表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王の左手  作者: 蜜柑缶
1/54

1 どうも

よろしくお願いします

ちょっとゆったり目に始まります

ストックが続く限りは毎日投稿予定です

時々忘れるのでそこのところもよろしくお願いします

 どうもぉ〜、魔王でっす!

 と言ってもその力のほんの一部なんです。そうですね、言ってみれば左手の力くらいってとこですかね、もちろん右利きの。

 つまり本体と比べれば若干弱い感じですがそこそこ使える無くてはならない立場のもんです。


 今回私が派遣された勇者になる可能性(・・・)がある人類はハッキリ言ってハズレですね。きっと魔王の本体も可能性の高い順から力の強い分身を送り込んでいるでしょうから、私がここに居るって事は念のため、万が一、もしこれが当たりだった時に「あぁ〜、そうかも知れないと思っていたんだよ。やっぱりね」とかならないために最後に軽く押えておこうって思っての事で、決してもう押さえるべき勇者候補が無くて適当に気になるのを何となく選んだからでは無いと思う事にしています。でないとやる気が削がれますからね。

 

 さて、今回魔王の命令で人類に派遣されたのは深い事情があるからなんです。

 分身とはいえ自分も魔王なのに魔王の命令で、とかちょっと変な感じだけどそこは流して下さい。

 

 これまで魔王と人類の戦いは幾度となく繰り広げられてきました。魔王が勝つと人類を征服し好き放題に大陸中を暴れまわります。

彼奴(きゃつ)らを蹂躙せよ!』なんて叫んじゃった事もあります。今思い起こせばちょっと恥ずかしいセリフですね。


 時に人類から勇者を名乗る輩があらわれ魔王を討伐しようとしてきます。大概は問題無くチャッて片付けられるのですが、ある日強いのが来ちゃったんです。

 本気のやつですね。あれには参っちゃいました。

 それで討伐されてしまったんです。

 でもまぁ、魔王って呼ばれるくらいだからそう簡単に消滅したりしないんです。根本的な魂はいくら勇者といえど完全に消すことは難しくって、時間はかかりますが復活することが出来るんです。

 毛根強い!的な感じで忘れた頃にしれ〜っと復活しまた人類を脅かしてやりました。

 でもですね、やっぱり勇者もまたあらわれちゃうんです。

 もうこれってイタチごっこなのでいい加減に対策をしてみようかと思いまして、今回の作戦が実行される時が来ました。

 

 はぁ、長い前フリですね。ついて来てます?

 で、私はたった今、村人一号に入り込んじゃいましたってところからお話しましょう。


 魔法の力を駆使して魂と記憶を融合させ……まぁ、詳細は省きますが、憑依というか乗っ取りというか入れ替わりというか、呼び方はお任せ致します。言っておきますけど私がコレに入ってなかったらコレはたった今ただの死体になってましたからね。


「あっ、目を開けた。焦ったよ、ちょっとやり過ぎじゃないか?ゲッツ兄さん」


 どうやら目の前に立ちはだかる馬鹿丸出しの顔で話しているのはこの身体、ロータルの直ぐ上の兄ギードのようです。


 では私は早速ロータルになりきって振る舞うことにしましょう。

 レッツ潜入!


「はっ、こんな奴死んだって誰も悲しまないし困らない」


 ゲッツと呼ばれた長男は顔からして脳がつるつるそうですが無駄に体格がいいようです。

 ()は魔王の力のうちの攻撃系魔法以外(・・)の魔法に長けているのでひと目見ればどんな奴かはすぐわかるんです。鑑定ってやつですね。結果はやっぱり激弱でネズミのしっぽ以下。勿論しっぽに知能はありませんよ。

 この馬鹿兄ゲッツに体当りされ木の幹で強かに体を打ち付けられショック死していたロータルの身体は流石にボロボロ。痛いのは嫌なので直ぐに回復魔法をかけてやりました。パってね。

 これで良し。でもちょっと痛いふりしてみましょう、面白そうですから。


「イタタッ、もう止めてよ兄さん達」


 ロータルの記憶をたどれば毎日毎日あきもせず殴られ利用されて馬鹿にされ続ける日々。しかも父親も助ける素振りもない。いわゆる家族ぐるみの虐待のようですね。まぁ、ロータルは弱くてどんくさいから仕方ないですけど。


「ロータルが生意気な口をきくな!黙って殴られてろ」


 そう言って私を蹴ってきやがりましたけど当たる寸前に盾の魔法で防いだので痛みは感じませんし、盾は目には見えません。


痛い(イテー)!何しやがるロータル!」


 あっ、予想外に盾が硬かったのかゲッツが足をくじいたようです。

 まぁ自業自得ですね。


「別に何もしてない。兄さんが自分で蹴るのを失敗したんだろ」


 そう言って私と間違えて背後の木を蹴ったと思わせてやりました。きっとコイツ馬鹿だから気付かないでしょう。


「え?蹴りそこねたか」


 ほらやっぱり気づいてない。


「お前が避けるからじゃないか」


 次男ギードが言いがかりをつけてくるのはいつもの事。コイツも(ロータル)に負けず劣らずヒョロ長ですけど上に取り入るのが上手くて実力も無いのに態度がデカいウザいやつなんです。


「そんな、俺だって痛いのは嫌だよ」

「だから、ロータルが生意気言うなって言ってんだ!」


 こりもせずゲッツが大振りに右腕を振りかぶると馬鹿みたいに力一杯振り下ろしてきました。

 そんな馬鹿力で殴ったらいつか人は死にます。さっきのロータルのようにね。

 幸い側には馬鹿二号のギードがいます。今度はコイツを盾のように引っ張りこむと見事にゲッツのパンチを受け止めました。ガキッていったから歯が折れたでしょう。


「ぐわっ!ゲッツ兄さん何するんだよ」


 口元を押さえゲッツを睨むギード。こいつらだってそんなに仲がいい訳じゃないんです。家の財産は全て長男が引き継ぐとかいう訳のわからない習わしのせいで仕方なく家に置いてもらう為に媚を売っているだけの関係なんです。


「お前が急に飛び出して来るからだろ!それよりロータルを押さえろ」


 一回は回避したけどこれ以上は面倒くさいです。

 揉めている二人をグッと押し退けて立ち去ろうとしましたが、この体まるで筋力がないです。

 きっと飯をまともに食っていないせいですね。このままじゃ旅に出ても直ぐに死ぬんじゃないでしょうか。


「見ろよ、ロータルが逃げようとしてるぞ」


 えぇっと、まず魔法で身体強化して。


「学習しないのは相変わらずだな、俺達に力で敵うはずないのに」


 それから攻撃魔法は使えないから、そうですね、道中は防御魔法をかけっぱなしにして敵が襲いかかってきたら攻撃力を低下させればいいでしょう。

 

「今度はちゃんと押さえとけよ」


 チッ、人が体の調整をしている時に邪魔な奴等ですね。

 私の体を木の幹に押し付け逃げられなくしようとしているつもりなのか、二人が呆れるほどの馬鹿面を緩ませる。


「今殴ってやるからな、ロータル」


 長年魔王をやっていると時に人類を研究することもありました。

 どうして個体の力は魔王に及ばないのに多数でなく数名の勇者と呼ばれるパーティに倒されるのか。

 結果はまだわかっていないが一つだけハッキリしています。


「くらえ!ロータル」


 こんな馬鹿の相手をしても答えはでないということ。

 私を押さえていると思っている二人に暗闇魔法をかけました。


「うわぁ~、目が見えない!なんだコレっ!?」


 魔法で攻撃されたことないようです。まぁ、ただの農民ですからね。戦争でも無い限り関わることはありません。


「なんだ!イテッ、どうすりゃいいんだ!ギード!」

「俺もわからないよ、ゲッツ兄さん。ロ、ロータル!何とかしろ」


 手探りでぶつかり合いながら私を探す馬鹿な兄達。たった今殴りかかってきた奴を助けるわけ無いって人類じゃなくても常識じゃないでしょうか?魔王()が人類の常識を騙るのもなんですけど。


 とりあえず二人を掴んで地面に引き倒しました。


「ギャッ!」

「わぁっ、や、止めろ、向こうへ行け!」


 慌てふためき腕や足を振り回す二人を身体強化した体でそれぞれ思いっきり蹴り上げるとボコッと変な音がし血を吐きました。

 折れた肋骨が肺に突き刺さりました?このままここを離れてもいいですけど下手に見つかれば追手がかかります。それは面倒くさいですよね。


「兄さん達って、結構しつこそうだから息の根を止めとく方が後腐れないかな」


 体をくの字に曲げて縮まっている二人に近づくと必死に首を横に振っています。


「い、嫌だ……やめてくれ」


 それロータルも言ってました、何年もね。


「この事は……赦してやる、これからは……殴らないから」


 そんな言葉を信じるほど愚かではないですよ、私も、死んだロータルもね。幸いここは人目につかない静かな場所です。こいつらの死に場所にしては勿体無いほど。でも殺りますけどね。


 

 

読んで頂きありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ