。
数日経つとネーポムクとパウラが略式詠唱で下級魔法をそこそこ使えるようになってきました。ネーポムクが放った火魔法をパウラが二発か三発で打ち消す事が出来るようになりました。
その間私とエアハルトは探索で引っかかった獲物を倒して肉を得たり、何故か体力をつけろと言われて走り込みをさせられたりと結構忙しくしていました。
「そろそろ中級魔法へ訓練を移そうと思うが、どう思う?」
ネーポムクがある日の朝、私に尋ねてきました。私的には勝手にやればいいのにという気持ちです。
「この辺は冒険者も見かけないしいいんじゃないか?」
昨日狩ったパイアの肉に齧りつきながら答えると嬉しそうに口の端を上げました。
「ではまた魔法防御壁を張ってくれ。いくら人気がなくても森を壊す訳には行かぬからな」
おっと、それが目当てでしたか。目つきからして前回私の魔法防御壁がネーポムクの攻撃魔法で微動だにしなかったことを根に持っている感じです。
あの時はまだ通常の詠唱魔法を使っての攻撃でしたが今なら略式詠唱魔法で攻撃出来ます。ということは無駄なく魔力を攻撃へ使えるという事で間違いなく威力は上がっているはずです。
「かかってこいよ」
ネーポムクの心を汲取り私がそう言うと彼も嬉しそうに笑顔を作ります。
「こわっ!何なの二人共。なんで好戦的な顔になってるの!?」
事情を知らないパウラが驚いていますが、ちょっとだけ事情がわかっているエアハルトが彼女を連れて安全と思われる距離を取りました。
私の魔法防御を信用してないのですか?
逃げる必要ないですよ。




