あとがきとして
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
この物語を書こうと思ったのは、傭兵、というものをもう少し書きたいな、というのがまず一点。もう一点は、性別が選べる世界、そして能力が先天的に与えられる世界とはどんなものか、というのが一点。
まず傭兵に関しては、ただ空想して、妄想して、なんとか形にしたいな、という願望に任せましたが、なかなか至難でした。僕の中で「傭兵」が一番しっくり来る作品は、「ラグナロク」なんですが、あまり大声では言えませんが、傭兵の生活事情みたいなのはあまり描かれない。描かれないけどしっくり来るのが凄いのですが。ちなみに角川スニーカー文庫版では、傭兵会社の査定員、というキャラが出てきて、なかなかユニークです。まったくの空想として、傭兵の衣食住を保証する仕組みを作ってみましたが、さて、どうでしょうか。
もう一つの、「性別」と「能力」は、書き終わってみれば、もっと深掘りできましたね。例えば、男性を選んで兵士になりたかったけど、戦いに向かない能力しかない、とか。この二つの要素からのストーリー展開、というか、要素の使い方が明らかにユナの生き様に合わせている形になってしまって、少し惜しいかな、と思ったりはします。性別に関しては冒頭以外であまり取り上げられないのも、僕の力不足です。あまり、いや、かなり、余裕がなかったです。
この長編を書いたのはだいぶ前になってしまって、書き終わってから、ウクライナ危機、ウクライナ戦争が始まってしまい、だいぶ困りました。簡単に戦争を描ける時代ではなくなってしまったなぁ、と感じました。とりあえず公開しましたが、2022年以降は小説の描写などに影響があるんじゃないかと、個人的には思ってます。戦争、そして感染症は、大地震や大規模なテロと同じように創作全体に影響を与えるのでは。
この部分に触れなくてはいけないのは、リツとユナのそれぞれの最後の場面です。僕はこの長編をプロット無しで書きました。ただ、ユナが最後にどうなるかは書いていくうちに、自然と決まっていきました。自分でもよく分からないのですが、そういう終わりしかないように感じました。一方で、リツの最後のシーンは、ユナの最後のシーンに引きずられたところがあります。ユナの苦しみとはまた別の、しかしやはり重い苦しみがリツに訪れるのは、二人が僕の中ではある種の表と裏だからなのかもしれません。
なんとなく感じたのは、苦しみは間違いなくあるし、苦しみとは絶望の萌芽なんですが、その絶望に呑み込まれるのがユナで、絶望を永遠に抱え続けてやがて決着をつけるのがリツ、なのかもしれない、ということです。これは構想の時には全く無くて、書いているうちに辿り着いた場面でした。
あれやこれやと、まったく四苦八苦しましたが、書けて良かったと思ってます。読まれた方が少しでも何かを感じていただければいいのですが。
今後もよろしければ、覗いていってください。
改めまして、ここまでお読みいただき、ありがとうございました。




