27 立ち直りましょう
すみません、体調不良でストックが切れました。
しばらくの間投稿はお休みいたします
嫌味なくらい元気一杯のエアハルトが爽やかな顔で食事をとっています。その間にパウラはテントに戻り森へ出かける準備をしています。
昨日エアハルトが偶然が重なり運良くパイアを仕留めたので今日はそれを売った金が貰えるはずです。肉は数日分はありますから金額を見て旅に必要な物を購入しようと話し合っていました。
「テントは買わないのか?」
今はパウラが自分で買った一人用のが一つあるだけです。私はテントを間近で見たのは初めてだったので一度入らせてもらいましたが、思っていたより広かったです。ですけどやはり皆が入るのは無理ですし、寝るのはどんなに頑張っても二人までです。それも体の大きなエアハルトには無理でしょう。
「テントは安全がある程度確保された場所でしか使えんかったが、これだけ人数が揃っているのだからこれからの旅を考えれば考慮しても良いかも知れんな」
入ってしまうと周りの状況がわかりにくくなるテントは一人旅では使いづらいようでネーポムクとエアハルトはこれまであえて使っていなかったようです。だけど今は私が魔法で結界を施し魔物以外にも動物や不審者も寄せ付けない事ができますし、結界の外側に危険な物が近付けば直ぐに察知出来るので全く問題ないんですが、必要な時まで話さなくてもいいですね。
「だったらフライパンも買って欲しいわ。それと防水布も必要ね」
旅をしていれば雨が降ることもありテントが張れない場所もあるらしい。でもそんな時はネーポムクに土魔法で穴ぐらでも作ってもらえば良いと思うのですが、パウラにしてみればそんな事で魔力を使わせたくないということらしい。確かにいざという時用に温存はしてもらいたいですけどねぇ。便利に使うのが魔法の醍醐味だと思います。
「あぁ食ったぁ。ご馳走様パウラ。後片付けは俺らがするよ」
エアハルトが断りもなく私を巻き込み行くぞといいましたがそのつもりだったので直ぐに食器を集め洗い場に向かいました。
「明け方ネーポムクがどんよりしながら帰って来てたけどもう大丈夫そうだな」
二人で食器を洗っているとエアハルトが言いました。
「そうだな、飯もいっぱい食ってたみたいだしな」
「お前も、大丈夫なのか?」
どうやら私の落ち込みも気づかれていたようです。
「まぁ、なんとか。ちょっと自分の存在意義が揺らいじゃって」
魔王の存在否定……いや、大丈夫。私は確実に存在している。
「なんだよそれ?難しい事考えてるな。アレか、自分探しとかいう若者特有の病か!?」
「なんだよその恥ずかしい病!?俺はそんなんじゃないぞ!エアハルトだって若者のくせに」
こっちは千六百才なんですからそんな病にはかかりませんよ。
「あはははっ、俺はとっくに乗り越えたぞ」
罹ってたんですか!?それも驚きなんですけど!
「まぁ、お前は他の人とは少し違うようだからな」
「他の人って誰だよ。どうすれば目立たなくてすむんだ?」
一応密偵の身ですからね。エアハルトに違和感なくついていかなくてはいけません。
「目立ちたくないのか。だったら優秀なことは俺達だけの秘密だな」
くしゃっと私の髪を撫でるエアハルトが眩しい笑顔を向けてきました。これは……上手く事が運んでいるということでしょうか?とても気分がいいです。
町の門を抜け早速昨日も行った森の奥へ向かいました。あそこなら人気もなく静かでいいと思っていたのですが……今日は違うようです。町から少し歩いた森の入口付近に人影が見えました。
「よう!エアハルト、お前もまたパイア狙いか?」
昨日ギルドに持ち込んだ獲物のせいか、今日は大物を狙う冒険者達が数人のパーティで探索しているようです。その内の一組に門番のカルロが数人の男達といました。
「カルロも狩りか?お前らも?」
連れの男達もエアハルトともすっかり顔馴染みなようで気安く声がかけられています。
「俺は仕事だよ。昨日のお前の情報を耳にした野郎共が調子に乗って油断しないように見回りだ」
「俺達はその助っ人だよ。運が良ければ大物を仕留められるしな」
カルロの普段の仕事は門番ですが本業は町の自警団に所属しているようです。その為今回のような事があると被害が出ないように森を見回ることもあるようです。一緒にいるのは旅の途中の冒険者達のようでどうやら自警団からの依頼をギルドを通して受けたようで、エアハルトの朝練仲間らしく皆ガタイが良くそこそこの腕前な感じですからB級ってところでしょう。
「何かあったら知らせてくれ。俺達は向こうから回って行くつもりだから」
カルロ達は森を大きくまわり込みながら昨日教えた丘の方へ行くらしくその場で別れました。
この様子では人目を避けての今日の訓練は難しそうです。
「仕方がないの、今日は川の方へ行ってみるか」
少しイラつき気味にネーポムクが言いました。川というのは初めてパウラと出会った場所のことでしょうか?
「パウラは大丈夫か?」
エアハルトが何故か心配そうに尋ねました。
「えぇ、平気よ。皆と知り合えた場所ですもの」
パウラが笑顔で返します。どうしてそんな事を尋ねているのか理解出来ないでいるとネーポムクがそっと教えてくれました。
「川で死にかけたパウラが怖がらないか心配したのだ」
なるほど、一度川で死にかけたパウラを心配しての行動でしたか。
「エアハルトはよく人の事を見ているな」
「そうかぁ?まぁ偏屈な年上と旅をしてたからな。その時に結構仕込まれたかな」
だからネーポムクの事や私の事も変な様子に気づいて心配してくれていたということなのでしょう。
ふぅ~ん、そんな奴なのか。勇者候補って。
森に入ってからもいくつか冒険者らしいパーティの気配が離れた場所からしていました。カルロが言った通り数組の冒険者が大物狙いでうろついているようですが、この調子じゃ精々B級冒険者でしょう。きっとエアハルトがC級だと聞いて自分達にもパイアを仕留められると勘違いしたやつらですね。
A級の冒険者ならエアハルトがC級なことに違和感ぐらい感じるでしょうから、そこに気づけば浮かれ気分でパイアを探し回ったりしないできちんと準備を整えてから向かうはずです。いくらパイアが下級魔物でも突進力はそこらの魔物の中ではかなり強力ですしあの大きさなら一人で仕留めるのは腕のいいA級ぐらいでないと怪我ぐらいしますからね。
あいつらがどうなろうと関係無い私達はパウラが溺れた川へ向かいました。あの時は増水し川幅も三倍位に広がっていましたが今では水量もほぼ元に戻り水浴びするには最適な感じになっていました、が、やはりその痕跡は生々しく残っていました。川岸はえぐられ流木や巨大な岩がそこここに点在し水は澄んでいるものの岸は全体的に泥にまみれた状態です。
「やっぱり酷いな。これ誰が片付けるんだ?」
魔王だった私はこういう事の後始末とか考えたこともありませんが人としてこれを見ると近寄り難くて怪我しそうです。このままじゃ川の流れが滞り大雨が降ればまた水が溢れてしまうでしょう。
「ギルドでここの整地の仕事が出てたよ。こんなに酷ければ魔法師に頼まなくちゃ無理だからな」
「そうなの!?それ私達で受ける事出来ないかな?」
エアハルトの話に食いついたのはパウラでした。
「こんなに大規模な工事は大変なんじゃないか?」
いくらパウラの詰まってた魔力が解放されたとはいってもまだ不慣れな彼女には負担が大き過ぎるでしょう。
「いや、依頼は多数募集してたから区画を分けて請け負う形だった」
「だったら出来るんじゃない?訓練にもなるでしょう?ひたすら意味無く連続で魔法を使うのって精神的にきつくって……」
昨日のような訓練では達成感が薄かったのかうんざりした顔で言いました。
「どうせならお金が稼げて訓練も出来ればやる気が出るわ。ね、お願い。良いでしょう?」
パウラが両手を胸の前で組み必死にネーポムクに頼み始めた。
「ふむ、出来なくはないであろうが初めての依頼にしては規模が大き過ぎるのではないか?いくら区画を割っていてもかなり広そうだぞ」
「まだ分けて無いなら早めに受けて小さ目にしてもらっても良いんじゃないか?パウラも俺も初心者だけど町の為に頑張りたいんですって感じでさ」
川を見る限りまだ区画を分けていなさそうですから、手つかずなら少しでも早目に取り掛かって欲しいと言うのが心情ではないでしょうか?




